tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

合同数問題と保型形式(タネルの定理の証明の概略)

先週の日曜に梅崎さんが主宰する「数学について話す会」というイベントが開催されてtsujimotterも参加してきました。

数学について話す会

数学について話す会は「参加者全員が自分の好きな話をする」という、他ではあまりないタイプのイベントでした。参加者の聞き手としてのレベルが高く、発表者が気持ち良く話せるイベントだったと思います。tsujimotterは、本記事のタイトルにあるような 「合同数」 についての話をしてきたのですが、とても楽しくお話することができました。ほかの方の発表内容も興味深いものばかりでした。企画してくださった梅崎さんに感謝です。


さて合同数問題は、ぱっと見は初等的な問題に見えるのですが、実のところとても奥が深い問題です。合同数を判定するための 「タネルの定理」 と呼ばれる結果が知られているのですが、そこではなんと 「保型形式」 が関係します。

今日はそのタネルの定理について、私の知っている限りで紹介したいと思います。もちろん難しい内容なので、私自身は実際のところはよくわかっていませんし、誤解もあるかもしれません。「タネルの定理を完全解説するぞ」という大それたことを言うつもりはありません。あくまでこの記事の目的は「定理の成り立つ仕組みを表面的に追いかけて、何となくわかった気になろう」というものです。

より詳しく理解したい方は参考文献のコブリッツの本を読むか、あるいはコブリッツで参照されている論文にアクセスされるとよいかと思います。

「数学について話す会」で使ったスライドもこちらに上がっていますので、今回の記事の補助資料としてお使いください:
www.slideshare.net

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セルマー群と2-descent法

 K を代数体として  K 上定義された楕円曲線の  K-有理点の群をモーデル・ヴェイユ群  E(K) といいます。モーデル・ヴェイユの定理によって、 E(K) が有限生成であることが示されていますが、その自由部分の生成元の個数、すなわちランクを決定するのは一筋縄ではありません。

今日は、セルマー群 という道具を使ってランクを計算するための 2-descent法 を私の理解できた範囲で紹介します。なかなか難しい内容なので、私の理解もまだ十分ではありません。誤りがあった際は、ご指摘頂けると嬉しいです。

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不思議な法則

ここに二つの2次無理数があります。

 \displaystyle \alpha_1 = \sqrt{-5}, \;\; \alpha_2 = \frac{1+\sqrt{-5}}{2}

 \alpha_1, \alpha_2 は、どちらも判別式が  D = -20 となる2次無理数となっています。

 \alpha が2次無理数であるとは、 \alpha が既約な2次方程式

 a\alpha^2 + b\alpha + c = 0

の解であるということです。このとき、 D(\alpha) = b^2 - 4ac \alpha判別式と言います。判別式が負であるような2次無理数を虚2次無理数と言います。今回は虚2次無理数を扱います。

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古典的モジュラー曲線 X_0(N)

今日は、モジュラー曲線の話の続きを書きます。前回の記事 では、フルモジュラー群  \Gamma の定めるモジュラー曲線  X(1) を考えましたが、今回は 合同部分群 に対応するものを考えたいと思います。

tsujimotterは、この合同部分群の定めるモジュラー曲線の話がしたくてこのシリーズを書き始めました。かなり難しいテーマだとは思いますが、面白い内容だと思いますので、よろしければぜひご覧ください。

諸注意:
今回の記事は、著者のtsujimotterが最近勉強したばかりのトピックです。とても面白い内容で、話したいという気持ちが抑えられなくなって本記事を書いています。
一方で、まだ理解していないことだらけで、ところどころ自信がありません。誤り等が含まれる可能性もありますが、その際はどうかご容赦ください。

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モジュラー曲線 X(1)

今日から3回にわたって モジュラー曲線 をテーマとしたお話をしたいと思います。「モジュラー曲線?ああ、あれね」といった具合に、頭の中でイメージできるようになることを目標としたいと思います。

以前から気になっていたトピックなのですが、先日日曜数学仲間の方と一緒に計算してみて、ようやく理解した気になれました。tsujimotterにとってもホットなトピックで、ぜひ自分の言葉で記事にまとめたいと思ったのがこの記事の動機です。

まずは基本的なモジュラー曲線  X(1) について紹介します。実は、次の記事で  X_0(N), X_1(N) というより高度なモジュラー曲線について紹介したいと思っています。最終的に話したいのは、 X_0(N), X_1(N) の方なのですが、今回はそのための準備の回と位置付けています。

それでは、よろしければお付き合いください。

諸注意:
今回の記事は、著者のtsujimotterが最近勉強したばかりのトピックです。とても面白い内容で、話したいという気持ちが抑えられなくなって本記事を書いています。
一方で、まだ理解していないことだらけで、ところどころ自信がありません。誤り等が含まれる可能性もありますが、その際はどうかご容赦ください。

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虚数乗法論 (3):だから「虚数」「乗法」だったのか

虚数乗法シリーズ、第3回目です。

今回は「虚数乗法」という呼び名に納得してもらえるような話をしたいと思います。記事を読み終わったみなさんが、タイトルのような感想を持つことを期待しています。

シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。
tsujimotter.hatenablog.com

簡単にあらすじをお話しましょう。

前回、「 \mathbb{C} 上の楕円曲線の  \mathbb{C}-有理点  E(\mathbb{C})」と「格子で割った複素数平面  \mathbb{C}/\Lambda」が対応していることを学びました。

楕円曲線 E(\mathbb{C})代数側、複素数平面  \mathbb{C}/\Lambda解析側と呼ぶことにします。両者をつなぐ写像を解析的同型写像と呼びます。

虚数乗法とは、解析側で考えると単に「(整数でない)複素数(=虚数)を掛けること(=乗法)」だと思うことができます。まさに「虚数」「乗法」です。

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