注意
写真:本日の主役 インドの魔術師 シュリニヴァーサ・ラマヌジャン (1887-1920)
(Wikipediaより引用)
きっかけ
私が「ラマヌジャン定数」に興味を持ったきっかけは、
Wikipediaの「ほとんど整数」の記事を読んだことでした。
これによると、ラマヌジャン定数と呼ばれる、
「ほんとかよ」と思って調べてみると、
ほとんど整数と虚二次体と類数
この話に惹かれたもう1つの理由があって、それはラマヌジャン定数が「ほとんど整数」になる原因が以下のようなものだったからです。
この数が整数に近い理由は、保型関数の理論を用いて説明される。背景には、虚二次体 の類数が 1 であるという事実がある.
なんだか良くわからないが、とにかく深そうだと。私は思いました。
Wikipediaには、さらに次のような説明が続いています。
類数が 1 であるような虚二次体 は、 が
1, 2, 3, 7, 11, 19, 43, 67, 163 (オンライン整数列大辞典の数列 A3173)
のいずれかのものに限ることが知られており、これらの数から整数に近い一連の数が得られる。
なんと、これはラマヌジャン定数に限ったことではなくて、一般的にいえることなのだと。
「右辺第一項の三乗数はなんだ!?」「744ってなんだ!!??」「どっからこの数式が出てきた???」
ツッコミどころが多過ぎてわけわかりませんが、がぜん興味を惹かれます。
ほとんど整数って・・・
ここで、我に返って、
「ほとんど整数ってなんだよ?Wikipediaで日本人が適当に書いただけじゃないか?」と不安になり、
英語で調べてみることに。
行きついたのはMathWorldの「Almost Integer」。
「あ、たしかにほとんど整数だわ」と確認が取れました。
たしかにそれっぽい数式も出ています。
sometimes known as the Ramanujan constant and which corresponds to the field which has class number 1 and is the imaginary quadratic field of maximal discriminant.
虚二次体って何だ
というわけで、今度は腰を据えて、虚二次体の類数とやらを調べることに。
- 作者:高木 貞治
- 発売日: 1971/10/15
- メディア: 単行本
高木貞治先生の書いた「初等整数論講義」という本を読んでみると、付録にあった表の中で、d=1, 2, 3, 7, 11, 19, 43, 67, 163 では 類数 h が 1 であることがたしかに表記されていました。
でも、内容を見て余計に不安になりました。
整数論ですよ。整数の何乗とかそんな感じの式を組み合わせた整数の方程式を考えてる人達ですよ。
さっきまでの話()とどう関係あるのですか?
一応、虚二次体ってのが、有理数に
この体の上では、 という一見既約な式が、
また、類数の公式についてよくよく調べてみると、ディリクレの指標とか出てきて、その関連でL関数とかゼータ関数が出てきたわけですが。
そっちはそっちで面白くなって「この記事」ができたわけです。
しかし、虚二次体とラマヌジャン定数の関連はいよいよわからなくなってきました。
トンネルを抜けると、そこはモジュラー関数だった
上のような事情で、ラマヌジャン定数の謎の追及は、しばらくお休みしていたのです。
しかし、ひょんなことからモジュラー形式とラマヌジャンの関連を調べていた時に、突如として明るい兆しが見えてきました。
それは「楕円モジュラー関数 」の発見です。
これには大変興奮しました。
見つけたのは、九州大学の次のPDF原稿です。
これによると、j-関数 と呼ばれる関数の q-展開 は次のように表されるのだとか。
どうです!興奮しませんか?
え?わからない?
思い出してください、この式を!
そう!右辺第2項の 744 ですよ!!!
これでついに、疑問の一つである、
「744ってなんだ!!??」
が解決しそうです!
ちなみに、「モジュラー関数」とは、とある特殊な性質を持った関数のことです。
なにをかくそう、さきほどの j-関数 が「モジュラーな」「楕円関数」すなわち「楕円モジュラー関数」なわけですが。
上記の文献によると、ある関数 がモジュラーであるとは、およそ次のような式を満たすことだそうです。
ただし、 という条件が付くそうですが。
なんでこんな式が必要なのかは、数学者に聞いてみなければわかりませんが、
NHKスペシャルのフェルマーの最終定理の話に出てきた数学者によると、
この式はある種の対称性を表す式なのだとか。
もうちょっとわかりやすいたとえ話が、Yahoo!知恵袋にも出てました。
この投稿で紹介されていた下記の本 2点 は近いうちに読んでみたい。
- 作者:サイモン シン
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 文庫
フェルマーの大定理が解けた!―オイラーからワイルズの証明まで (ブルーバックス)
- 作者:足立 恒雄
- 発売日: 1995/06/15
- メディア: 新書
とにかく、上記を満たす楕円モジュラー関数の q-展開
j-関数と虚二次体の融合
さて、次はそろそろ、j-関数とラマヌジャン定数との関係が知りたいところですね。
ここまで理解してくると、なんともあっけなく道が開けるものです。
「ほとんど整数」でググると意外と上の方にこんな記事が出てきます。
この記事の記述によると、
j-functionは実は本当に整数(の3乗)。
j関数の展開式も出てるので、それを使えばさらに整数に近い数が作れる。
とのこと。
なんかいい感じですね!冒頭にあった、疑問の3乗のあたりが解決しそうな兆しが見えてきました。
もうちょっと、深く知るために、上記記事内にリンクされていた MathWorld の j-Function についての記事を読むと、
こんな記述があります。
If , then is a algebraic integer of degree 1, i.e., just a plain integer. Furthermore, the integer is a perfect cube. But these are precisely the Heegner numbers -1, -2, -3, -7, -11, -19, -43, -67, -163. The exact values of corresponding to the Heegner numbers are
きましたよ!奥さん、きましたよ!
整数 の類数が1のときに限り、
これで、三乗の謎が解けそうです。
あとは、左辺をガチャガチャといじれば、ラマヌジャンの定数が出てきそうな予感。
もう興奮しすぎて、鼻血でそうです。
これ以上、頭に血が上るとよくないので、ラマヌジャン定数の謎(1)はそろそろ打ち止めにしたいと思います。
みなさま、ここまで無駄にテンションの高い文章にお付き合いいただきありがとうございました!
次回予告
だいぶ核心に迫ってきた感があります。
気になるのは、以下の点でしょう。
- 左辺を変化させると本当にラマヌジャン定数が出てくるのか
- 虚二次体の類数が1のときだけ、j-関数が三乗数になるのはなぜか。
さぁ、この勢いで疑問が解消していくのか。はたまた、企画倒れに終わるのか。(笑)
キーワードは、j-不変量、1728、虚数乗法、ムーンシャイン、モンスター群。
乞うご期待!
次回の記事はこちら
自由研究:ラマヌジャン定数のナゾ(2) - tsujimotterのノートブック