tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

フィボナッチ数の逆数和がテータ関数を使って表せるという話

今日のテーマは フィボナッチ数 です。

またかと思われるかもしれませんが、最近たしかにフィボナッチ数の話が多いですね。


今日の切り口は、フィボナッチ数の逆数和 です。特に、奇数番目のフィボナッチ数の逆数和

 \newcommand{\HLNO}{\unicode[\sans-serif,STIXGeneral]{x306E}} \displaystyle \begin{align} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{F_{2n+1}} &= \frac{1}{F_{1}} + \frac{1}{F_{3}} + \frac{1}{F_{5}} + \frac{1}{F_{7}} + \cdots \\
&= \frac{1}{1} + \frac{1}{2} + \frac{1}{5} + \frac{1}{13} + \cdots \end{align} \tag{1}

について考えたいと思います。


 (1) の和を100項ぐらい数値計算させてみると、だいたい次のような数値となります:

 \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{F_{2n+1}} \fallingdotseq 1.8245151574 \tag{2}


今日はこの和を、テータ関数 を使って表すことができるというお話を紹介したいと思います。

単に関数の式変形ができる、という話にとどまらず、その導出には ヤコビの2平方和の定理 が出てくるなど、整数論とも繋がりがあって大変おもしろいです。

よろしければ最後までお付き合いください。

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小数展開にフィボナッチ数列 etc. が出てくる分数(後編)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の2日目の記事です。


昨日の記事の 後編 として、小数展開に色々な数列が登場するような分数を生み出していきたいと思います!

f:id:tsujimotter:20211130182234p:plain:w480


さてここで問題です!

以下の4つの分数は、それぞれどんな数列が出てくる分数でしょうか?

  1.  \displaystyle \frac{10000}{9799}
  2.  \displaystyle \frac{1010000}{999899}
  3.  \displaystyle \frac{2999900}{999899}
  4.  \displaystyle  \frac{10100}{970299}

(答えは記事の中で紹介します。)


前編の記事をまだ読んでいない方は、前編の記事をぜひご覧になってください。
tsujimotter.hatenablog.com


前回に続いて、分数の小数展開には以下のページをご活用ください!
tsujimotter.info

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小数展開にフィボナッチ数列 etc. が出てくる分数(前編)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の1日目の記事です。


アドベントカレンダーの季節がやってまいりました。今年も日曜数学アドベントカレンダーを立てまして、この記事はその1日目の記事となっています。
adventar.org

日曜数学アドベントカレンダーは、今年で 7年目 になります。なかなか続いていますね。

まだまだ空きはありますので、よろしければご参加お待ちしています。みなさまの記事を楽しみにしています!


トップバッターのこの記事では

 \displaystyle \frac{100}{9899} \tag{1}

という分数について考えてみましょう。

実際に計算して、小数展開を求めてみるとこうなります:

 \displaystyle \require{color} \frac{100}{9899} = {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0.01010203050813213455}90463\ldots \tag{2}

小数部分を2桁ずつ区切ってみると

 \displaystyle {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0.\;01\;01\;02\;03\;05\;08\;13\;21\;34\;55}\;90\;46\;3\ldots

となりますが、ここから

 \displaystyle {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0, \; 1, \;1, \;2, \;3, \;5, \;8, \;13, \;21, \;34, \;55}

という数列が得られますね。

この数列、なんと フィボナッチ数列 になっているのです! 面白いですよね!

f:id:tsujimotter:20211130174416p:plain:w480


いったいどういう仕組みでフィボナッチ数列が出てくるのでしょうか。今日はその理屈を解説したいと思います。

フィボナッチ数列以外にも、同様の仕組みで数列の値が小数展開に出てくる分数を作ることができます。これについても紹介したいと思います。(後編の記事で紹介します。)

それでは、最後までぜひご覧ください!


なお、今回の記事では、分数の小数展開を計算することが必要になります。電卓で計算する際は、桁数に限界があり不便です。

そこで以下のページで、小数展開を任意の計算精度で出せるようにしてみました! 自分で計算してみると楽しいので、よろしければご活用ください。
tsujimotter.info

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循環小数とアルティン予想

これまでtsujimotterのノートブックでは、循環小数についていろいろな話題を紹介してきました。今日はとっておきのトピックとしてアルティン予想 という 未解決問題 について紹介したいと思います。

これまでの記事はこちらから見ることができます:
tsujimotter.hatenablog.com

このブログでは、これまでずっと 「素数  p の逆数  1/p の循環節の長さ」 について興味を持ってきました。


まずは、 p \neq 2, 5 なる素数  p について、 1/p の循環小数を計算してみましょう。例として  30 以下のものを計算してみます:

 \; 1/3 = 0.\overline{3} (長さ: 1)
 \; 1/7 = 0.\overline{142857}  (長さ: 6
 1/11 = 0.\overline{09} (長さ: 2)
 1/13 = 0.\overline{076923} (長さ: 6)
 1/17 = 0.\overline{0588235294117647} (長さ: 16
 1/19 = 0.\overline{052631578947368421} (長さ: 18
 1/23 = 0.\overline{0434782608695652173913} (長さ: 22
 1/29 = 0.\overline{0344827586206896551724137931} (長さ: 28

太字で書いたのは、循環節の長さがちょうど  p-1 になっているものです。


実は、あとで述べるように、 1/p の循環節の長さの限界は  p-1 になります。

そこで、長さがちょうど  p-1 となる素数はいったいどの程度あるのか?という問題が気になってきます。

この先を知りたい方は、1000までであれば以下のページに載っています:
tsujimotter.info


今回の主役であるアルティンは、このような長い循環節を持つ素数は、無限に多く存在し、その割合も具体的に計算できると予想しました。

これが成り立つとすれば大変興味深いですが、実際長い循環節を持つ素数については分かっていないことが多く、このアルティン予想は難問の一つとされています。


今日の記事では、まずアルティン予想の正確な主張を述べたいと思います。その上で、アルティン予想がいったいどういう理屈で予想できるのか、ヒューリスティックな議論を紹介したいと思います。この議論は代数的整数論・解析的整数論を使った大変面白い議論となっています。

最終的には、「あの有名な未解決問題」も登場します。最後までぜひご覧になってください!

注:なお、今回の記事はtsujimotterの最前線の知識を紹介するものとなっています。理解していない部分も多く、乱暴な議論もあるかもしれません。このブログの趣旨は「楽しく数学を勉強している様子を紹介する」というものになっていますので、温かい目で見ていただければと思います。

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ガウス流・循環小数計算法

循環小数熱が再燃してきまして、いろいろ調べている中で面白い話を見つけました。

かの有名な天才数学者ガウスは、こんなやり方で循環小数を計算していたそうです。今回の記事の出典は、参考文献に挙げた「近世数学史談」です。


たとえば、 1/33 という数を循環小数で表すことを考えてみましょう。

もちろんこの例では簡単なのでそのまま計算していいのですが、

 33 = 3 \times 11

という関係を利用してみましょう。

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(自由研究)1/p^k型循環小数のフルサイクル性について

今日は

 \displaystyle \frac{1}{49}, \; \frac{1}{343}, \; \ldots

のような 「素数のべき乗分の1」の形の循環小数 について考えたいと思います。


実際、上記の小数を計算してみると

 \displaystyle \frac{1}{49} = 0.\overline{020408163265306122448979591836734693877551}
 \displaystyle \frac{1}{343} = 0.\overline{0029154518950437317784256559766763848396\ldots793}

となり、 1/4942桁 1/343294桁 と、たいへん長い循環節を持つことがわかります。これは後で見るように周囲の循環小数と比べてもかなり長いものとなっています。


この現象の裏には一体どのようなメカニズムが隠されているのでしょうか。

理屈を紐解いてみると、そこには  1/7 の循環節が ダイヤル数 になることが関係していることに気づきました。

とても面白い(きっと他では知られていない)定理を証明することができましたので、よろしければご覧になってください!

注:今回の記事はtsujimotter自身による独自研究をまとめたものです。内容の信ぴょう性についてはご自身でお確かめください。

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「隣り合う立方数の差」はどのような素数で割り切れるか?

今日は久しぶりに数学の話題を。

もりしーさん( @9973_prm )の以下のツイートの話が面白かったので、今日はこの問題について考えてみたいと思います。

なお、もりしーさんは次のようにもツイートしています:


つまり、もりしーさんが考えていたのは 「隣り合う立方数(3乗数のこと)の差は素数になるだろうか?」 という問題ですね。

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