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tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

「フェルマーゲーム」の拡張性について

腹痛のためベッドの中で引きこもっていたら、4n+1型, 4n+3型の素数をそれぞれ列挙し合う新しいゲーム「フェルマーゲーム」が生まれました!腹痛もたまには良いことしますね。笑

ゲームのルールは、にせいさんがブログでまとめてくれました。

左側の正十二面体を持っている人が私です(念のため)


簡単に説明すると、フェルマーゲームとは、一方が  4n+1 型素数を担当し、もう一方が  4n+3 型素数を担当し、小さいものから順に列挙し合うゲームです。自分の担当の素数があげられなかったり、相手の担当の素数を誤って言ってしまったら負けです。


なぜ  4n+1 型,  4n+3 型 という素数の分類にこだわるかというと、これらの分類によって素数の性質がまったく異なる、という面白い現象が知られているからですね。この現象は「フェルマーの二平方定理」として知られています。

フェルマーの二平方定理
 4n+1 型素数は、すべて  X^2 + Y^2 の形でかける
 4n+3 型素数は、すべて  X^2 + Y^2 の形でかくことができない

こうした数学的背景があり、定理の名前より「フェルマーゲーム」と名付けました。

参考:
tsujimotter.hatenablog.com


こちらが名前の由来となった、フェルマーさん。

f:id:tsujimotter:20151201015702j:plain:w180


ちなみに、ディリクレの算術級数定理という定理によって、こうしたタイプの素数が無限に存在することが示されています。つまり、このゲームは無限に続けることができます!笑

参考:
tsujimotter.hatenablog.com


実は、このゲームはさらに拡張することが可能です。この記事では、その拡張可能性と数学的なバックグラウンドをご紹介しましょう。

オイラーゲーム

フェルマーゲームと同様に、一方が  3n+1 型素数を、もう一方が  3n+2 型素数を列挙するバリエーションも考えられます。

このゲームの背景には「オイラーの 6n+1 定理」があります。
参考:
tsujimotter.hatenablog.com

ちなみに、 3n+1 型素数はどれも  6n+1 型素数であり、また  3n+2 型素数は  6n+5 型素数となるので、このようにそれぞれ言い換えてもいいでしょう。

多人数対戦ゲーム

フェルマーゲーム、オイラーゲームは「2人対戦ゲーム」ですが、これを「4人対戦ゲーム」に拡張することもできます。

 8n+1 型、 8n+3 型、 8n+5 型、 8n+7 型に分担すれば、4人対戦ゲームとなります。これにもちゃんと数学的な根拠があります。

 8n+1 型、 8n+3 型素数は、すべて  X^2 + 2Y^2 の形でかける
 8n+5 型、 8n+7 型素数は、すべて  X^2 + 2Y^2 の形でかくことができない

ほかにも、

 8n+1 型、 8n+7 型素数は、すべて  X^2 - 2Y^2 の形でかける
 8n+3 型、 8n+5 型素数は、すべて  X^2 - 2Y^2 の形でかくことができない

という法則があります。面白いですね。


マニアックですが、8人対戦ゲームとして「ラグランジュゲーム」というバリエーションも考えられます。ラグランジュゲームでは、  20n+1 型、 20n+3 型、 20n+7 型、 20n+9 型、  20n+11 型、  20n+13 型、  20n+17 型、  20n+19 型 に分担します。これは  X^2 + 5Y^2 とかける素数の法則が、 \mod{20}(20で割ったあまり)によって定まるという、ラグランジュが示した定理が由来です。

参考:
tsujimotter.hatenablog.com


一般に、素数を  n で割ったあまりとして考えるとき、素数となりうるのは、あまりが  n と互いに素である場合だけです。

 4n+1,  4n+3 のときは、 1 3 もそれぞれ  4 と互いに素であるわけです。 2 4 を割り切るので互いに素ではありませんが、例外として素数  2 を除けば  4n+2 型の素数は存在しません。

 n と互いに素な数の個数は、オイラーのトーシェント関数を使って  \varphi(n) と表せますから、 \mod{n} においては 最大  \varphi(n) 人対戦ゲームができることがわかりますね。

 \mod{7} の場合

 \mod{7} の場合、 \varphi(7) = 6、すなわち  7 と互いに素な数は  \{1, 2, 3, 4, 5, 6\} 6 個なので、6人対戦ゲームとなります。

なのですが、これではあまりに芸がないので、少し違うバリエーションを考えます。

 7n+1 型、 7n+2 型、 7n+4 型素数は、すべて  X^2 + 7Y^2 の形でかける
 7n+3 型、 7n+5 型、 7n+6 型素数は、すべて  X^2 + 7Y^2 の形でかけない

という法則を生かして、片方が  7n+1 型、 7n+2 型、 7n+4 型素数を担当し、他方が  7n+3 型、 7n+5 型、 7n+6 型素数を担当しましょう。すると、2人対戦ゲームになるわけですが、自分の担当する素数を把握するのが難しくなって、より緊張感のあるゲームになります。

ちなみに、整数論的にいうと、 1, 2, 4 7 の平方剰余で、 3, 5, 6 7 の平方非剰余です。上の法則は、この「平方剰余」によってもたらされるというのが、整数論の核心部分であり、大数学者ガウスが関心をもったトピックです。ガウスがもし21世紀にいれば、フェルマーゲームを楽しんだことでしょう。

もっと一般には

これまで紹介したものは、どれも個別のケースでした。しかし、これももっと一般的に考えることができます。

最初のフェルマーの二平方定理は、

 4n+1 型素数は、すべて  X^2 + Y^2 の形でかける

というものでしたが、これに対して

 X^2 + Y^2 = (X+Y\sqrt{-1})(X-Y\sqrt{-1})

のような式変形を考えます。少し飛躍させて考えると、この右辺は、整数に  \sqrt{-1} を入れた世界で「素因数分解される」と解釈することができます。

この考えをもとに、フェルマーの二平方定理は以下のように書き換えることができます。

 4n+1 型素数は、整数に  \sqrt{-1} を加えた世界では  (X+Y\sqrt{-1})(X-Y\sqrt{-1}) の形に素因数分解される


ほかの法則も同様です。

 8n+1, 8n+3 型素数は、整数に  \sqrt{-2} を加えた世界では  (X+Y\sqrt{-2})(X-Y\sqrt{-2}) の形に素因数分解される


正確にいうと、整数に  \sqrt{-d} を加えた世界では、必ずしも素因数分解の一意性が保証されないので、「素イデアル分解」というものを考える必要があります。


細かいことはおいて一番重要なことを述べますと、整数に  \sqrt{-d} を加えた世界において 素数が分解されるかどうかは、  \mod N によって定まるということです。この法則を具体的に述べたものを「素イデアルの分解法則」と言いますが、これが「円分体の類体論」という極めて美しい理論の帰結として得られます。

参考:
tsujimotter.hatenablog.com


すなわち、今回紹介したようなルールは、類体論の系として得ることができます。しかも、類体論にしたがう範囲で、このようなルールは無数に作ることができます。面白いですね!!!

まとめ

フェルマーゲームは、素数をある程度知っている人なら簡単にチャレンジできて、拡張性も十分。さらに、類体論のような興味深い数学の理論が背景にあり、そのエッセンスを味わうことができるゲームです。

素晴らしいゲームですね!(自画自賛)

ぜひ、素数好きが集まったときや、お腹が痛くなった時にはチャレンジしてみてはいかがでしょう!
(フェルマーゲームを考えていたら、私はお腹が痛くなくなりました 笑)