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日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

素数が無数にあることのオイラー積を使った証明

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はるか昔、ユークリッドによって「素数は無数に存在する」ことは証明されていました。

ここでは、ゼータ関数のオイラー積という比較的近代的な手法を使って、上記の定理を証明したいと思います。

ゼータ関数のオイラー積:


 \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} = \prod_{p;prime} \frac{1}{1-1/p^s}

まず、両辺に  s=1 を代入します。すると、左辺は次のように書けるでしょう。


 \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \frac{1}{n} = \frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots

これは自然数のすべての逆数の和となっており、調和級数という名前が付いています。調和級数は(非常にゆっくりではありますが)発散することが知られています。

この事実は非常に重要なので、もう一度言い換えて書いておきます。

ゼータ関数 は  s=1 の点において正の無限大に発散する。


したがって、 s=1 においては右辺も発散するはずです。


ここで素数が有限個であると仮定すると、右辺は有界です。このことは、左辺の調和級数が発散するという事実に反します


したがって、背理法により仮定が誤りであること、すなわち、素数が無数にあることが示されました。



「オイラー積は素数にまつわる情報を調べるのに有効である」ようなことを以前の記事で書いた記憶がありますが、今回はそのことをまさに実践した内容となっています。
このほかにもオイラー積は素数にまつわるさまざまな定理の証明に利用できます。


今回の話を L関数 に応用すると、実は「ディリクレの算術級数定理の証明」もできてしまうのです。


そのうち公開する予定ですので、お楽しみに。

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