tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

カレンダーの上の素数 〜素数には毎年出会えるか?〜

日曜数学 Advent Calendar 2021 の最終日の記事です。

今日は日曜数学 Advent Calendar 2021 の 最終日 の記事です。

そんなわけで、12月1日から始まった日曜数学アドベントカレンダーも、今日で終わりです!

おかげさまで、なんと25日間すべての記事が埋まりました! 投稿してくださったみなさま本当にありがとうございます!!

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色々なタイプの記事が揃いましたが、今年はMathlogさんからの投稿が7件もありました!勢いを感じますね!


まだ読んでいない方もおられると思いますが、楽しい記事が集まっていますので、ぜひじっくり読んでいただければと思います。
adventar.org

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電子計算機を使わないで発見された最大の素数 (2^148+1)/17(Ferrierの素数)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の17日目の記事です。


今日は

 \displaystyle N = \frac{2^{148}+1}{17} = 20988936657440586486151264256610222593863921 \tag{1}

という数について考えたいと思います。

この数、桁数が 44桁 もある巨大な数なのですが、なんと 素数 であることが分かっています。

1951年に素数であることが証明されたのですが、面白いことに

電子計算機を使わないで発見された最大の素数

という二つ名がつけられています。そう聞くとなかなか興味深く思えてきますよね! 一体どのようにして証明されたのでしょうか!?

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今日は、この数が素数であることを判定する、Ferrier(以降、フェリアーと呼ぶことにします *1)による方法を紹介したいと思います。

「素数である」という事実は後で紹介するWikipediaにも書いています。しかいながら、素数であることを証明する方法は、インターネット上を探してもなかなか見つかりません。今回、色々頑張って参考になる本を見つけたので、その内容をベースに紹介したいと思います。



なお、フェリアーの方法にこだわらないのであれば、ミラーラビン法を使えばコンピュータを使って一瞬で素数判定できます。

たとえば、以下のサイトで "20988936657440586486151264256610222593863921" を判定してみてください。
tsujimotter.info

実際、このような結果が出て、素数であることがわかるでしょう。

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なお、ミラーラビン法は厳密に言えば「確率的素数判定法」であり、上記の判定も(非常に低確率ですが)誤りである可能性があります。一方で、ミラーラビン法の前身である「ミラー法」であれば(一般化リーマン予想の仮定の下で)確定的に判定できます。このぐらいの桁数であれば、数秒もあれば判定できます。(実際にやってみました。)


ところで、ミラーラビン法の元となったミラー法は1976年に提案されていますので、フェリアーの1951年当時には存在しなかったことになります。

さらにいえば、コンピュータだったからこそ一瞬だったわけで、ミラーラビン法を手計算や機械式計算で行うのは至難の技かと思います。あまりおすすめはしませんが、興味がある方はやってみてください。

*1:Ferrierのカタカナ表記については、定番のものはなさそうに思えます。今回はHardy and wrightの本の表記を参考にしました:

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フィボナッチ数の逆数和がテータ関数を使って表せるという話

今日のテーマは フィボナッチ数 です。

またかと思われるかもしれませんが、最近たしかにフィボナッチ数の話が多いですね。


今日の切り口は、フィボナッチ数の逆数和 です。特に、奇数番目のフィボナッチ数の逆数和

 \newcommand{\HLNO}{\unicode[\sans-serif,STIXGeneral]{x306E}} \displaystyle \begin{align} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{F_{2n+1}} &= \frac{1}{F_{1}} + \frac{1}{F_{3}} + \frac{1}{F_{5}} + \frac{1}{F_{7}} + \cdots \\
&= \frac{1}{1} + \frac{1}{2} + \frac{1}{5} + \frac{1}{13} + \cdots \end{align} \tag{1}

について考えたいと思います。


 (1) の和を100項ぐらい数値計算させてみると、だいたい次のような数値となります:

 \displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{F_{2n+1}} \fallingdotseq 1.8245151574 \tag{2}


今日はこの和を、テータ関数 を使って表すことができるというお話を紹介したいと思います。

単に関数の式変形ができる、という話にとどまらず、その導出には ヤコビの2平方和の定理 が出てくるなど、整数論とも繋がりがあって大変おもしろいです。

よろしければ最後までお付き合いください。

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小数展開にフィボナッチ数列 etc. が出てくる分数(後編)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の2日目の記事です。


昨日の記事の 後編 として、小数展開に色々な数列が登場するような分数を生み出していきたいと思います!

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さてここで問題です!

以下の4つの分数は、それぞれどんな数列が出てくる分数でしょうか?

  1.  \displaystyle \frac{10000}{9799}
  2.  \displaystyle \frac{1010000}{999899}
  3.  \displaystyle \frac{2999900}{999899}
  4.  \displaystyle  \frac{10100}{970299}

(答えは記事の中で紹介します。)


前編の記事をまだ読んでいない方は、前編の記事をぜひご覧になってください。
tsujimotter.hatenablog.com


前回に続いて、分数の小数展開には以下のページをご活用ください!
tsujimotter.info

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小数展開にフィボナッチ数列 etc. が出てくる分数(前編)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の1日目の記事です。


アドベントカレンダーの季節がやってまいりました。今年も日曜数学アドベントカレンダーを立てまして、この記事はその1日目の記事となっています。
adventar.org

日曜数学アドベントカレンダーは、今年で 7年目 になります。なかなか続いていますね。

まだまだ空きはありますので、よろしければご参加お待ちしています。みなさまの記事を楽しみにしています!


トップバッターのこの記事では

 \displaystyle \frac{100}{9899} \tag{1}

という分数について考えてみましょう。

実際に計算して、小数展開を求めてみるとこうなります:

 \displaystyle \require{color} \frac{100}{9899} = {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0.01010203050813213455}90463\ldots \tag{2}

小数部分を2桁ずつ区切ってみると

 \displaystyle {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0.\;01\;01\;02\;03\;05\;08\;13\;21\;34\;55}\;90\;46\;3\ldots

となりますが、ここから

 \displaystyle {\color[rgb]{1.000000,0.000000,0.200000}0, \; 1, \;1, \;2, \;3, \;5, \;8, \;13, \;21, \;34, \;55}

という数列が得られますね。

この数列、なんと フィボナッチ数列 になっているのです! 面白いですよね!

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いったいどういう仕組みでフィボナッチ数列が出てくるのでしょうか。今日はその理屈を解説したいと思います。

フィボナッチ数列以外にも、同様の仕組みで数列の値が小数展開に出てくる分数を作ることができます。これについても紹介したいと思います。(後編の記事で紹介します。)

それでは、最後までぜひご覧ください!


なお、今回の記事では、分数の小数展開を計算することが必要になります。電卓で計算する際は、桁数に限界があり不便です。

そこで以下のページで、小数展開を任意の計算精度で出せるようにしてみました! 自分で計算してみると楽しいので、よろしければご活用ください。
tsujimotter.info

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循環小数とアルティン予想

これまでtsujimotterのノートブックでは、循環小数についていろいろな話題を紹介してきました。今日はとっておきのトピックとしてアルティン予想 という 未解決問題 について紹介したいと思います。

これまでの記事はこちらから見ることができます:
tsujimotter.hatenablog.com

このブログでは、これまでずっと 「素数  p の逆数  1/p の循環節の長さ」 について興味を持ってきました。


まずは、 p \neq 2, 5 なる素数  p について、 1/p の循環小数を計算してみましょう。例として  30 以下のものを計算してみます:

 \; 1/3 = 0.\overline{3} (長さ: 1)
 \; 1/7 = 0.\overline{142857}  (長さ: 6
 1/11 = 0.\overline{09} (長さ: 2)
 1/13 = 0.\overline{076923} (長さ: 6)
 1/17 = 0.\overline{0588235294117647} (長さ: 16
 1/19 = 0.\overline{052631578947368421} (長さ: 18
 1/23 = 0.\overline{0434782608695652173913} (長さ: 22
 1/29 = 0.\overline{0344827586206896551724137931} (長さ: 28

太字で書いたのは、循環節の長さがちょうど  p-1 になっているものです。


実は、あとで述べるように、 1/p の循環節の長さの限界は  p-1 になります。

そこで、長さがちょうど  p-1 となる素数はいったいどの程度あるのか?という問題が気になってきます。

この先を知りたい方は、1000までであれば以下のページに載っています:
tsujimotter.info


今回の主役であるアルティンは、このような長い循環節を持つ素数は、無限に多く存在し、その割合も具体的に計算できると予想しました。

これが成り立つとすれば大変興味深いですが、実際長い循環節を持つ素数については分かっていないことが多く、このアルティン予想は難問の一つとされています。


今日の記事では、まずアルティン予想の正確な主張を述べたいと思います。その上で、アルティン予想がいったいどういう理屈で予想できるのか、ヒューリスティックな議論を紹介したいと思います。この議論は代数的整数論・解析的整数論を使った大変面白い議論となっています。

最終的には、「あの有名な未解決問題」も登場します。最後までぜひご覧になってください!

注:なお、今回の記事はtsujimotterの最前線の知識を紹介するものとなっています。理解していない部分も多く、乱暴な議論もあるかもしれません。このブログの趣旨は「楽しく数学を勉強している様子を紹介する」というものになっていますので、温かい目で見ていただければと思います。

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ガウス流・循環小数計算法

循環小数熱が再燃してきまして、いろいろ調べている中で面白い話を見つけました。

かの有名な天才数学者ガウスは、こんなやり方で循環小数を計算していたそうです。今回の記事の出典は、参考文献に挙げた「近世数学史談」です。


たとえば、 1/33 という数を循環小数で表すことを考えてみましょう。

もちろんこの例では簡単なのでそのまま計算していいのですが、

 33 = 3 \times 11

という関係を利用してみましょう。

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