tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

デュードニー数:512

今日はこんな問題を考えてみましょう:

問題(ルートの展開)
ある3乗数を考えます。その数の各桁の数を足し算したら、もとの数の3乗根に一致しました。
もとの数は何でしょうか?


一例として、 512 を考えましょう。 512 = 8^3 なので、これは3乗数です。

 512 の各桁を足し算すると

 5 + 1 + 2 = 8

となり、 512 の3乗根である  8 に一致しました。

というわけで、 8 はこの問題の答えの一つです。


 1 もこの問題の答えの一つです。 1 = 1^3 なので、これは3乗数ですが、その各桁を足し算すると、もちろん  1 に一致します。


さて、ほかにも例はあるでしょうか?

(自分で考えたい人は、ぜひどうぞ。答えは記事の後半で紹介します。)



今回紹介したいのは、デュードニー数 です。

デュードニー数とは、3乗数であって(10進法の)各桁の和を3乗すると元に戻るという性質持った数のことです。

上で紹介した  1 512 はもちろんデュードニー数ですね。


ちなみに、この記事は5/12に公開していますが、日付の数を並べた512はデュードニー数というわけですね。



なお、デュードニー数の名前ですが、ヘンリー・デュードニーというイギリスの有名なパズル作家に由来しています。デュードニーが、冒頭のような問題を書籍「536 Puzzles & Curious Problems」の「120. Root Extraction」という項目で紹介したのがきっかけで、この数が世に広まりました。


デュードニーはこんな感じのおじさんです

元の問題文は、以下のURLから見ることができます:
536 puzzles & curious problems : Dudeney, Henry Ernest, 1857-1930 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive


デュードニーといえば、有名なもので言うと「正三角形を4つに分割して正方形に戻す(以下の図参照)」という裁ち合わせパズルを発見したことでも知られていますね。


デュードニー数は既に多くの人に調べられていて、たとえばオンライン整数列大辞典(OEIS)でも次のような数列のリストがあります:
oeis.org


一般化b進デュードニー数と前回の記事の関係

上の話は、 3 乗数を考えて、その10進法での各桁を足していましたが、ここを  k 乗数と  b 進法に一般化することもできます。

一般化  b 進デュードニー数とは、 k 乗数であって( b 進法の)各桁の和を  k 乗すると元に戻るという性質持った数のことです。


数式で書くと、 k 乗数  n = m^k b 進法で  n = (a_{d-1} a_{d-2} \cdots a_0)_{b} で表せるとします。このとき、各桁の総和が

 a_{d-1} + a_{d-2} + \cdots + a_0 = m

と表せるとき、 n を一般化  b 進デュードニー数といいます。
(このとき、得られた  m k 乗すると  n に一致するので、元の文章と同じことを言っていますね。)


ちなみに、 n b 進法での各桁の総和を

 s_b(n) := a_{d-1} + a_{d-2} + \cdots + a_0

で定義すると、デュードニー数の条件は

 \sqrt[k]{n} = s_b(n)

で簡潔に表せます。



たとえば、簡単な例でいうと、 81 = 9^2 k = 2 における一般化10進デュードニー数です。

実際、 81 の各桁の総和をとると

 8 + 1 = 9

となり、 9 に一致しますね。



ところでここまでの話を聞いて、前回の「平方根計算の裏技(?)」の記事との関連性に気づいた方もいるかもしれません。

tsujimotter.hatenablog.com


以下のように整理してみましょう。

一般化10進デュードニー数:
 k 乗数  n = m^k について、 n の(10進法での)各桁の総和が  m に一致する

平方根計算の裏技(?)で考えていたもの:
 k 乗数  n = m^k について、 n の(10進法での)各桁の総和が  m + k に一致する


比較すると、最後が  m そのものに一致するか、 m + k に一致するかの違いで、ほとんど同じですね。

つまり、前回考えていたのは「一般化10進デュードニー数」の問題の亜種だったというわけです。


前回の問題は一見テキトーに思いついた一問題という感じでしたが、デュードニー数といういかにも由緒正しそうな(?)問題の亜種だったというのは、面白いことですね。


一般化デュードニー数の有限性

前回と同じ形の問題となっているので、ほとんど同じように定式化することができます。

 k 乗数  n = m^k b 進法で  d 桁の数であり  n = (a_{d-1} a_{d-2} \cdots a_0)_{b} で表せるとします。すると、総和記号を用いて

 \displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i b^i = m^k \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (1)

と表せます。

一般化デュードニー数のもう一つの条件「各桁の総和が  m に一致する」より

 \displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i = m \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (2)

となります。

したがって、連立方程式

 \begin{cases} \displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i b^i = m^k \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (1) \\
\displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i = m \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (2) \end{cases}

を満たす  n = m^k がデュードニー数となります。


ここで、前回の議論を思い出すと、不等式の議論を行うことで  b, k を固定したときのデュードニー数が有限個であることが示せます。

実際、式  (1) と、最上位の桁が  1 以上であることから、

 \displaystyle m^k = \sum_{i=0}^{d-1} a_i b^i \geq b^{d-1}

が成り立ちます。

また、式  (2) と、各桁が  a_i \leq b - 1 であることから

 \displaystyle m = \sum_{i=0}^{d-1} a_i \leq \sum_{i=0}^{d-1} (b - 1) = (b - 1)d

が成り立ちます。


したがって、2つの不等式を合わせて

 \displaystyle b^{d-1} \leq m^k \leq (b-1)d \;\;\;\;\;\;\;\; (3)

が言えます。


ここで、仮に

 \displaystyle b^{d-1} > (b-1)d \;\;\;\;\;\;\;\; (4)

が成り立ってしまうと、不等式  (3) を満たす  m^k は存在しないことになってしまいます。

しかしながら、不等式  (4) の左辺は  d についての指数関数であり、右辺は一次関数であることから、いつかは指数関数が追い抜きます。すなわち、固定した  b に対して十分大きな  d は式  (4) を常に満たします。


したがって、デュードニー数の条件を満たす  d は有限の範囲に収まることが示されました。よって、固定した  b, k に対して、デュードニー数は有限個であることがわかりました。


一般化10進デュードニー数のリスト

以上を踏まえて、一般化デュードニー数を計算してみたいと思います。

 b = 10 として、 k 2 から  10 の範囲で固定して、それぞれのデュードニー数の全リストを求めました。

不等式  (3) のおかげで、本当に全列挙できてしまうのが面白いですね。

k = 2 の場合:

  \begin{align*}
1 = 1^{2}, \;\; 81 = 9^{2}
\end{align*}

 k = 2 の場合、 1 81 だけが解となります。

k = 3 の場合(デュードニー数):

  \begin{align*}
1 = 1^{3}, \;\; 512 = 8^{3}, \;\; 4913 = 17^{3}, \;\; 5832 = 18^{3}, \;\; 17576 = 26^{3}, \;\; 19683 = 27^{3} \\
\end{align*}

 k = 3 のときは、以上6つがすべての解となります。

実際

  •  4 + 9 + 1 + 3 = 17
  •  5 + 8 + 3 + 2 = 18
  •  1 + 7 + 5 + 7 + 6 = 26
  •  1 + 9 + 6 + 8 + 3 = 27

が成り立つことを確認しましょう。

これにより、元々のデュードニーの問題の答えがすべて列挙できたことになりますね。

k = 4 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{4}, \\
&2401 = 7^{4}, \\
&234256 = 22^{4}, \\
&390625 = 25^{4}, \\
&614656 = 28^{4}, \\
&1679616 = 36^{4}, \\
\end{align*}

k = 5 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{5}, \\
&17210368 = 28^{5}, \\
&52521875 = 35^{5}, \\
&60466176 = 36^{5}, \\
&205962976 = 46^{5}, \\
\end{align*}

k = 6 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{6}, \\
&34012224 = 18^{6}, \\
&8303765625 = 45^{6}, \\
&24794911296 = 54^{6}, \\
&68719476736 = 64^{6}, \\
\end{align*}

k = 7 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{7}, \\
&612220032 = 18^{7}, \\
&10460353203 = 27^{7}, \\
&27512614111 = 31^{7}, \\
&52523350144 = 34^{7}, \\
&271818611107 = 43^{7}, \\
&1174711139837 = 53^{7}, \\
&2207984167552 = 58^{7}, \\
&6722988818432 = 68^{7}, \\
\end{align*}

k = 8 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{8}, \\
&20047612231936 = 46^{8}, \\
&72301961339136 = 54^{8}, \\
&248155780267521 = 63^{8}, \\
\end{align*}

k = 9 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{9}, \\
&3904305912313344 = 54^{9}, \\
&45848500718449031 = 71^{9}, \\
&150094635296999121 = 81^{9}, \\
\end{align*}

k = 10 の場合:

  \begin{align*}
&1 = 1^{10}, \\
&13744803133596058624 = 82^{10}, \\
&19687440434072265625 = 85^{10}, \\
&53861511409489970176 = 94^{10}, \\
&73742412689492826049 = 97^{10}, \\
&179084769654285362176 = 106^{10}, \\
&480682838924478847449 = 117^{10}, \\
\end{align*}


合同式を用いた分析(自由研究)

以上は計算機を用いた結果ですが、前回のときと同じように、合同式を用いて理論的に攻めることはできないでしょうか。

ちょっと自由研究的に考えてみたいと思います。


 b = 10 として、一般化10進デュードニー数の条件をまとめると、次の連立方程式となります:

 \begin{cases} \displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i 10^i = m^k \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (1') \\
\displaystyle \sum_{i=0}^{d-1} a_i = m \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; (2') \end{cases}


ここで、 (1') - (2') を計算すると

 \displaystyle 9\left(\sum_{i=0}^{d-1} \frac{10^i - 1}{9} \, a_i \right) = m^{k} - m \;\;\;\;\;\;\;\; (5)

が得られます。

 (5) の左辺が  9 の倍数であることから、右辺の \bmod{9} を考えることが、一つの突破口になりそうです。


すなわち

 m^k - m \equiv 0 \pmod{9}

を満たす条件を考えてみましょう。


今回も、(i)  m 3 で割り切れる場合と、(ii)  m 3 で割り切れない場合に分けて考えます。

(i)  m 3 で割り切れる場合:

 m^k k \geq 2 のとき  9 = 3^2 で割り切れるので、 m^k \equiv 0 \pmod{9} が成り立ちます。

したがって

 m \equiv 0 \pmod{9}

が得られます( m \equiv 3, 6 \pmod{9} は解にはならない)。

(ii)  m 3 で割り切れない場合:

これまた前回やったように、 m^k \pmod{9} を考える際には、オイラーの定理により  k\pmod{6} を考えれば十分です。

そこで、 m\pmod{9} k\pmod{6} のすべてに対して  m^k - m\pmod{9} を計算した表を考えてみましょう。


表の色がついた部分が  m^k - m \equiv 0 \pmod{9} であるような  (m\bmod{9}, \; k\bmod{6}) です。

 m \equiv 1 \pmod{9} のときと、 k \equiv 1 \pmod{6} のときは、常に  m^k - m \equiv 0 \pmod{9} であり、そのときは  n = m^k はデュードニー数となる可能性があります。

 m \not\equiv 1 \pmod{9} かつ  k \not\equiv 1 \pmod{6} のときを考えましょう。

このときは

 (m\bmod{9}, \; k\bmod{6}) \equiv (4, 4), \; (7, 4), \; (8, 3), \; (8, 5)

のときを除いて  m^k - m \not\equiv 0 \pmod{9} となります。すなわち、 n = m^k はデュードニー数にはなりません。


ちょっと分かりづらいですね・・・。

何か分かりやすい条件が得られたら楽しいと思ったのですが、なかなかうまくはいかないようです。