tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

セクシー素数

この記事は 明日話したくなる数学豆知識アドベントカレンダー の 28 日目(!?)の記事です。( 27 日目:対数表に「素数」の表がついている?


アドベントカレンダーまさかの限界突破に、なんと遠藤 逸ノ城さんが続いてくれました!

まさか、彼も対数表を持っていたとは。数学好きの人はみな対数表を買いたくなるのでしょうか。
そして、素数表が載っている対数表と載っていない対数表があるのですね。これは買うときは注意しないといけません。


さて、今日はまた素数に関するお話です。
私が 3 日目に書いた この記事 では、双子素数予想についての研究がアツい!という話をしました。考えてみれば「双子素数」って面白い呼び方ですよね。


復習すると、差が  2 であるような素数の組を、双子素数と呼ぶのでしたね。実は、それ以外にも似たような名前の素数の組があるのですよ。

差が  2 であるような素数の組は「双子素数」 (p, p+2)
差が  4 であるような素数の組は「いとこ素数」 (p, p+4)
差が  6 であるような素数の組は「セクシー素数」 (p, p+6)

いとこ素数は「いとこは4親等」からとっているようです。
セクシー素数は、いったいどうしてセクシーなのか。まさか「6親等」が「セクシー」なのか?いやいや、実はまったく関係なくて「6」という数字がラテン語で「sex」だから「sexy」素数なのだそうです。
じゃあ  (p, p+8) の組は何と呼ぶのか。この先が気になるかと思いますが、残念ながら、これには名前はついていないようです。


ちなみに、セクシー素数は「数学嫌いでも興味を持たずにはいられない数学用語ランキング」というランキングで堂々の1位となっています。

数学嫌いでも興味を持たずにはいられない数学用語ランキングTOP50 - gooランキング
【セクシー素数】数学嫌いでも興味を持たずにはいられない数学用語ってナニ!?【次元の呪い】 | ネタフル


セクシーと言えば、グレゴリー・チャイティンという数学者が書いた「セクシーな数学」という本が話題になりましたが、これはセクシー素数の話ではありません。笑

そもそも英題版の元タイトルは「Conversations with a Mathematician」ですから、どこにも「セクシー」などという言葉はないわけです。どっからこんな訳が出てきたのか。

セクシー素数の雑学

せっかくなので、セクシー素数についての性質を1つご紹介したいと思います。


セクシー素数の前のほうの数が、双子素数またはいとこ素数であれば、「三つ子素数」と呼ばれる組になります。数式で書くとこんな感じです。

 (p, p+2, p+6)
または
 (p, p+4, p+6)


セクシー素数の組が5つ連続で並ぶことがあります。これを「セクシー素数の五つ組 (sexy prime quintuplets) 」と呼びます。やはり数式で書くとこんな感じ。

 (p, p+6, p+12, p+18, p+24)

実は、面白いことに、このような五つ組は、無限にある整数の中でもたった1組しか存在しません。その1つとは、こちらです。

 (5, 11, 17, 23, 29)

このことは割と簡単に証明できますので、それを証明して終わりにしましょう。

(証明)
セクシー素数の五つ組は、公差  6 の等差数列  5 項と見ることが出来ます。
ここで、公差  6 と項数  5 は互いに素であることから、 5 項のうち少なくとも 1 つは  5 で割り切れます。
一方  5 で割り切れる素数は  5 のみです。ゆえに、五つ組は必ず  5 を含まなければなりません。 5 より前に、差が  6 になる素数はありませんから、五つ組は  5 から始まります。そして、 29 + 6 = 35 は素数ではありません。
したがって、唯一のセクシー素数の五つ組は  (5, 11, 17, 23, 29) であり、これ以外には存在しません。

(証明終わり)

いかがだったでしょうか。公差  d と項数  n が互いに素であれば、等差数列  n 項のうち少なくとも1つが  n で割り切れる、という定理は一般に成り立ちますし、比較的よく登場するのでよかったら覚えてみてはいかがでしょう。


西暦でいうと今年 2014 年も来年 2015 年も素数ではありませんが、次に素数になる 2017 年は、2011 年との組でセクシー素数です。
それでは、次のセクシー素数である 2017 年をお楽しみに。笑

次回予告(?)

明日は taketo1024 さん が書いてくれると言っていた気がします・・・。お楽しみに。
さすがにアドベントカレンダー終わりですが、taketo1024さんの新記事はこちら。面白いのでぜひどうぞ〜♪
http://taketo1024.hateblo.jp/entry/2014/12/30/164711