tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

虚数乗法論 (1):イントロ

今回から数回に分けて 虚数乗法 について解説するシリーズをはじめたいと思います。

その初回として「虚数乗法とは何なのか」「虚数乗法の何がおもしろいのか」について、かいつまんで紹介したいと思います。これを機に虚数乗法について興味を持っていただければ幸いです。

概略を紹介する記事ですので、細かいところは理解しなくても問題ありません。詳しい説明は、本シリーズの別の記事でじっくり行いたいと思います。

シリーズの記事は、こちらのタグから検索ください。
tsujimotter.hatenablog.com

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類体論のステートメント

今日は 類体論 のステートメント(主張)を述べて、その簡単な解説をしたいと思います。

類体論のステートメントは、大きく2種類あって、

  • 合同イデアル群を用いたもの
  • イデール群を用いたもの

があります。また、今回は単に「類体論」と言っていますが、

  • 大域類体論
  • 局所類体論

の2種類があります。代数体に対する類体論が大域類体論で、局所体に対する類体論が局所類体論です。

今日は、合同イデアル群 を用いた 大域類体論 のお話をします。つまり、代数体についての理論です。

イデール群を使った類体論の定式化については、id:unaoya さんが次の記事でまとめてくれています:
unaoya-pi.hatenablog.com


これまでも本ブログで「類体論的現象」についてはいくつか紹介してきましたが、類体論そのものについてまとめたことはありませんでした。本当はずっと以前からまとめたいと考えていたのですが、「無限素点」の取り扱いに自信がなかったためお蔵入りとなっていたのでした。ようやく出してもいいかもしれないと思えるようになったので、出してみたいと思います(間違ったことを言っていたらごめんなさい)。

無限素点に関してはやはり扱いが面倒だと感じたので、前半では無限素点を考える必要のない 「総虚な体」 上に限定した話をします。ただし、今後のことも考えて、後半でおまけ程度に一般の場合の話もします。


ちなみに今回の記事は、今後書きたい記事の前提知識を与えることを目的として書いています。そのため、内容としては最低限のものしか述べないつもりです。ご了承ください。

目次:

  • 前提知識:素イデアル分解とフロベニウス
  • アルティン写像
  • 導手とray類体
  • 類体論の主定理
    • 具体例:ヒルベルト類体
  • 無限素点を考慮した修正
    • 具体例:円分体
  • おわりに
  • 参考文献
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補足:微分形式は2回外微分すると0になる

tsujimotter.hatenablog.com

の記事の補足として、3次元閉多様体上の微分形式  \omega_0, \omega_1 に対して  2 回外微分を作用させると 0 になること、すなわち

 d(d\omega_0) = 0
 d(d\omega_1) = 0

を示したいと思います。記号の使い方は、前の記事に準じます。

綺麗に項が消えていく、気持ちの良い計算でした。

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ストークスの定理

電磁気学やベクトル解析の講義で「ガウスの定理」や「ストークスの定理」「グリーンの定理」という法則を習ったと思います。これらの法則は一見別々のものに見えますが、微分形式を用いるとこれらの法則を統一的に扱えるという素敵なお話を紹介したいと思います。

最近、この話を理解して楽しくなってしまって、自分なりにまとめてみたくなりました。よろしければお付き合いください。

今回の予備知識としては、以下の記事の2章ぐらいまでを読んでおくといいかと思います。
tsujimotter.hatenablog.com

また、「ガウスの定理」や「ストークスの定理」等の定理の主張は知っているものとして進めます。

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部分分数分解の公式

Twitterを眺めていると、とても楽しいツイートが流れてきました。

部分分数分解のテクニックだそうです。私も知りませんでした!

 \displaystyle \frac{1}{(s+1)(s+2)}

という多項式の積で書かれた分数を、 \alpha, \beta を使って以下のように置きます。

 \displaystyle \frac{1}{(s+1)(s+2)} = \frac{\alpha}{s+1} + \frac{\beta}{s+2} \tag{1}

この  \alpha, \beta を求めよ、というのが部分分数分解の問題です。

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積分定数とは何だったのか

数学ガール「ポアンカレ予想」を読んでいて(あまり本題に関係なく)感動したのが、不定積分 についてです。

 f(x) の不定積分は、原始関数  F(x) を用いて以下のように表せます。

 \displaystyle \int f(x)dx = F(x) + C

ここで、 C は積分定数です。

高校の時からずっと機械的に(もしくはおまじない的に)

 C は積分定数である」

と書いてきたわけですが、この積分定数とは一体何か、というのが今回の主題です。

考えを進めていったら、昨日ブログで書いたド・ラームコホモロジーも出てきてびっくり。よかったら最後まで御覧ください。

昨日の記事:
tsujimotter.hatenablog.com

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