tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

類数公式とデデキントのゼータ関数

ゼータ関数強化月間 第2弾 として,今日は

「デデキントのゼータ関数」

を紹介したいと思います。

デデキントのゼータ関数によって「類数」が求まる 「類数公式」 についてお話したいと思います。

証明の流れが非常に面白いので,そのあたりを楽しんでいただければと思います。

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(行列の)ゼータ関数の行列式表示

最近「ゼータ関数」の話はこのブログで書いておらず,しばらくご無沙汰でした。最近学んでいる理論を調べているうちに「ゼータ熱」が再燃してきました。

啓蒙書でお話程度に聞いていて「抽象的でよくわからないなぁ」と思っていた対象が,だんだんつかめてきて面白く感じてきたのです。

今日は、そんな「ゼータ関数」に関するトピックの中から「行列式表示」に関するお話をしたいと思います。


「ゼータ関数」「行列式」とは、少々意外な取り合わせに見えますね。でも、このへんがつながってきたら面白そうに思えませんか。

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「57 は 3 で割れ切れる」の別証明(したかった→できた)

2017/02/04:
こちらの記事の計算に誤りがあることが発覚しました。今は手が離せないので,また後ほど訂正いたします・・・。

2017/02/05:
上記の誤りについてですが,たしかに誤りであることが確認できました。どの箇所が誤っているかについて,末尾の「追記」に詳しくまとめました。

2022/08/05:
実は、今回の方法でも「57は3で割り切れる」を証明できることに気づきました。気付いたのは2021/03/17だったのですが、ブログに反映させるのが億劫でやっておりませんでした。今回、その証明をまとめたツイートをブログ末尾の「追記3」にまとめました。


57 という数は「グロタンディーク素数」と呼ばれています。グロタンディークという高名な数学者が「57 を素数と間違えた」というエピソードに由来しています。

このエピソードは,私のブログでも紹介したことがありました。
tsujimotter.hatenablog.com


上の記事でもご紹介した通り, 57 という数は,実際は  3 で割り切れるのです。だから,素数ではありません。

一方で,この数が  3 で割り切れることを示すのは難しいのでしょう。あのグロタンディーク先生が間違えたのですから。

実際,「 57 3 で割り切れる」を示すためには, 57 3 で割り算しなければいけません。割り算です。きっと難しいに決まっています。


そこで今回の記事では,実直に割り算するのではなく,もっと別の方法で「 57 3 で割り切れる」を示すことを試みたいと思います。

今日紹介するのは 57 3 で割り切れる」別証明 です。


使う道具は,虚二次体の類数 です。

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パッと見素数 "91" を素数判定に活用する

91 という数は、見た目が素数っぽくてつい間違えてしまうという

「パッと見素数」

です。
motcho.hateblo.jp


素数と間違えやすいので、たとえば素数を使ったカードゲーム*1においては、間違えて悔しい思いをした方もいるかもしれません。

「いやな数」と思われがちな 91 ですが、tsujimotterとしてはどんな数でも好きになってもらいたい。

そんな風に考えていたかどうかはさておき・・・

もしかしたら 91 が素数判定で活躍するかもしれない というアイデアを得ましたのでご紹介します。

*1:たとえば、「素数大富豪」という素晴らしいトランプゲームがあります。 integers.hatenablog.com

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1728とラマヌジャンと線形代数

 1728 といえば、ラマヌジャンの「タクシー数」のエピソードを思い出します。

 1729 = 1^3 + 12^3 = 9^3 + 10^3

 1729 という数に、ラマヌジャンが一瞬で「2通りの3乗数和の形で表せる最小の数」という意味を見出した、という話はよく知られていますね。


この式を導くポイントは、 1728 という数が  12^3 であることです。 10^3 = 1000 9^3 = 729 はなんとなく覚えている人が多いでしょうから、比較的自然に導くことができます。


さて今日は、この  1728 という数とラマヌジャンの「もう一つのつながり」を見せるエピソードをご紹介します。

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続・XX + XY + 6YY の形で表せる素数

これまで「類体論」の勉強をしてきましたが,その集大成となる記事を書きたいと思います。本日扱いたいのは,およそ一年前に紹介した以下の問題です。

 p = X^2 +XY + 6Y^2 の形でかける素数はどのような法則を満たすか?

その一年前の記事はこちら:
tsujimotter.hatenablog.com

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ガウスの種の理論 (Genus Theory)

今日考えたい問題は  p = X^2 + 5Y^2 という二次形式で書ける素数の法則です。実際,

 p \equiv 1, 9 \pmod{20} \;\; \Longleftrightarrow \;\; p = X^2 +5Y^2

という法則が知られており, K = \mathbb{Q}(\sqrt{-5}) の素イデアル分解によって説明できます。これについて,以前の記事でまとめたことがありました。
tsujimotter.hatenablog.com

一方で,上の記事では「たまたまそういう条件のときに  X^2 + 5Y^2 と書ける」程度の説明となっており「なぜそのような法則が得られるか」という根拠がまったくわかりませんでした。

今日は「ガウスの種の理論」によってこの根拠を説明します。種の理論は「指標」という概念を用いて二次形式やイデアル類群を分類しようという試みです。

種の理論は,単に上記の法則の説明を与えるにとどまらず,もっと一般的に二次形式で表せる素数の条件についてザックザクと法則を導くことができます。魅力的なトピックです。


しかしながら,やや難解で抽象的な議論が続くことになります。私もずっと理解したいと思っていたのですが,難しくてこれまで理解することができませんでした。数日前にこの記事に書いた理解に到達できたという状況です。


抽象的な内容を理解しやすいよう,可能なかぎり具体的例を用いて考えていきたいと思います。後半にたくさん二次形式の例が登場します。いろいろ遊ぶことができますので,辛抱強く読んでもらえると嬉しいです。

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