tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

テレビ出演&群論講座のお知らせ

いつもブログを読んでくださってありがとうございます!

今日5月9日は私の誕生日なのですが、今年で36歳を迎えまして「平方数歳」になりました。おかげさまで今年も楽しく数学をできています!

せっかくの36という年齢なので、36にまつわる何かをしたいですね。何かアイデアある方いましたら、ぜひコメント欄かTwitterで教えてください。


さて、今日は2つほどお知らせがあるのですが、その一つ目が テレビ出演 についてです。

テレビ朝日の ガリベンガーV という番組に出演することになりました。

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ガリベンガーVという番組は、最近流行りのVTuberが出演して、わいわい楽しく科学的なトピックを勉強するという番組です。tsujimotterはもちろんVTuberとして・・・ではなく特別講師の方で出演させていただきます。

今回のテーマは 「数字0(ゼロ)」 です!

これまで85回ほど色んなテーマを紹介してきた番組ですが、数学の回は「今回が初めて」とのことです。そんな特別な回に講師として呼んでいただきました。

来週5/15(土)の深夜24時5分 に放送されます!
(土曜から日曜に変わる瞬間の時間です。)

テレビをお持ちでない方も(私も持っていないw)TVerというサイトで、放送直後から(無料で)見ることができます。便利な世の中になったものですね!

ぜひご覧になってください!
www.tv-asahi.co.jp


Twitterのハッシュタグ #ガリベンガーV で実況などしていただけると、大変喜びます!



裏話などは、また放送後に紹介できればと思っています。当日はVTuberのみなさんが(びっくりするぐらい)楽しそうに聞いてくださったので、私としてはとても楽しい気分で話せた収録でした。どんな形で放送されるかはわからないですが、これまでの放送の様子を見るにきっと楽しくまとめてくださると思います。お楽しみに!




もう一つのお知らせが、表現者のための数学 という数学の講座についてです。

peatix.com
【以前の申し込みページで申し込まれた方へ:手違いにより元のイベント申込ページが削除されてしまいました。お手数ですが、返金の完了を確認の上、再度こちらよりお申込いただけますでしょうか。】


キュレーターの高橋裕行さん、ピタゴラスイッチ等に携われた星功基さんのお二人と私の三人で、やさしく楽しく大学数学の初歩に親しむ講座を企画することになりました。

元々、高橋さんから「文系の人にわかるように群論について教えて欲しい」というリクエストがあり、群論の勉強会を開こうとなったのがきっかけです。人文科学でもレヴィ=ストロースの「親族の基本構造」など、群論を応用した研究があり、そういった事例が見聞きして群論に興味を持ったとのことです。

ちなみに高橋さんは、以前私がニコニコ学会βの本に載ったときにインタビューをしてくれた方です。そのときも色々と話を引き出してくださって、とても楽しいインタビューだったのを覚えています。

せっかく準備して話すなら、高橋さんだけでなくさまざまなバックグラウンドを持った方に対しても大学数学に親しむ機会を提供できるのではと思い、オープンなオンライン講座とすることになりました。

参加者としては次のような人たちを想定しています。

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数学の専門的な話を勉強したい方向けの講座ではないので、その点はご注意ください。あくまで群論の初歩的なところに触れてみたい方向けの講座となっています。


今回のテーマ「群論」では、月1回ずつの3回に渡る講座となっていますが、5/13(木)の第1回 の内容は次のような話になりそうです。

1. なぜ「群」を学ぶのか?
2. キーワードは「対称性」?
3. 身近な対称性
4. 「対称性」から「群」へ(本日のメインパート)
5. 「巡回群」を探してみよう!

第2回では、巡回群以外の群や、もう少しだけ突っ込んだ群論の概念を紹介し、さらに群論の応用として上で触れたレヴィ=ストロースの事例や、音楽理論への事例などを紹介する予定です。

今回の講座の特色としては、単に群論の勉強をするというだけではなく、それを何かしらの表現活動(アート・デザイン・作曲・プログラミング・スポーツ・料理・文章執筆・動画制作 etc.)に活かしていただくというところにあります。

実際、第2回で紹介するように、群にはさまざまな分野への応用があります。また、群論そのものを使わずとも、そこで登場する「対称性」「可換・非可換」などのアイデアや、ものごとを抽象的に捉えて「異なるものを同じものとみなす思考」などは、さまざまな表現に応用できるものだと思います。

そこで第3回では、参加者のみなさんに群論のアイデアを使った「作品」を作っていただき、「課題発表会」でその内容を紹介していただこうと考えています。さまざまなバックグラウンドの参加者のアイデアを見ることで、より広い視野が得られるような会になることを期待しています。

tsujimotterは第1回に向けて絶賛準備中です。今の所かなり面白い講座になるのではないかという実感があります。まだ参加者は募集しています。みなさまのご参加をお待ちしております。

peatix.com
【以前の申し込みページで申し込まれた方へ:手違いにより元のイベント申込ページが削除されてしまいました。お手数ですが、返金の完了を確認の上、再度こちらよりお申込いただけますでしょうか。】


それでは今日はこの辺で!

モジュラー曲線(5):メイザーの定理

モジュラー曲線というのは、上半平面  H \Gamma = \operatorname{SL(2, \mathbb{Z})} の合同部分群で割ったものとして定義されます。

定義からは、明らかに複素解析的な対象に見えると思います。ところが、実はモジュラー曲線は数論的な対象でもあるのです。

わかりやすい応用として、楕円曲線の位数有限な点に関する メイザーの定理 があります。

定理(メイザーの定理)
 E \mathbb{Q} 上の楕円曲線とする。このとき、 E の位数有限の有理点の位数  N は、 N = 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12 のいずれかである。

これは楕円曲線の有理点の構造を決定するために大変有用な定理です。数論における大定理といってよいと思うのですが、この定理を証明するのにモジュラー曲線が用いられるのです。

メイザーの定理の証明自体は私は理解できていないので、ここでは解説はできません。今回は、位数有限の有理点とモジュラー曲線の関係に限って紹介したいという記事です。

話のキーとなるのは、モジュラー曲線の一点一点が楕円曲線の同型類に対応する という事実です。つまり、モジュラー曲線は楕円曲線の モジュライ空間 であるのです。

また、モジュラー曲線のもう一つの側面として、代数曲線としての性質があります。具体的に、方程式のなす点集合として表すことができるのです。この曲線としての性質から、たとえば位数Nの有理点を持つ楕円曲線が存在しないことが言えてしまうのです。


そんなわけでモジュラー曲線のすごさをお伝えしたいと思います。

今回の記事はtsujimotterがまさに勉強中の「理解の最前線」を書いている記事となっています。私の理解不足により誤りを含んでいる可能性があります。
勉強する際は、私の記述をうのみにせず参考文献をご参照いただければと思います。参考文献は一番下に書いています。

また「モジュラー曲線」シリーズの過去記事はこちらで読むことができます:
tsujimotter.hatenablog.com

今回の記事はシリーズ記事ですが、前回(モジュラー曲線(4))からずいぶんと時間が経ってしまいましたので、この記事単体で読めるような記事にしたいと思います。そのため、過去の記事と重複する部分もかなりあるかと思います。必要に応じて過去の記事を参照してみてください。

 

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正十二面体群とPSL(2,5):国際数学者会議PR企画の宣伝動画について

4年に一度、国際数学者会議(ICM: International Congress of Mathematicians)と呼ばれる大きな催しが行われます。フィールズ賞という、数学界の最高峰の賞が発表される会としても知られていますね。

次回、2022年にはロシアのサンクトペテルブルグにてICM 2022が開催されるようです。私がこの情報を知ったのは、ICM 2022の公式が出しているプロモーション企画の情報を、Springerさんのツイート経由で見たのがきっかけでした。

プロモーション企画のタイトルは "Surprising math user video contest" です。いかにも楽しそうなタイトルですね!

企画のページはこちらです:
icm2022.org

要するに、数学に関する面白い動画を投稿するコンテストのようですね。我こそはという方は挑戦してみてはいかがでしょうか。


特に見ていただきたいのは、ICM 2022公式が出している宣伝動画です。
www.youtube.com

動画を見てまず感じるのは、映像に登場する図がとてもきれいだということですね。それだけでもそそられますが、内容も大変面白く、私の心に深く刺さりました。

とはいえ、企画のプロモーション動画ということもあり、時間は短めで、かつ音声による説明はまったくありません。内容自体も結構高度なので、背景知識がないとなかなか理解するのは難しいかと思います。

そこで今回は、あくまで私の理解できた範囲で、このICMの動画の内容の解説を試みたいと思います。もちろん、私も100%理解できているわけではないので、あやふやな点も多々あるかと思います。その点をご了承の上、見ていただけると嬉しいです。


テーマは

正十二面体群と  \operatorname{PSL}(2, \mathbb{F}_5) の不思議な同型について

です。大変面白いトピックなので、ぜひ最後まで読んでいただきたいです!

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「π>3.05を凄すぎる方法で証明」を整数論的に考える

 \pi > 3.05」を示す問題が2003年の東大入試で出題されました。これは有名なのでみなさん良くご存じかと思いますが、一方で以下の動画のような解法はご存知でしょうか?

www.youtube.com

たいへん面白い解法なので、まずは一度ご覧いただきたいです。動画の解説もとても丁寧です。今回の記事はこの動画の内容を前提としてお話したいと思います。


動画の概要欄にもリンクが載っていますが、Yahoo知恵袋の以下の質問の「その他の回答」に載っていた回答が元ネタだそうです。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

元ネタの人はどうやって発見したんでしょうね。いやー不思議です。


今回私が考えたいのは、いったいどうしてこんな解法が存在するのであろうかということです。登場するパラメータが絶妙なバランスで構成されていて、このような解法が存在すること自体が非自明です。


今回はその背景にある理屈を整数論的に分析してみたいと思います。最後まで読んでいただければ、実は動画で紹介された   17, 12 という数が、いかに特別な数であったか分かるかと思います。

それではぜひ最後までお付き合いください!

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(自由研究)面白い二重根号と「単数」を使った外し方

高校数学で習った「二重根号」を覚えていますでしょうか。たとえば

 \sqrt{4 + 2\sqrt{3}}

のように、根号の中に根号が入れ子になっている式を 二重根号 といいます。


上の二重根号は一見複雑な式に見えますが、実は次のように考えることで「ただの平方根」であることがわかります。

 \sqrt{4 + 2\sqrt{3}} =  \sqrt{(\sqrt{3} + 1)^2} = \sqrt{3} + 1 \tag{1}

不思議なことに、二重だった平方根が「解けてしまう」というのですね。


一般に

 (\sqrt{a} \pm \sqrt{b})^2 = a+b \pm 2\sqrt{ab} \tag{2}

が成り立つので

 \sqrt{(a+b) \pm 2\sqrt{ab}}

という形の二重根号はすべて解けてしまうわけですね。( a = 3, \; b = 1 とすれば、式  (1) が得られます。)



さて、今日紹介したい 面白い二重根号 は、三乗根が入った次の式です:

 \sqrt[3]{5\sqrt{2} - 7}

一見、複雑な二重根号なので、これ以上簡単になりそうにないのですが、実はこの二重根号も解けてしまうのです。一体どんな感じになるのでしょうか?

自分で考えたい人は少しストップして考えてみてください。

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(自由研究)49をmod 100でべき乗する話の一般化?

横山明日希さんのこちらのツイートの内容がとても興味深かったので、自分でもいろいろ一般化ができないかと考えてみました。

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箸袋で作った図形は正五角形か?

今日は 箸袋があるとつい作っちゃうこの図形 についての話です。

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細長い紙を用意して、上の図をイメージしながら折り曲げて「ぎゅっと」すると、きれいに正五角形が作れてしまいます。

箸袋に限らず、お手元に紙テープなど「細長い帯状のもの」があれば簡単に折ることができます。よかったらぜひやってみてください。


ところで、上で作った図形はたしかに五角形ですが、本当に正五角形だろうか? というのが本日の問いです。つまり、辺の長さと角の大きさは、厳密にすべて等しいのでしょうか?

これまで漠然と正五角形だろうと思っていましたが、よくよく思い返してみると、それを証明したことはありませんでした。一見簡単にできそうな気がしたのですが、やってみたらなかなかチャレンジしがいのある問題でした。


というわけで、今日は「箸袋で作った図形が正五角形であること」を証明してみたいと思います!

tsujimotterは昨日の夜にこの問題について考えていたのですが、証明が完成できたときはとても爽快な気持ちになりました。この快感を味わってもらいたいので、お時間ある方は、ぜひ一度自分で証明を考えてみてください。


以下では、私の思いついた証明方法を紹介したいと思います!

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