昨日書いた「フェルマーの二平方定理」の話ですが,定理をもっと一般化できることに気づきました。ワクワクしながらこの記事を書いています。
昨日は
今日の記事では,
について考えたいと思います。
結論を先に言ってしまうと,
これを示すことを目指しましょう。
方針
昨日の記事の過程で,以下の補題を証明しました。
補題1:
のとき,すなわち が成り立つ が存在するとき,
を満たす が存在する。ただし, は , を満たす整数である。
上の補題では を使っていますが,必ずしも である必要はありません。つまり,一般に としても同様の議論が成り立ちます。
の部分を に置き換えてみると,次のような命題が成り立つことがわかるでしょう。
補題2:
のとき,すなわち が成り立つ が存在するとき,
を満たす が存在する。ただし, は , を満たす整数である。
このままいけるところまで進めていきましょう。
まず,両辺に を掛けます。
これを展開します。
仮定 より,
あとは, に具体的に値を入れて,不等式を評価して (右辺) となることを示せば良いわけです。具体的に に値を入れてみると,冒頭で述べた平方和の公式が作れます。
それでは, でやってみましょう。
の場合
について考えます。平方剰余の相互法則から,
が成り立ちます。これが成り立つ理由については,最後に述べたいと思いますが,まずは成り立つとして考えましょう。
また,補題2より
となるような (ただし, ,)が存在します。
左辺を不等式で評価すると,
となりますから,右辺の候補は のいずれかですね。 の場合は,目的の式となりますから, の場合を検討しましょう。
(i) の場合:
と の2パターンで考えます。
の場合,
で考えると,
となる。ここで では,
より, となる は存在しません。
一方, の場合,
この式を満たすような, は存在しません。
よって,いずれの場合も不適です。
(ii) の場合:
この場合,両辺 で割ると,
となります。もし, が の倍数であれば,目的の式が成り立つことがわかります。
ここで, の式に対して, で考えると,
上の議論において, となるのは であるから, は の倍数となります。
したがって, とおくと,
が成り立つから, の符号を適切に付け替えて目的の式が成り立ちます。
以上,(i), (ii) より, では以下の定理が成り立つことがわかりました。
のとき,
を満たす整数の組 が存在する。
まったく同じことですが,以下のように言い換えても良いでしょう。
または を満たす奇素数 に対して,
を満たす整数の組 が存在する。
以上が求めたかったものです。
ちなみに,この定理は「オイラーの 6n+1 定理 (Euler's 6n+1 Theorem)」と呼ばれています。
(また出ましたか,オイラー。)
が平方剰余となる の条件
最後に が平方剰余となる の条件を考えたいと思います。
まず, のとき,明らかに平方剰余となりますから, として を除いた奇素数を考えます。
平方剰余の乗法性と相互法則より,
です。
ここで,
となりますから,結局
であることがわかります。
結局,以下のことが示せました。
または
ところで文献によっては,
と書いているものもあるかと思います。この条件は,
とまったく同値な条件です。 を無理矢理条件に含めた書き方となっているのですね。
は では に合同です。そして, となるような素数は 以外にありえません。だから,今回の条件と同値です。
また,ほかにも,
という表現を見かけることもあるかと思いますが,これもまったく同じことです。 は においては ですが, となるような素数は存在しません。ちょっとだけ無駄ですね。
まとめ
今回の記事では,前回紹介した「フェルマーの二平方定理」の延長で,
となるような,素数 の条件について考えました。
このような形の式を「重み付き平方和」と呼びます。素数が重み付き平方和で表せる の条件は,ほかにもたくさんありますよ。
たとえば, のときには, のように表せます。これは, が平方剰余である条件に対応しています。
また, のときには, のように表せます。これも同様に, が平方剰余である条件に対応しています。
本当は,この式もすべて証明するつもりで居たのですが, の場合に手間取ったので諦めました。これらは,今回の記事とほとんど同じやり方で証明できますから,興味ある人はやってみてください。
それにしても,素数が重み付き平方和で表せる条件が,平方剰余 に深く関係しているということがわかって,実にスッキリ気持ちの良い定理ですね。
それでは,今日はこの辺で。
関連記事
平方剰余の第一補充則から二平方定理を導く - tsujimotterのノートブック
かつて,この話題にさらっと触れた記事です。
3n+1型の素数とか - tsujimotterのノートブック