tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

3月14日 #みらいけん数学デー で数学書限定ビブリオバトルしてきた

3/14 は「πの日」そして「数学の日」ですが、そんな数学にまつわる日に開催された #みらいけん数学デー というイベントに参加してきました!

イベント詳細はこちら:
www.shosen.co.jp

日曜数学会のキグロさんが主催で、書泉グランデさん共催というものです。
(書泉グランデさんは、会場のみらい研究所のすぐそばなんですね。これは4階の数学書コーナーで買ってしまいそう!)

数学史家の高瀬先生の講演や素数大富豪など、盛りだくさんなイベントでした。私も「数学書限定のビブリオバトル」に参加させていただきました。

せっかくなので、このブログでもビブリオバトルの準備で用意した私の発表の原稿(当初しゃべる予定だった内容)をご紹介したいと思います。



ニコニコ生放送のタイムシフトでも1週間以内限定で見ることができますので、見逃してしまった方はぜひご覧になってください。

前半:
live.nicovideo.jp

後半(ビブリオバトルはこちらから):
live.nicovideo.jp


発表のようすはこちら:



こんな発表者もいました(私ではない)

紹介した本

 高瀬正仁 訳・解説「ガウスの《数学日記》」日本評論社

ガウスの《数学日記》

ガウスの《数学日記》

私のお気に入りの書籍の一つです。

実は、高瀬先生ご本人を目のまえにしての発表でした!
こっそりと緊張していました・・・。

終わった後サインもいただきました。笑

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発表原稿

今日紹介したいのは「ガウスの《数学日記》」という本です.

みなさん「ガウス」という数学者を知っていますか?
非常に有名な数学者なので,数学好きであれば知っている方は多いかと思います.
あまり詳しくないという方のために,ガウスを簡単にご紹介します.

ガウスが成果を上げたのは「整数論」という分野で,この当時の整数論をほぼすべて一人で作ってしまったといっても過言ではありません.しかもほとんどが19歳,20歳のときの成果だというから驚きです.

ここでは,ガウスのすごさを示すエピソードを一つ紹介します.
古代ギリシャ時代には,正3角形と正5角形が作図できることが知られていました.
ギリシャ時代から約2000年,ガウスは3と5に加えて,正17角形が作図可能であることを発見しました.
19歳になる少し前のある朝,目覚めるなり思いついたのだそうです.元々,将来の道を迷っていたガウス青年だったのですが,この出来事がきっかけで数学者になることを志したのだそうです.まさに,数学者ガウス誕生の瞬間です.

ガウスが,この瞬間にどんなことを考えていたのか知りたい!見てみたい!そんな要望に応えてくれるのが,この「ガウスの《数学日記》」です.「日記」といっても「今日何時に起きた」とかが書いてあるわけではなくて,数学の発見についての日記です.

この本には,数学者を志した19歳から37歳までの日記が記載されていて「数学の発見のメモ」と「日付」がついています.
全146項目あって,それぞれ1から順に並んでいます.興味深いのは,全体の56パーセントが最初の2年間つまり19歳・20歳の頃の成果なのです.
本の構成ですが,1/4はガウスの数学日記が並べられていて,残りはたっぷりと高瀬先生の解説がついています.

早速,中身の解説に入っていきたいのですが,記念すべき第1項目目は,もちろん「正十七角形の作図」についてです.
第1項目目の全文を読み上げてみましょう.
「円周の分割が依拠する諸原理,わけても円周の17個の部分への幾何学的分割が可能であることを・・・」
これだけです.幾何学的分割とは「作図」による円周の等分のことです.すなわち,作図によって正17角形が描けることが述べられていますね.
面白いのが,最後の方が「・・・(原文では “&C”)」となっていて,途中で終わっていることです.こんな風に書きたいことだけを勢いよく書いて,あとは面倒になってやめてしまう,というあたりがリアルで面白いですよね.

この本,どんな人におすすめかというと,特にガウスを少し知っていて,もっと深く知りたいという方におすすめです.
あのガウスですよ.当時どのトピックに興味を持って,どこまで研究を進めていたかがわかるのです.これは数学書ではなかなか知ることができないことだと思います.
というのもですよ.ガウスは完璧主義者でした.それで自分の研究が完成するまで発表したがらなかったのです.実は,ガウスの数学日記を見ると,発表したもの以上に深く研究が進んでいたことがわかります.
とはいえ,先ほどご紹介したように,日記にはメモ程度しか述べられていませんでした.文脈もよくわかりません.そこで高瀬先生の解説の出番です!
日記に書かれた一言の数学的な意味を,様々な文献に基づいて正確に分析されています.この数学的・歴史的な背景が,数学史家高瀬先生ならではの視点でまとめられていて,より深くガウスについて知ることができるんですね.

ガウスを知らない人には,一つおすすめの楽しみ方をご紹介します.まずこの本を買ってください.そして,棚においておきます.そして,ガウスにかかわる何かを知ったら,この本に立ち返ってみてください.正十七角形の作図のほかにも,すごいことをいっぱいしている.ガウスを知った上でこの本を読むと,普段は無機質に見える数学者の,人間らしい部分を垣間みることができて,とても楽しいと思います.

最後に,高瀬先生によるコメントを引用して終わりにしましょう.
「《数学日記》はガウスの全数学の故郷である」

ガウスの数学日記,そしてガウスという数学者に興味をもってくださったみなさま,ぜひご購入ください.ご清聴ありがとうございました.


おわりに

なんと、私の紹介した本が「チャンプ本」になりました!嬉しいです!
今回は書泉グランデさんが出張販売されていて、ビブリオバトルで紹介された本が並んでいたのですが、「ガウスの《数学日記》」は無事完売したとのことです。やったー!

以前から紹介したかった本だったのですが、今回このような機会をいただけてよかったです。素晴らしい本を紹介できてよかった!

みらいけんのみなさま、キグロさん、書泉グランデさん、素敵なイベントをありがとうございました!

それでは今日はこの辺で!

追記:ほかの方がおすすめされていた本です

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