腹痛のためベッドの中で引きこもっていたら、4n+1型, 4n+3型の素数をそれぞれ列挙し合う新しいゲーム「フェルマーゲーム」が生まれました!腹痛もたまには良いことしますね。笑
ゲームのルールは、にせいさんがブログでまとめてくれました。
左側の正十二面体を持っている人が私です(念のため)
簡単に説明すると、フェルマーゲームとは、一方が 型素数を担当し、もう一方が 型素数を担当し、小さいものから順に列挙し合うゲームです。自分の担当の素数があげられなかったり、相手の担当の素数を誤って言ってしまったら負けです。
なぜ 型, 型 という素数の分類にこだわるかというと、これらの分類によって素数の性質がまったく異なる、という面白い現象が知られているからですね。この現象は「フェルマーの二平方定理」として知られています。
こうした数学的背景があり、定理の名前より「フェルマーゲーム」と名付けました。
参考:
tsujimotter.hatenablog.com
こちらが名前の由来となった、フェルマーさん。
ちなみに、ディリクレの算術級数定理という定理によって、こうしたタイプの素数が無限に存在することが示されています。つまり、このゲームは無限に続けることができます!笑
参考:
tsujimotter.hatenablog.com
実は、このゲームはさらに拡張することが可能です。この記事では、その拡張可能性と数学的なバックグラウンドをご紹介しましょう。
オイラーゲーム
フェルマーゲームと同様に、一方が 型素数を、もう一方が 型素数を列挙するバリエーションも考えられます。
このゲームの背景には「オイラーの 6n+1 定理」があります。
参考:
tsujimotter.hatenablog.com
ちなみに、 型素数はどれも 型素数であり、また 型素数は 型素数となるので、このようにそれぞれ言い換えてもいいでしょう。
多人数対戦ゲーム
フェルマーゲーム、オイラーゲームは「2人対戦ゲーム」ですが、これを「4人対戦ゲーム」に拡張することもできます。
型、 型、 型、 型に分担すれば、4人対戦ゲームとなります。これにもちゃんと数学的な根拠があります。
ほかにも、
という法則があります。面白いですね。
マニアックですが、8人対戦ゲームとして「ラグランジュゲーム」というバリエーションも考えられます。ラグランジュゲームでは、 型、 型、 型、 型、 型、 型、 型、 型 に分担します。これは とかける素数の法則が、(20で割ったあまり)によって定まるという、ラグランジュが示した定理が由来です。
参考:
tsujimotter.hatenablog.com
一般に、素数を で割ったあまりとして考えるとき、素数となりうるのは、あまりが と互いに素である場合だけです。
, のときは、 も もそれぞれ と互いに素であるわけです。 は を割り切るので互いに素ではありませんが、例外として素数 を除けば 型の素数は存在しません。
と互いに素な数の個数は、オイラーのトーシェント関数を使って と表せますから、 においては 最大 人対戦ゲームができることがわかりますね。
の場合
の場合、、すなわち と互いに素な数は の 個なので、6人対戦ゲームとなります。
なのですが、これではあまりに芸がないので、少し違うバリエーションを考えます。
という法則を生かして、片方が 型、 型、 型素数を担当し、他方が 型、 型、 型素数を担当しましょう。すると、2人対戦ゲームになるわけですが、自分の担当する素数を把握するのが難しくなって、より緊張感のあるゲームになります。
ちなみに、整数論的にいうと、 は の平方剰余で、 は の平方非剰余です。上の法則は、この「平方剰余」によってもたらされるというのが、整数論の核心部分であり、大数学者ガウスが関心をもったトピックです。ガウスがもし21世紀にいれば、フェルマーゲームを楽しんだことでしょう。
もっと一般には
これまで紹介したものは、どれも個別のケースでした。しかし、これももっと一般的に考えることができます。
最初のフェルマーの二平方定理は、
というものでしたが、これに対して
のような式変形を考えます。少し飛躍させて考えると、この右辺は、整数に を入れた世界で「素因数分解される」と解釈することができます。
この考えをもとに、フェルマーの二平方定理は以下のように書き換えることができます。
ほかの法則も同様です。
正確にいうと、整数に を加えた世界では、必ずしも素因数分解の一意性が保証されないので、「素イデアル分解」というものを考える必要があります。
細かいことはおいて一番重要なことを述べますと、整数に を加えた世界において 素数が分解されるかどうかは、 によって定まるということです。この法則を具体的に述べたものを「素イデアルの分解法則」と言いますが、これが「円分体の類体論」という極めて美しい理論の帰結として得られます。
参考:
tsujimotter.hatenablog.com
すなわち、今回紹介したようなルールは、類体論の系として得ることができます。しかも、類体論にしたがう範囲で、このようなルールは無数に作ることができます。面白いですね!!!
まとめ
フェルマーゲームは、素数をある程度知っている人なら簡単にチャレンジできて、拡張性も十分。さらに、類体論のような興味深い数学の理論が背景にあり、そのエッセンスを味わうことができるゲームです。
素晴らしいゲームですね!(自画自賛)
ぜひ、素数好きが集まったときや、お腹が痛くなった時にはチャレンジしてみてはいかがでしょう!
(フェルマーゲームを考えていたら、私はお腹が痛くなくなりました 笑)