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tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

ラングレーの問題についにトドメが刺されたらしい!

数学 幾何学 素数

今日はいつもと趣向を変えて、今年私の耳に届いた数学ニュースを2つご紹介したいと思います。

2016年1月23日追記:本記事内には、内容を取り違えている部分があることが指摘されています。現在修正箇所を調査中です。正確な内容につきましては、引用されている文献を参照いただけますようお願い申し上げます。


1つめのニュースは、新しいメルセンヌ素数の発見 です。

メルセンヌ素数とは、

 2^p - 1

の形をした素数のことです。素数になるためには  p の部分が素数でないといけませんが、 p が素数だからといって必ずしも素数になるとは限りません。

新しい49番目のメルセンヌ素数は、昨年の 9 月に発見され、2016 年 1 月 7 日に、たしかに素数であることが確認されたそうです。前回の記録が 2013 年だったので、実に 3年ぶり の更新となります!

詳しくは、せきゅーんさんのブログに分かりやすくまとまっているので、こちらで詳しく説明するのは控えましょう。
integers.hatenablog.com



2つめのニュースは、ラングレーの問題 についての進展です。今日のメインはこちらです。


ラングレーの問題については、以前このブログでも紹介したことがありましたね。
tsujimotter.hatenablog.com


4つの整数の角 20°, 60°, 50°, 30° を持つ上の図のような四角形が与えられたときに、その四角形の対角線にあるもう1つの未知の角  x を求めよ、という問題です。


この問題、初等幾何による解法が存在するのですが、その解法で用いる補助線が あまりにもアクロバット なために、頭の固い大人たちにはまったく手がつけられないというのです。面白いですね。


ラングレーの問題はさらに一般化することができます。上記の4つの整数の角をそれぞれ  a, b, c, d として与えられたときに、未知の角  x を求める問題を、一般に「整角四角形問題」と呼ぶそうです。今回は
簡単のために、この一般的な問題も含めて、単に「ラングレーの問題」と呼ぶことにします。


一般的なラングレーの問題の面白いところは、任意の角  a, b, c, d に対する、真に一般的な解法が存在しないということです。

どういうことかというと、角度が変わるたびに、その解法がまったく変わってしまうのです。解法に応じていくつかの問題のグループに分けることができるのですが、それぞれでまったく解法が異なっており、一方のグループで使えた解法が、他方では利用できないのです。


ラングレーの問題の研究をされている 斉藤浩さん の手によって、この問題に対する網羅的な解説書が出版されています。その名も「ラングレーの問題にトドメを刺す!」です。

ラングレーの問題にトドメをさす!―4点の作る小宇宙完全ガイド

ラングレーの問題にトドメをさす!―4点の作る小宇宙完全ガイド


タイトルの通り、この本では一般化されたラングレーの問題が、体系的に分類されていて、それぞれのグループごとに適した解法が詳解されています。まさに、ラングレーの問題の膨大なデータベースです。一部、初等幾何による解法が見つかっていない問題のグループがあることも指摘されていました。


上記の本が発売された当時(2009 年)においては、2つのグループについては初等幾何による解法が見つかっていなかったのです。未解決問題については、著者の斉藤さんによって次のように述べられています。

本問は,(筆者の知る限り)初等幾何による証明がまだ発見されていない一連の問題群のうちの1問です。
(中略)
でも,これだけ明確な関係が初等幾何で証明できていないというのはなんともじれったい感じです。

読者の皆さんには,本問を初めとする第11章で述べた一連の未解決問題に是非挑戦して頂きたいと思います。これらの問題の初等的証明を最初に発見するか,あるいはまた「初等的には証明できないこと」を最初に証明するのは,あなたかもしれないのです。


斉藤さんの力強い予言通り、未解決問題についての初等幾何による証明がついに発見されます。

2016年2月号の「現代数学」によると、未解決であった残り2つのグループに新しい解法が見つかったようです。新解法を発見したのは斉藤さんご本人ではないそうなのですが、現代数学にて斉藤さんによる解説が掲載されています。

現代数学 2016年 02 月号 [雑誌]

現代数学 2016年 02 月号 [雑誌]

詳しくはぜひ雑誌を読んでいただきたいのですが、解法の図がなかなかすごいので、ちらっとだけお見せしたいです。


以下の図が、問題となっている2つのグループのうち、1つめのグループに対する解法の例です。

f:id:tsujimotter:20160120191833p:plain:w360

青い線が元の四角形、赤い線が解法のキーとなる部分。この赤い線が「七角形」になっているそうです。後ろの細い線が補助線になるわけですが、いったいどうやってこんな補助線を見つけたというのでしょう!


この解法は、同様のやり方で、もう一方のグループの解法も得られてしまうくらい汎用的なのだそうです。素晴らしいですね!

その解答例がこちら。

f:id:tsujimotter:20160120191849p:plain:w360

赤い線をつけたところが、ちょうど正七角形になっているそうです。「きれいですね」としか言いようがありません。笑


個人的には、正七角形は大好きな図形の一つなので、このようなところに登場すると、たまらなく嬉しくなります


上記の2つの解法は、1つめは 2015年 10 月 27 日に、2つめはそのわずか3日後の 2015 年 10 月 30 日に発見されたそうです。発見者はどちらも aerile_re さんという方です。この方のオリジナルの回答は、以下のページでも見ることができるようです。まさか新発見が Yahoo! 知恵ノートから登場するとは!
note.chiebukuro.yahoo.co.jp


ちなみに、解析的に解くためには、各点を平面においたときの座標を複素数として捉えて、その複素数を解に持つ非常に複雑な方程式を考える必要があります。その複雑さはなかなかの凄みを感じさせます。ぜひ一度、現代数学をご覧になってください。


とにもかくにも、ラングレーの問題の初等幾何による解法は、これにて無事解決ということだそうです!文字通り、トドメが刺されました!


新年早々、素敵な数学のニュースを聞くことができました。ラングレーの進展は正確にいえば昨年の10月だったわけですが、それにしても数学の進展をリアルタイムで聞くことができるのは、なんだかウキウキした気分になりますね!


それでは、今日はこの辺で!

参考ページ

こちらのURLでは、著者の斉藤さんによる、さまざまな系列のラングレーの問題の解法を可視化する flash ツールが公開されています。
www.gensu.co.jp

tsujimotterが正七角形を好きな理由は、こちらを見ていただければ伝わると思います。
tsujimotter.hatenablog.com