今日は 3/14 、すなわち 「円周率の日」 ということで、円周率の一風変わった近似式を紹介したいと思います。
今回紹介したい式はこちらです:
ここで、 は自然対数です。
「なんじゃこりゃ」というような式ですが、実際に計算してみるとその精度の高さに驚きます。
Google電卓を使うと、簡単に計算できるのでやってみましょう。Googleの検索窓に数式を入れると、電卓としてその計算を実行してくれます。
以下の式を検索窓に打ち込んでみてください。
ln(640320^3+744)/sqrt(163)
この "ln" というのは自然対数を表す記号で、"sqrt" はルートの記号ですね。
それでは実行してみましょう。
計算結果は
3.14159265359
です!!
なんと、小数点以下10桁 まで一致しています。10桁というのはGoogle電卓の限界によるもので、実際はもっと先の桁まで一致します。
すごいですね。いったいどこからこんな式が出てきたのでしょうか。640320 とか 744 とか 163 という数は、どこからやってきたのでしょうか?
円周率近似式のカラクリ
残念ながら、これらの質問にすべて答えることは簡単ではありません。一つだけヒントをいうと 「ラマヌジャンの定数」 が関係しています。
ラマヌジャンの定数については、以下の記事で紹介しています。
tsujimotter.hatenablog.com
もしかすると、ラマヌジャンの定数について既に知っている人がいるかもしれませんが、改めて紹介したいと思います。
ラマヌジャンの定数とは
という数のことです。この数は、計算してみると
という値となり、なんと小数点以下12桁まで9が並ぶことになります!
つまり、極めて整数に近い値をとるのですね。
余談ですが、ラマヌジャンの定数にはラマヌジャンは関わっていません。
では、なんで「ラマヌジャンの定数」と呼ばれているかというと、「ラマヌジャンならこんなこと考えてもおかしくない」というが由来です。笑
偶然にしたらよく出来すぎているなと思ってしまいますが、実はちゃんとした理由があります。
実際、複雑な計算によって
というような評価が得られ、小数点以下が十分に小さいので
という近似式が得られます。こうした事実が背景にあります。
あとは、両辺 をとると
という感じで、冒頭の近似式を得ることができるというわけです。
式 の近似において、小数点以下の数値が極めて小さい値になったことで、円周率の近似の精度もかなり高いものになったというわけですね。
いやー面白い。
おわりに
今回は、円周率の日にちなんで、円周率を高精度で計算できる式を紹介しました。
このへんで終わりにしてもよいのですが、最後に「今回あえてこの式を紹介した理由」を話したいと思います。
上のカラクリの説明で「複雑な計算によって」と書いたところ、気になりませんか?
この部分を理解するためには 虚数乗法論 という(少なくとも今の私にとっては)相当難しい理論が必要になります。
ざっくりいうと、上の式の の部分は 関数 の特殊値に由来しています。虚数乗法を持つ楕円曲線について考えることで、 関数の特殊値が整数になることがわかり、これが に一致するのです。この事実と 関数の性質から、上記の近似式を導出することができるのです。
いつかこのブログで紹介したいなと思い、これまで虚数乗法について勉強してきました。そろそろまとめることに挑戦してみてもいいかもしれません。
というわけで、近々、虚数乗法についてのシリーズ記事を書いてみたいと思います。
もちろん、本当にかけるかどうかはわかりません。(執筆のために準備をしはじめたのですが、やっぱり難しくて少し心が折れ始めています。。。笑)
気長にお待ちいただければと思います。
それでは、今日はこの辺で。
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