tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

数学

具体例を通して学ぶ虚数乗法論(前編)

こんにちは! 日曜数学者のtsujimotterです!早いもので、日曜数学者と名乗り始めてから5年半が経ちました。その間、色々な数学を勉強して、成長もしてきたと思います。昔憧れた、名前しかしらなかった高度な理論も、だんだんと理解できるようになってきまし…

たけちゃん先生の問題の裏に潜む「未解決問題」

先日、ロマンティック数学ナイトオンライン(以下、ロマ数)というイベントに出演しました。 wakara.co.jp そのイベントの報告はまたいずれしたいと思いますが、今日はそのイベントで竹内英人先生(以下、たけちゃん先生)がされた発表についてのお話です。…

分数の足し算で「約分」が発生する条件(3)

最近、頭の中が「分数の足し算」でいっぱいなtsujimotterです。こんにちは。前回・前々回の記事から引き続き、分数の足し算の話題です。過去記事はこちらをご覧ください: tsujimotter.hatenablog.com tsujimotter.hatenablog.com さて、これまで分数の足し…

分数の足し算で「約分」が発生する条件(2)

早速ですが、昨日の記事の続きです。 tsujimotter.hatenablog.com 前回の記事では、分数の足し算の計算で約分が発生する条件について考えました。特に、結果の分母・分子が素数 で約分されるならば、 が で割り切れる回数 はであることを示しました。 今回は…

分数の足し算で「約分」が発生する条件

こんにちは! 日曜数学者のtsujimotterです! 今日は 分数の足し算 について考えたいと思います。きっかけは学生のプログラミング課題でした。tsujimotterは大学でPythonとC言語を教えているのですが、ある日の課題で「分数の足し算を計算する関数を作れ」と…

13, 613, 20200613は合同数

こんにちは! 今日の日付は 2020/06/13 ですが、20200613 は素数 ですね!さらにいうと、20200613は「4で割って1あまる素数」でもあるわけですね。いやーじつにめでたい!上記の事実は、大人のための数学教室を経営している「和から株式会社さん」のTwitter…

訂正記事:前回の証明は第Ⅳ証明ではなかった

ガウス和について勉強していくうちに、前回紹介した「平方剰余の相互法則の証明」の記事の内容に関して、誤解があることを発見しました。今回の記事は、その誤解についての 訂正記事 です。私が誤解に気づいたきっかけは、以下のPDF記事でした。 アンドレ・…

平方剰余の相互法則の証明(ガウス和を用いた方法)

3日連続ガウス和シリーズ、最終日の今回のテーマは 「平方剰余の相互法則」 です。平方剰余の相互法則は、整数論を勉強する人の多くが憧れる定理の一つで、いよいよここまできたかという感じがします。 なお、ガウス和シリーズの記事は、以下のタグで見るこ…

ABC予想のよくある間違い

望月新一先生の「宇宙際タイヒミュラー理論」に関する論文が、論文誌に採録されることが決まったというニュースが飛び込んできました。 mainichi.jp論文の原稿は8年も前から発表されており、その内容の壮大さから、数学好きの間で度々話題になっていました…

ガウス和の性質についての証明

前回の記事で、ガウス和 についての面白い定理を紹介しました。せっかくなので、ガウス和シリーズ と題して、3日連続でガウス和にまつわるお話を紹介したいと思います。このシリーズの全記事は「ガウス和」のタグで閲覧できるようにします。 tsujimotter.ha…

√pの作り方(ガウス和)

一昨日にこんなツイートをしてみたら、思った以上に多くの方に面白がってもらえました。せっかくなので、この記事を通して「種明かし(?)」をしたいと思います。√pの作り方 pic.twitter.com/qy2gzay6EW— tsujimotter (@tsujimotter) 2020年3月31日 今回は…

四元数環と2-コサイクル

今日は 四元数環 について考えてみましょう。tsujimotterのノートブックでは初登場ですね。複素数体 は に虚数単位 を加えた体のことで、と書けます。 上の2次拡大体となっています。 に「ある演算規則」をもった という新しい数を加えてとしたものが四元数…

射影空間のK-有理点とヒルベルトの定理90

楕円曲線について本格的に勉強したいと思い、シルヴァーマンによる楕円曲線の本(タイトルは "The Arithmetic of Elliptic Curves"(通称:AEC))を読み始めました。The Arithmetic of Elliptic Curves (Graduate Texts in Mathematics)作者:Silverman, Jos…

群コホモロジーの定義と低次のコホモロジー

今回のテーマは 「群コホモロジー」 です。整数論や諸々を勉強していると、群コホモロジーという言葉をよく耳にします。調べてみると、とても難しそうな定義が並んでいてよくわからない。少し前までの私はそんな感じでした。一方で、難しい定義であっても、…

「ユークリッド整域」ならば「単項イデアル整域」の証明

最近、「素数と2次体の整数論」という本の読書会をはじめました。素数と2次体の整数論 (数学のかんどころ 15)作者:青木 昇発売日: 2012/12/21メディア: 単行本主に数学デーというイベントの中で毎週1、2回程度開催して、少人数で濃い勉強をしています。「…

円周率の「一風変わった」近似式

今日は 3/14 、すなわち 「円周率の日」 ということで、円周率の一風変わった近似式を紹介したいと思います。今回紹介したい式はこちらです:ここで、 は自然対数です。 「なんじゃこりゃ」というような式ですが、実際に計算してみるとその精度の高さに驚き…

任意の自然数は高々53個の4乗数の和で表せる

昨日紹介した「モジュラー形式の本」にまたまた面白い話が載っていたので紹介したいと思います。1足す1から現代数論へ: モジュラー形式への誘い作者:アッシュ,アブナー,グロス,ロバート発売日: 2019/07/27メディア: 単行本 ウェアリングの問題 このブログで…

#素数大富豪札幌杯 で出された合成数出しカマトトについて

先日、素数大富豪の大会が札幌で開催されました。その名も「札幌杯」。一時期は開催が危ぶまれましたが、なんとか無事開催されることになりました。少し長い動画ですが、YouTubeで大会の様子を見ることができます。 www.youtube.com札幌杯では 「数学的に面…

ケンタッキーのサイドメニュー問題と重複組合せ

去年の年末、ケンタッキーに行ったときのことです。オリジナルチキン4ピースパックを注文することにしました。 www.kfc.co.jpこのパックでは、以下の4種のサイドメニューのうち1個を選ぶことができます。 ・ポテトS ・クリスピー ・ビスケット ・コールスロ…

フェルマー数を使った素数の無限性の証明

今日は数論の話をしましょう。今回の主役は フェルマー数 です。フェルマー数とは、0以上の整数 に対しての形をした数のことです。 が自然に現れる問題としては 正多角形の作図 がよく知られています。 を素数として、正 角形が作図可能である必要十分条件が…

リーマン面の定義

最近、寺杣先生の「リーマン面の理論」という本を勉強しています。リーマン面の理論作者:寺杣友秀発売日: 2019/11/29メディア: 単行本(ソフトカバー) 「リーマン面」についての勉強を始めたのは、「幾何が専門の人の話についていけるようになりたい」とい…

#2020になる数式 (マニアック編):判別式-2020の2次形式

2020年最初に作ったアプリが、おかげさまでたくさんの方にみてもらえているようです。「2020」という数は、・2つの平方数の和・3つの平方数の和・連続する4つの素数の平方数の和・10連続偶数の平方和でそれぞれ表せる数らしいので、その性質を可視化するペー…

#2020になる数式 について考えてみた

明けましておめでとうございます!いよいよ 2020年 ですね。2020年といえば、だいぶ前から話題に上がっていたオリンピックイヤーがいよいよやってきたという感じですが、今年はどんな一年になるのでしょうか。良い年にしていきたいですね。2020年になったと…

指数層系列(3): 層係数コホモロジー

今回は「指数層系列」シリーズの最終回の記事です。これまでシリーズを通してという層の短完全列について議論してきました。指数層系列シリーズの記事は、こちらのタグから読むことができます: tsujimotter.hatenablog.com 前回の記事の最後では、指数層系…

指数層系列(2):層の短完全列

前回、指数関数の3つの素朴な性質からなる2つの短完全列が得られることを紹介しました。指数層系列シリーズの記事は、こちらのタグから読むことができます: tsujimotter.hatenablog.com 本シリーズタイトルの指数層系列とは、上の短完全列を層の間の短完…

素数大富豪のレーティングに関する提案

素数大富豪 Advent Calendar 2018 の24日目の記事です。 本記事は、素数大富豪 Advent Calender 2018 の24日目の記事として、素数大富豪プレーヤーのレーティングを算出する手法について、筆者による提案手法を紹介したいと思います。また、その手法を用いて…

指数層系列(1):指数関数の性質から得られる短完全列

今日の記事は3回に渡るシリーズ記事の第1回です。シリーズを通して、複素数の変数を持つ指数関数に関連する「指数層系列」と呼ばれる概念について紹介したいと思います。指数層系列シリーズの記事は、こちらのタグから読むことができます: tsujimotter.ha…

ガロア表現から作るいろいろなゼータ関数

ゼータ Advent Calendar 2019 の5日目の記事です。 世の中には、色々なゼータ関数があります。・リーマンゼータ関数 ・ディリクレゼータ関数 ・ハッセ・ヴェイユゼータ関数 ・アルティンゼータ関数 ・合同ゼータ関数 ・セルバーグゼータ関数tsujimotterのノ…

ガロア表現の基本的なところ(準備編)

明日、ガロア表現を使った記事を書きたいと思うのですが、その内容を理解するための準備編として、今日はガロア表現の基本的なところをまとめたいと思います。注意: 「基本的なところ」と銘打っておきながら申し訳ないのですが、今回の内容は非常に難しい内…

iのi乗はそこに至る経路で決まる

みなさん、 がどんな値になるか考えたことはありますか?「複素数のべき乗ってなんだよ」と思う方もいるかもしれません。素朴に「 を 回かける」なんて考えたら、意味がわからないですよね。この問題について一度考えたことがある方の中には「 だよ」と答え…