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tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

続・二平方定理 (オイラーの 6n+1 定理)

数学 整数論 オイラー 二次形式

前回の記事:
平方剰余の第一補充則から二平方定理を導く - tsujimotterのノートブック


昨日書いた「フェルマーの二平方定理」の話ですが,定理をもっと一般化できることに気づきました。ワクワクしながらこの記事を書いています。


昨日は

 4n+1 型の素数は  x^2+y^2 の形で表せること」
を示しました。


今日の記事では,

「ほかの形の素数でも同様の定理は成り立つか」

について考えたいと思います。


結論を先に言ってしまうと,

 6n+1 型の素数は  x^2+3y^2 の形で表せる」
が成り立ちます。

これを示すことを目指しましょう。

方針

昨日の記事の過程で,以下の補題を証明しました。

補題1:
 \left( \frac{-1}{p} \right) = 1 のとき,すなわち  i^2 \equiv -1 \pmod p が成り立つ  i が存在するとき,

 (x+iy)\equiv 0 \pmod p

を満たす  x, y が存在する。ただし, x, y 0 < |x| < \sqrt{p} 0 < |y| < \sqrt{p} を満たす整数である。

上の補題では  (-1) を使っていますが,必ずしも  (-1) である必要はありません。つまり,一般に  a としても同様の議論が成り立ちます。


 (-1) の部分を  a に置き換えてみると,次のような命題が成り立つことがわかるでしょう。

補題2:
 \left( \frac{a}{p} \right) = 1 のとき,すなわち  i^2 \equiv a \pmod p が成り立つ  i が存在するとき,

 (x+iy)\equiv 0 \pmod p

を満たす  x, y が存在する。ただし, x, y 0 < |x| < \sqrt{p} 0 < |y| < \sqrt{p} を満たす整数である。


このままいけるところまで進めていきましょう。
まず,両辺に  (x-iy) を掛けます。

 (x+iy)(x-iy) \equiv 0 \pmod p

これを展開します。

 x^2-i^2y^2 \equiv 0 \pmod p

仮定  i^2 \equiv a \pmod p より,

 x^2-ay^2 \equiv 0 \pmod p


あとは, a に具体的に値を入れて,不等式を評価して (右辺) = p となることを示せば良いわけです。具体的に  a に値を入れてみると,冒頭で述べた平方和の公式が作れます。

それでは, a = -3 でやってみましょう。

 a = -3 の場合

 \left( \frac{-3}{p} \right) = 1 について考えます。平方剰余の相互法則から,

 \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) = 1 \Longleftrightarrow p = 6n+1, p = 3

が成り立ちます。これが成り立つ理由については,最後に述べたいと思いますが,まずは成り立つとして考えましょう。


また,補題2より

 x^2+3y^2 \equiv 0 \pmod p

となるような  x, y (ただし, 0 < |x| < \sqrt{p} 0 < |y| < \sqrt{p})が存在します。


左辺を不等式で評価すると,

 0 < x^2+3y^2 < 4p

となりますから,右辺の候補は  p, 2p, 3p のいずれかですね。 p の場合は,目的の式となりますから, 2p, 3p の場合を検討しましょう。


(i)  x^2+3y^2 = 2p の場合:
 p = 6n+1 p = 3 の2パターンで考えます。


 p = 6n+1 の場合,

 x^2 + 3y^2 = 12n + 2

 {\rm mod} \; 3 で考えると,

 x^2 \equiv 2 \pmod 3

となる。ここで   {\rm mod} \; 3 では,

 0^2 \equiv 0 \pmod 3
 1^2 \equiv 1 \pmod 3
 2^2 \equiv 1 \pmod 3

より, x^2 \equiv 2 \pmod 3 となる  x は存在しません。


一方, p = 3 の場合,

 x^2 + 3y^2 = 6

この式を満たすような, x, y は存在しません。

よって,いずれの場合も不適です。


(ii)  x^2+3y^2 = 3p の場合:
この場合,両辺  3 で割ると,

 \displaystyle 3\left( x/3 \right)^2 + y^2 = p

となります。もし, x 3 の倍数であれば,目的の式が成り立つことがわかります。


ここで, x^2+3y^2 = 3p の式に対して,  {\rm mod} \; 3 で考えると,

 x^2 \equiv 0 \pmod 3

上の議論において, x^2 \equiv 0 となるのは  x \equiv 0 であるから, x 3 の倍数となります。

したがって, x/3 = x' とおくと,

 3x'^2+y^2 = p

が成り立つから, x, y の符号を適切に付け替えて目的の式が成り立ちます。


以上,(i), (ii) より,  a = -3 では以下の定理が成り立つことがわかりました。

 \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) = 1 のとき,

 p = x^2 + 3y^2

を満たす整数の組  x, y が存在する。

まったく同じことですが,以下のように言い換えても良いでしょう。

 p=6n+1 または  p = 3 を満たす奇素数  p に対して,

 p = x^2 + 3y^2

を満たす整数の組  x, y が存在する。

以上が求めたかったものです。

ちなみに,この定理は「オイラーの 6n+1 定理 (Euler's 6n+1 Theorem)」と呼ばれています。

参考:
Euler's 6n+1 Theorem -- from Wolfram MathWorld

(また出ましたか,オイラー。)

 \left( \frac{-3}{p} \right) が平方剰余となる  p の条件

最後に  \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) が平方剰余となる  p の条件を考えたいと思います。


まず, p = 3 のとき,明らかに平方剰余となりますから, p として  3 を除いた奇素数を考えます。

平方剰余の乗法性と相互法則より,

 \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) = \left( \frac{-1}{p} \right)\left( \frac{3}{p} \right) = \left( \frac{p}{3} \right)

です。

ここで,

 \displaystyle \left( \frac{p}{3} \right) = \left\{
   \begin{array}{c}
      1 & (p \equiv 1 \pmod 6) \\
      -1 & (p \equiv 5 \pmod 6)
    \end{array}
\right.

となりますから,結局

 \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) = \left\{
   \begin{array}{c}
      1 & (p \equiv 1 \pmod 6) \\
      -1 & (p \equiv 5 \pmod 6)
    \end{array}
\right.

であることがわかります。


結局,以下のことが示せました。

 \displaystyle \left( \frac{-3}{p} \right) = 1 \Longleftrightarrow p = 3 または  p = 6n+1


ところで文献によっては,

 p \equiv 1, 3, 7 \pmod {12}

と書いているものもあるかと思います。この条件は,

 p\equiv 1 \pmod 6 または  p=3

とまったく同値な条件です。 p = 3 を無理矢理条件に含めた書き方となっているのですね。

 p \equiv 1, 7 \pmod {12} {\rm mod} \; 6 では  1 に合同です。そして, p \equiv 3 \pmod {12} となるような素数は  3 以外にありえません。だから,今回の条件と同値です。


また,ほかにも,

 p \equiv 1 \pmod 3 である奇素数 または  p = 3

という表現を見かけることもあるかと思いますが,これもまったく同じことです。 p \equiv 1 \pmod 3 {\rm mod} \; 6 においては  p \equiv 1, 4 ですが, p\equiv 4 \pmod 6 となるような素数は存在しません。ちょっとだけ無駄ですね。

まとめ

今回の記事では,前回紹介した「フェルマーの二平方定理」の延長で,

 p = x^2 + ay^2

となるような,素数  p の条件について考えました。


このような形の式を「重み付き平方和」と呼びます。素数が重み付き平方和で表せる  p の条件は,ほかにもたくさんありますよ。


たとえば, p = 8n+1, 8n+3 のときには, p = x^2 + 2y^2 のように表せます。これは, \displaystyle \left( \frac{-2}{p} \right) が平方剰余である条件に対応しています。

また, p = 8n+1, 8n+7 のときには, p = x^2 - 2y^2 のように表せます。これも同様に, \displaystyle \left( \frac{2}{p} \right) が平方剰余である条件に対応しています。


本当は,この式もすべて証明するつもりで居たのですが, 6n+1 の場合に手間取ったので諦めました。これらは,今回の記事とほとんど同じやり方で証明できますから,興味ある人はやってみてください。


それにしても,素数が重み付き平方和で表せる条件が,平方剰余  \displaystyle \left( \frac{a}{p} \right) に深く関係しているということがわかって,実にスッキリ気持ちの良い定理ですね。


それでは,今日はこの辺で。

関連記事


平方剰余の第一補充則から二平方定理を導く - tsujimotterのノートブック


かつて,この話題にさらっと触れた記事です。

3n+1型の素数とか - tsujimotterのノートブック