tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

整数論

ガロア表現の基本的なところ(準備編)

明日、ガロア表現を使った記事を書きたいと思うのですが、その内容を理解するための準備編として、今日はガロア表現の基本的なところをまとめたいと思います。注意: 「基本的なところ」と銘打っておきながら申し訳ないのですが、今回の内容は非常に難しい内…

レピュニットと円分体の分解法則

本日 11/11 はレピュニット(1が続く数)の日ですね。毎年この日が来るとtsujimotterはこちらの記事をTwitterに投稿しています。 tsujimotter.hatenablog.com この日は数学が好きな人たちの間でも、レピュニット関連の話題がたくさん投稿されるのですが、特…

「増税問題」が解決しました

増税問題は「消費税の増税に伴って総額表示に現れるようになった新しい数はどのような数か?」という数学の問題のことで、次の記事で問題提起しました。 tsujimotter.hatenablog.com記事を公開してみると、早速 id:asangi_a4ac さんによる鮮やかな解答が寄せ…

増税問題

2019年10月1日に消費税が8%から 10% に引き上げとなりました。正確にいうと、軽減税率というシステムが導入されるようなので、8%と10%が混在することになるみたいです。本記事のタイトルは「増税問題」です。ここでは、消費税増税について一言申し上げたい・…

【ネタ計算】12の345乗を691で割った余りを計算してみた

出先なので正確じゃないですが、690 ですか? #peing #質問箱 https://t.co/mgoDz0QsZg— たけのこ赤軍@9/22名古屋プリパ (@691_7758337633) 2019年9月19日 上のツイートをみて、面白そうだなと思ったので、計算してみました。ただし、普通に計算しても面白く…

続々々・12 = 3×4, 56 = 7×8

12 = 3×4, 56 = 7×8シリーズの第4弾。まさか続くと思っていませんでした。シリーズの記事は「12 = 3×4, 56 = 7×8」というタグでまとめていますので、よろしければご覧になってください。 tsujimotter.hatenablog.com 今日のテーマ 前回までの記事を公開した…

続々・12 = 3×4, 56 = 7×8

前々回の記事 で、 型の問題に対してという拡張が考えられるという話をしました。式 の方は 前回の記事 で扱ったので、今回は式 を解いてみたいと思います。 つまり、今回の問題はこれです。正の整数 が と、次の式を満たすとする:このとき、 の組を求めよ…

続・12 = 3×4, 56 = 7×8

前回に引き続き、 関連の問題を考えたいと思います! 前回の記事を読んでいない方は、ぜひ読んでみてください: tsujimotter.hatenablog.com 前回はロマンティック数学ナイトの登壇者・藤坂さんのツイートをきっかけに、 というタイプの式は、 の他には存在…

12 = 3×4, 56 = 7×8

こんにちは、tsujimotterです。まずはこちらのツイートをご欄ください。【8/24ロマンティスト紹介その6】藤坂一麦2001年5月28日 数学の存するこの世界に生まれる2008年頃 12=3×4,56=7×8の美しさに感動する2015年頃 三角関数のテイラー展開の神秘…

ヘロンの三角形と連分数

今日の話題は、数学のお兄さんこと横山明日希さんによるこちらのツイートから。3辺の長さが整数723、724、725で構成される正三角形に近い三角形の面積は、なんと整数226974になる pic.twitter.com/tOy63OJZ6h— 横山 明日希 (@asunokibou) 2019年8月22日 辺の…

1729とK3曲面

こんにちは。本日、東京にて 日曜数学会 というイベントが開催されますね。日曜数学会は毎年1月・6月・10月の3回開催されていますから、実に5ヶ月ぶりとなります。5ヶ月も経つと「発表したいネタ」が溜まるようで、毎年この時期は発表者がたくさん集…

単項化定理と群コホモロジー

こんにちは。最近、群コホモロジーがマイブームのtsujimotterです。群コホモロジーといえば、以前の記事で群コホモロジーに関する定理「ヒルベルトの定理90」を使って、クンマー理論を導く話を書いたことがありました。 tsujimotter.hatenablog.com今回は ヒ…

33 = X^3 + Y^3 + Z^3 の整数解

今回のテーマは 33 という整数についてです。今朝、アフィンスキームについての重い記事を投稿したばかりですが、この記事では軽い感じでいきましょう。 を固定した自然数として、 なる方程式の整数解を考えたいと思います。今回の内容を紹介する動画ができ…

階乗数の間の関係式:10! = 6!7!

今日は が主役です。 は定義からですが、ここから を除いたを考えてみましょう。 のように置き換えるととできて、これは そのものです。したがって、表題の が成り立ちます。 これだけでも十分面白いのですが、実は という関係式には、こんな面白い特徴があ…

FF5のレベル5デスと整数論 (2)

前回の「FF5のレベル5デスと整数論」の記事では、多くの方々に読んでいただくことになり、たくさんの反響がありました。 「コラッツ予想に似てる」 「数式部分はよくわからなかったけど面白い」 「数学的な考察の勉強になった」 「授業の教材としても使える…

FF5のレベル5デスと整数論

Final Fantasy Ⅴ(以下、FF5)というゲームをご存知でしょうか?私が小学生ぐらいの頃に流行したロールプレイングゲームです。当時、私はFFの魅力がわからずプレイしたことすらなかったのですが、大人になってからその面白さに気づき、はまっています。今回…

タイヒミュラー指標 (1)

明けましておめでとうございます。新年最初の記事になりますが、もう既に新年から2ヶ月以上経っていることに驚きました。さて、本日あたりから「p進ゼータ関数」という本が店頭に並び始めました。p進ゼータ関数 久保田-レオポルドから岩澤理論へ (シリーズ…

「月を入力すると日を返す多項式」と中国剰余定理

「月を入力すると日を返す多項式」の話が、Twitterのタイムライン上で話題になりました。 togetter.comどんな話題かというと、多項式 を以下のように定義したとき この に を代入すると、となり、月を入力すると日を返す多項式になっています!すごい! こん…

続:7は合同数(計算機編)

ここ最近「合同数」について勉強し、理解度が上がってきました。そこで、今日は合同数の具体的な計算をやってみたいと思います。今回は「7は合同数」の記事に出てきた「あの三角形」を計算で求めてみましょう。 tsujimotter.hatenablog.com SageMathについて…

リーチ格子とキャノンボール問題

24 にまつわる「リーチ格子」と「キャノンボール問題」の興味深い関係について紹介します。

合同数問題と保型形式(タネルの定理の証明の概略)

先週の日曜に梅崎さんが主宰する「数学について話す会」というイベントが開催されてtsujimotterも参加してきました。 数学について話す会 数学について話す会は「参加者全員が自分の好きな話をする」という、他ではあまりないタイプのイベントでした。参加者…

セルマー群と2-descent法

を代数体として 上定義された楕円曲線の -有理点の群をモーデル・ヴェイユ群 といいます。モーデル・ヴェイユの定理によって、 が有限生成であることが示されていますが、その自由部分の生成元の個数、すなわちランクを決定するのは一筋縄ではありません。今…

Knightの問題

2021.04.22 お知らせ:こちらの記事につきまして、本質的な内容の誤りがありましたので修正させていただきました。元の記事の記述を赤字で残しつつ、訂正した個所を青字で記しております。以前のバージョンの記事をご覧になったことにより、誤解を与えてしま…

虚数乗法論 (3):だから「虚数」「乗法」だったのか

虚数乗法シリーズ、第3回目です。今回は「虚数乗法」という呼び名に納得してもらえるような話をしたいと思います。記事を読み終わったみなさんが、タイトルのような感想を持つことを期待しています。シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。 tsuj…

虚数乗法論 (2):楕円曲線の由来

虚数乗法シリーズ、第2回目です。シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。 tsujimotter.hatenablog.com 今日は、楕円曲線の基本的な事項についてお話します。この記事を読んだら、楕円曲線の由来が楕円関数からきていることが納得できるかと思い…

虚数乗法論 (1):イントロ

今回から数回に分けて 虚数乗法 について解説するシリーズをはじめたいと思います。その初回として「虚数乗法とは何なのか」「虚数乗法の何がおもしろいのか」について、かいつまんで紹介したいと思います。これを機に虚数乗法について興味を持っていただけ…

類体論のステートメント

今日は 類体論 のステートメント(主張)を述べて、その簡単な解説をしたいと思います。類体論のステートメントは、大きく2種類あって、 合同イデアル群を用いたもの イデール群を用いたもの があります。また、今回は単に「類体論」と言っていますが、 大…

ヘンゼルの補題と7進法人間

みなさん、ヘンゼルの補題 という定理をご存知でしょうか。ヘンゼルの補題は、整数論についてのとても重要な定理の一つです。 進数 という、現代の整数論において必須とも言える概念とも深く関連します。でも、ちょっとだけややこしい。今日はこの定理の紹介…

センター試験2018 数学Ⅰ・数学A 第4問

2018年のセンター試験の問題が気になって 数学Ⅰ・A だけ解いてみました。どれもなかなか面白い問題だったのですが、特に 第4問 が個人的に面白かったので、今日はその問題の解説をしたいと思います。諸注意: 本ブログ記事は、日曜数学者 tsujimotter が趣味…

カタラン予想とマチンの公式

カタラン予想は、次のような有名な数論の予想です。を満たす正の整数 の組は に限る.「予想」とはいっても、実はもう既に解決されている問題です。カタラン予想は、2002年にミハイレスクという数学者によって解決されました。このことについては、以前のブ…