tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

12 = 3×4, 56 = 7×8

こんにちは、tsujimotterです。

まずはこちらのツイートをご欄ください。


特に読んでいただきたいのは、藤坂一麦さんのプロフィールにあるこの一行です。

2008年頃    12=3×4,56=7×8の美しさに感動する


つまり

 12 = 3\times 4 \tag{1}
 56 = 7\times 8 \tag{2}

のような式が成り立つというお話です。

1から8まで順に並んでいる のが面白いですね。このような式は、ほかにもあるのでしょうか?

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というわけで、今日はこんな問題を考えてみたいと思います。

 n 進法で  ab と書かれた数が、 c \times d と表せるとします。ただし、 a, b, c, d はそれぞれ  n 進法の1桁の数で表される数で、 b, c, d b = a + 1, \; c = a + 2, \; d = a + 3 を満たすとします。

このとき、正の整数  n, a を求めよ。

上の例は10進法でしたが、10進法にこだわる必要はないので、一般の  n 進法で考えてみたいと思います。

今回の問題は、高校数学の範囲で解ける問題となっています。よかったら、ぜひ一度自分で考えてみてください。藤坂さんの感動を追体験できるかもしれません。













問題の言い換え

まずは、問題を言い換えるところから始めましょう。

 n 進法で  (ab)_{n} と表せる数は、以下のように表されるのでした。

  (ab)_{n} := an + b

これは、10進法の数  (12)_{10}

  (12)_{10} := 1\cdot 10 + 2

とかけるのと同じことです。


そこで、上の問題は次のように言い換えられます。

 n > a + 3 であるような正の整数  n, a が次の式を満たすとする:

 an + (a+1) = (a+2) \times (a+3) \tag{3}

このとき、 n, a の組を求めよ。


解答例

それでは、解答を考えてみましょう。

 (3) を計算します。

 an + a+1 - a^2 - 5a - 6 = 0
 an - a^2 - 4a - 5 = 0

定数項とそれ以外で分離して、 a で括ります。

 a(n - a - 4) = 5


ここで 整数論的なテクニック を使います。ここが今回のポイントです。

右辺の  5 の約数は  1 5 ですから、左辺全体の約数も  1 5 です。

左辺は  a (n - a - 4) の積の形になっていますから 、 a = 1 または  a = 5 が成り立ちますね。


 a = 1 のとき  n - a - 4 = 5 となり、 n = 10 が成り立ちます。

また、 a = 5 のとき  n - a - 4 = 1 となり、こちらも  n = 10 となります。


したがって、2つの整数解

 a = 1, n = 10
 a = 5, n = 10

が得られました。整数解は これで全部 です。


つまりこういうこと

上の1つめの解

 a = 1, n = 10

は元の式に代入すると

 12 = 3\times 4

になります。また、2つめの解

 a = 5, n = 10

は元の式に代入すると

 56 = 7\times 8

となります。

つまり、元々の2つの式で 解はすべて出尽くしていた いうことですね! 他の式は存在しなかったと!

このように考えると、今回の式に対する藤坂さんの感想も納得いきますね。他には存在しないということが示せたわけですから。たしかに美しい。


さらにいえば、私の解法では、10進法に限らない一般の  n 進法でも考えていたわけですが、なぜか解は  n = 10 のときにしかありませんでした

普通この手の問題を考えると、10進法に限らず解があるものなのですが、10進法にしか解がないというのは興味深いですね!

数が協力して、指が10本ある人間という生物に発見してもらいたがっているような、そんな感じさえします。

次の問題は?

一度このような問題を考えると、さらに一般化したくなってきますね。

元々の問題は、左辺が 2桁の数 で、右辺は 1桁の数2個の積 となっていましたが、桁数や積の個数を変えたらどうなるでしょうか。


たとえば、左辺が3桁の場合 を考えてみましょう。

右辺は1桁の数2個の積だったとすると、

 an^2 + (a+1)n + (a+2) = (a+3)(a+4)

の解を求めることになります。 a, a+1, a+2, a+3, a+4 は1桁の数なので、 n > a+4 が条件です。


この問題については、少しの考察によって 解がない ことがわかってしまいます。

左辺は明らかに  n^2 より大きいわけですが、右辺は  n より小さい2つの数の積なので  n^2 より小さくなるからです。


よって、問題を拡張するためには、右辺の積の個数を3つ以上 にする必要があるでしょう。これついては、次回の記事で考えたいと思います。

お楽しみに!


それでは、今日はこの辺で。

2019/09/11 追記

書いたあとで思い出したのですが、左辺が2桁で右辺が1桁3つの積というパターンもありました。

 an + (a+1) = (a+2)(a+3)(a+4)

こちらも同様の方針で考えることができますので、興味がある人は考えてみてください!

続きはこちら!

tsujimotter.hatenablog.com