tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

数学

(線形代数・復習)基底の行き先を与えると対応する線形写像が一意に存在する

最近、「リーマン面」の勉強が「微分形式」の章に差し掛かりました。接ベクトル空間という線形空間や、その双対空間が出てきてまさに線形代数になっています。そんなわけで線形代数の復習として、以下の事実を示したいと思います。斎藤毅先生の「線形代数の…

UFD限定「オイラーの素数生成多項式」の証明

今日は「オイラーの素数生成多項式」についての話です。この多項式に を代入した数はなんと すべて素数 になることが知られています。(素数)(素数)(素数)(素数) を入れると となって合成数になってしまいます。しかしながら、それまでの実に 個もの…

mod mのべき乗余が何通りの値を取るかという話

1つ前の記事に関連して 「 がどんな値をとるのか」 という問題が気になりました。 tsujimotter.hatenablog.com上の記事では のとき のとき となる、つまり の全ての値を取ることを示しました。鯵坂もっちょさんの可視化の方法を用いるならば、右肩上がりの…

「互いに素でない場合」のオイラーの定理

を正の整数としたとき、 を と互いに素な任意の整数としてが成り立つことが知られています。 はオイラーのトーシェント関数といって、この合同式はオイラーの定理として知られています。 これは素数を使った有名な暗号の一つ「RSA暗号」の理論的背景に使われ…

素数生成多項式と虚2次体の類数 (2)

昨日は、オイラーの素数生成多項式に関して「私の発見」を紹介させていただきました。 tsujimotter.hatenablog.com執筆時は、この研究の先行研究にあたるものを発見できず、「先行研究はあるかわからないが独自にこんな発見をした」というスタンスを取ってい…

(独自研究)素数生成多項式と虚2次体の類数

今回の記事は、素数がたくさん登場する多項式に関連する話題です。今回は私がこの式について考えているうちに、思いついて実施してみた独自研究について紹介したいと思います。どこかの本に書いてある話ではないので、誤りを含んでいる可能性も大いにあるか…

「数体の素元星座定理」に関するプレプリントについて

2021年 に入ってすぐに、とんでもないニュースが飛び込んできました。もちろん、数学のニュースです。東北大学の研究チームによる論文のプレプリントがarXivで公開されました。タイトルは "Constellations in prime elements of number fields" で、こちらの…

2021は合同数

ちょっと早いですが明けましておめでとうございます!2021年も良い一年になりますように!ところで、毎年私は 今年の西暦にまつわる数の性質 について調べているのですが、2021 についても面白いものを見つけたので紹介します。それは 「2021は合同数」 であ…

「ラムゼーの定理」に関する数学ゴールデンの問題

日曜数学Advent Calendar 2020最終日の記事です。投稿してくださったみなさま、ありがとうございます!!! adventar.org

類体論の基本不等式の証明

Zeta Advent Calendar 2020 の14日目の記事です。 先日、類体論の入門記事を公開しましたが、多くの方に読んでいただいて嬉しいです。 tsujimotter.hatenablog.com類体論の記事を書いたことによって頭の中が整理されて、類体論の本が読めるようになってきま…

局所ゼータ関数(ゼータ積分)

Zeta Advent Calendar 2020 の2日目の記事です。 今日の記事は 「ゼータ積分」 というものを扱ってみたいと思います。きっかけは、私が主催したマスパーティというイベントです。その中で行われたζWalkerさんの発表の中で「ゼータ積分」というワードが現れま…

類体論入門

日曜数学 Advent Calendar 2020 の1日目の記事です。 「類体論」という名前を聞いたことがあるでしょうか?類体論は、高木貞治という日本の数学者が提唱した理論です。実は今年2020年は類体論が提唱されてからちょうど 100周年 だそうです。『類体論における…

デカルトの見つけた奇数の完全数(?)

今日は11/28で日付は 28。28は皆さんご存知の 完全数 ですね。というわけで、今日は いい完全数の日 です!せっかくなので、完全数にまつわる面白い話をご紹介したいと思います!

3は合同数ではない

前回は、楕円曲線の有理点のランクを計算する方法を勉強しました。例をいくつか計算しているうちに、これはさまざまな合同数問題に応用できそうだということに気づいて、計算してみようと思ったのが今回の記事になります。そんなわけで、今回は 3が合同数で…

楕円曲線の有理点のランクを計算しよう!(2-descentの具体的計算)

楕円曲線には、有理点がの4点しか存在しないことが知られています。特に、無限位数の点は存在しません。 今日考えたいのは 「無限位数の点が存在しないことを本当に証明できるのか?」 という問題です。実際、それは可能であるというのが、今日伝えたいこと…

テレビ番組「金曜日のソロたちへ」に出演しました! #金ソロ

こんにちは、日曜数学者のtsujmotterこと辻順平です。10/16(金)に放送された NHK総合「金曜日のソロたちへ」 というテレビ番組に出演させていただきました。見てくださった皆様ありがとうございます! www.nhk.jpNHKオンデマンドで10/30(金)まで見られる…

有限体上の楕円曲線とヤコブスタール和

前回の記事から引き続き、代数曲線の での解の個数 について思いを馳せたいと思います。前回の記事はこちら: tsujimotter.hatenablog.comなお今回の内容は、前回の記事の内容をまったく読んでいなくても理解できる内容となっています。 今回は、 を素数とし…

「tsujimotterの29予想」の初等的証明

今日のテーマはこちらです:定理1(tsujimotterの29予想) を任意の素数とする。このとき、次が成り立つ: が なる整数解 を持たない 合同式に解がないのは なぜか と のときだけである という不思議な現象についての予想です。 この予想に関する経緯を少し…

「1/6公式」とベータ関数・超幾何関数

前回のtsujimotterのノートブックでは ベータ関数 が登場しましたが、ベータ関数にはもう少し親しみやすい導入があります。それが高校数学でいわゆる 1/6公式 と呼ばれる積分の公式です。このブログでも何度か登場した 超幾何関数 も関係します!お楽しみに…

ベータ関数とフェルマー曲線の周期

前回書いた積分の記事が大変話題になりまして嬉しいです。 tsujimotter.hatenablog.com 今日も 積分 についての話を書いてみたいと思います。定積分によって定義される特殊関数、ベータ関数 について紹介しましょう。有名な特殊関数なので、ベータ関数自体は…

無理関数の不定積分と双曲線、微分形式

今日考えたいのは、 や というタイプの積分です。いわゆる無理関数の積分と呼ばれるもので、大学受験でも難関大学の問題として登場するみたいですね。 今回の記事のきっかけとなったのは、清さんによる以下のツイートです:【清史弘からの提案 7 】 教育系Yo…

ミレニアム問題「BSD予想」の主張を1から理解したい!(ざっくり編)

ミレニアム問題 という言葉を聞いたことがあるでしょうか?アメリカのクレイ研究所という数学の研究所によって2000年に発表された、数学における7つの未解決問題のことです。21世紀に解かれるべき重要な問題がリストアップされており、それぞれに 100万ドル…

任意の素数はレピュニットの素因数に現れる(2, 5を除く)あとダイヤル数

Twitterって本当に面白いなと思うのですが、人々のいろんな発見が流れてくるのです。私が最近面白いと思ったのは次のツイートです。「2、5を除く全ての素数は11、111、1111、…の素因数として“周期的に”現れる」ってことに気が付いて、証明できた気がするんだ…

リーマンの再配列定理を使って級数を「お望みの実数」に収束させよう

今日のテーマは 「リーマンの再配列定理」 です。「条件収束する実数列の級数は、再配列によって任意の実数に収束させることができる」という主張です。何を言っているかわからないという方にも、これから詳しくは説明していきますのでご安心ください。 無限…

リーマンの素数公式の導出の概略(Enjoy Mathematics! 寄稿記事の公開)

ゼータ関数を通して素数のことが理解できてしまうという魔法の公式、これが今日のテーマです。この公式はtsujimotterが素数に興味を持つきっかけとなったもので、これまでも様々な場所でこの公式の魅力について語ってきました。たとえば、こちらの講演動画な…

『「にじたい」へのいざない』のYouTube動画を公開しました(インタビュー記事付き)

先ほど、YouTubeでtsujimotterのプレゼン動画が公開されました! ぜひみなさまにご覧いただきたくて、ブログでも紹介したいと思います。 記事の後半では、私のこだわりポイントも紹介したいと思いますので、ぜひ最後まで読んでください。ちょっと趣向を凝ら…

虚数乗法の具体例をもっと計算してみよう(類数2の場合)

本記事は「具体例を通して学ぶ虚数乗法論」シリーズ tsujimotter.hatenablog.comの続きの記事となっています。よろしければ、上の過去の記事も一緒にご覧になってください。 さて、前回の記事では、 が 類数1 の虚2次体であるとき、 に虚数乗法を持つ楕円曲…

「√-2 × √-8 = √16?」の問題について

Twitterで数学に関するこんな話が話題になっていました。√-2×√-8計算する時に√16にしたらいけんのなんで?— 愛華 (@sakubunkake) 2020年7月9日 もう少しツイートの内容を補足してみましょう。 というのは、虚数単位 を用いてとして定義されます。よって を用…

虚数乗法の具体例をもっと計算してみよう(類数1の場合)

今週は、虚数乗法 をテーマとする記事を2本公開しました! tsujimotter.hatenablog.com tsujimotter.hatenablog.comおかげさまでたくさんの方々に見ていただき、たくさん反響もありました。 虚数乗法は、tsujimotterがこれまで時間をかけて勉強してきたテー…

具体例を通して学ぶ虚数乗法論(後編)

tsujimotter.hatenablog.com昨日に引き続き 「具体例を通して学ぶ虚数乗法論」 のお話 後編 です。