tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

階乗数の間の関係式:10! = 6!7!

今日は  10! が主役です。 10! は定義から

 10! = 1\times 2 \times 3 \times 4 \times 5 \times 6 \times 7 \times 8 \times 9\times 10

ですが、ここから  6! = 1\times 2 \times 3 \times 4 \times 5 \times 6 を除いた

 10!/6! = 7 \times 8 \times 9\times 10

を考えてみましょう。 8 = 2 \times 4, \; 9\times 10 = 3\times 5 \times 6 のように置き換えると

 = 7 \times 2 \times 4 \times 3 \times 5\times 6

とできて、これは  7! そのものです。したがって、表題の  10! = 6!7! が成り立ちます。


これだけでも十分面白いのですが、実は  10! = 6!7! という関係式には、こんな面白い特徴があるというのです。


上記のツイートは、@apu_yokai さんという方の以下のツイートによって知りました。


つまり、こういうことです。

 n! = a! b! という式を満たす整数  (n, a, b) の組の中で、非自明なものは  (10, 6, 7) しか知られていない

というのです。とても面白い話だと思いましたので、私のブログでもぜひ紹介したいと思いました。

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ゲーム理論で警備する:セキュリティゲーム

今年の3月に情報処理学会全国大会というところに行ってきまして、「ゲーム理論やメカニズムデザイン」についての招待講演を聞いてきました。以前からこの分野にはなんとなく関心があったのですが、この話がとても面白かったということもあり、関連する分野を調べたいというモチベーションが湧いてきました。

調べているうちに、人工知能学会の学会誌にちょうど良い解説記事があるのを見つけて、読んでみることにしました。
jsai.ixsq.nii.ac.jp

上の解説記事の中で、特に興味をもったのが セキュリティゲーム という研究です。セキュリティゲームは、ゲーム理論の知見を実際の警備システムに応用するという研究です。勉強がてらブログ記事にまとめてみようと思います。

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f(x) = 2x + 1 を mod 5 で繰り返し合成させるとどうなるか?

先日話題になった FF5の記事(1)FF5の記事(2) の議論の中で

 f(x) = 2x + 1 \in \mathbb{F}_5[x]

として

 a_n = f^n(a) = f\circ f\circ \cdots \circ f(a)

なる数列について考えていました。


要するに、1次多項式  f(x) = 2x+1 を考えて \bmod{5} f を繰り返し合成させるとどうなるか? という問題を考察していたわけです。

考えてみるとなかなか面白かったので、今日の記事ではこの問題について掘り下げてみようと思います。

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FF5のレベル5デスと整数論 (2)

前回の「FF5のレベル5デスと整数論」の記事では、多くの方々に読んでいただくことになり、たくさんの反響がありました。

「コラッツ予想に似てる」
「数式部分はよくわからなかったけど面白い」
「数学的な考察の勉強になった」
「授業の教材としても使えるかも」
「算術士の考察もしてほしい」→そういうのがあるらしい!
などなど

普段は数学好きな人が読者の大半だと思いますが、前回の記事についてはFFファンやゲームファンの人にも届いたようで、想定外の反応があり面白かったです。

たとえばこんな感想。

なるほどなと思いました。青魔法の独特な効果は、こんな印象を与えるのか。

ほかにも。

FF5では、レベル系魔法など面白いシステムが搭載されていますが、これらを組み合わせた攻略はきっと開発スタッフも想定されていると思うのですよね。

ゲームバランスを考えると、普通だったらボスには効かないようにうまく調整したりするものですが、こうした穴をあえて残しているところにFFスタッフの遊び心が隠されているように思います。こうした余地があるからこそFF5は多くの人を惹きつけるのかもしれないなと思いました。

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FF5のレベル5デスと整数論

Final Fantasy Ⅴ(以下、FF5)というゲームをご存知でしょうか?

私が小学生ぐらいの頃に流行したロールプレイングゲームです。当時、私はFFの魅力がわからずプレイしたことすらなかったのですが、大人になってからその面白さに気づき、はまっています。

今回は、FF5にまつわるちょっぴり整数論っぽい問題についてです。

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タイヒミュラー指標 (1)

明けましておめでとうございます。新年最初の記事になりますが、もう既に新年から2ヶ月以上経っていることに驚きました。

さて、本日あたりから「p進ゼータ関数」という本が店頭に並び始めました。

p進ゼータ関数  久保田-レオポルドから岩澤理論へ (シリーズ「ゼータの現在」)

p進ゼータ関数 久保田-レオポルドから岩澤理論へ (シリーズ「ゼータの現在」)

先月1/25も「重点解説 岩澤理論」という本が発売されていました。

重点解説 岩澤理論 2019年 01 月号 [雑誌]: 数理科学 別冊

重点解説 岩澤理論 2019年 01 月号 [雑誌]: 数理科学 別冊

どちらも岩澤理論の本です。岩澤理論関連の本が立て続けに発売されて、ファンとしては嬉しい限りです。


「p進ゼータ関数」の本が届いたので、早速ですが第2章ぐらいまでをざっと目を通してみました。ここまでは私でも読めるという感じの内容でした。他の岩澤理論の本では飛ばしてしまっていたような議論を丁寧に計算してくれている印象で、独学マンとしてはとてもありがたかったです。

特に、タイヒミュラー指標と呼ばれるものの定義について丁寧に議論されていて、私はこれを初めて理解できた気がしました。感激です。今日はその話をしたいと思います。

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ガロア表現とChebotarevの密度定理の使い方

好きな証明 Advent Calendar 2018 の13日目の記事です。

好きな証明 Advent Calendarということで,私が今年になってから勉強し始めた「ガロア表現」という分野の定理の中で,特に面白いと思った証明を紹介したいと思います。

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