保型形式 という数学用語を聞いたことはあるでしょうか?
数学好きの方の中には、フェルマーの最終定理の証明で楕円曲線と保型形式が役に立った、という話を聞いたことがある方もいるでしょう。
私が保型形式に出会ったのは、数学ガール「フェルマーの最終定理」という本でした。
この本の最終章では、保型形式の具体例を計算して、楕円曲線と保型形式の深い関係について、その入口の部分を体感できます。この本を読んで「なんだか面白そう」と思った方も多いのではないかと思います。私もその一人です。
一方で、さわりの部分だけでは物足りない、もっと保型形式のその先を勉強してみたい、と思う方も多いのではないかと思います。
今回の記事は、そんな「あなた」のための記事です。
この記事を通して詳しく解説しますが、保型形式とはたとえばこんな感じの関数です(現時点でこれが分からなくても大丈夫です):
保型形式は端的に言うと「きわめて多くの対称性を持った特殊な関数」です。対称性からさまざまな良い性質が導かれ、これにより数学の多様な分野と関わることができます。
また保型形式は(上にあげたものだけには留まらない)多様な関数が集まった、とても広いクラスを表す概念です。そのため、全容を学ぼうとするととても大変ですし、私自身もよくわかっていません。
そこで今回は、保型形式のあくまで一部分である モジュラー形式 を紹介したいと思います。保型形式とモジュラー形式は、以下のベン図に示すような包含関係にあります:
真面目にモジュラー形式を勉強しようとすると難しいですが、今回の記事の目的はあくまでその魅力を伝えることです。言いかえると モジュラー形式を勉強するとこんなにも楽しい ということを紹介したいと思います。
記事の構成ですが、前半の「導入編」と後半の「応用編」に分けたいと思います。別記事にして、後半の応用編は明日投稿したいと思います。
前半の「導入編」では、魅力をお伝えするのに必要な 最低限の知識だけを紹介 します。
後半の「応用編」では、導入編で得た知識を活用して、モジュラー形式の魅力的な応用事例を「これでもか」というぐらい紹介したいと思います。応用編が特におすすめです!
続きを読む導入編の目次(この記事です!)
- 導入①:三角関数のおさらい
- 導入②:モジュラー形式とは?
- 導入③:これだけは覚えて欲しい2つのモジュラー形式
- 導入④:q-展開とカスプ形式
- 次回予告!
- 「応用編」公開しました!
- 今回の分の参考文献
応用編の目次(次回の記事)
- 応用①:「関数」の間の非自明な関係式が得られる(難易度:★★)
- 応用②:「数列」の間の非自明な関係式が得られる(難易度:★★)
- 応用③:ヘッケ作用素と2次のゼータ(難易度:★★★)
- 応用④:素数を表現する2次形式(難易度:★★★★★)
- 応用⑤:楕円曲線とフェルマーの最終定理(難易度:★★★★)