tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

マクドナルドの問題を解いてみた(ガンマ関数の基本的性質の紹介)

本記事は日曜数学 Advent Calendar 2025の9日目の記事です。
昨日はtsujimotterさんの「【告知】日曜数学会ミニin北海道を開催します(2月11日)」でした。日曜数学会ミニin北海道、とても楽しそうですね!


マクドナルドの公式Twitterで、こんな問題が出されていました。

最近のマクドナルドは時々高度な数学にまつわるツイートをしているようですが、担当者の中に数学好きな人がいるんでしょうかね。


そういえば、日曜数学アドベントカレンダーでも「マクドナルド多項式」の話題が出ていましたね。
(マクドナルド違い)


さて、今回の問題は

 \displaystyle \Gamma\left(\frac{5}{2}\right) \times \frac{4}{\sqrt{\pi}} \tag{1}

を計算せよという問題ですね。

 \Gamma\left(5/2\right) の正体が分からないと解けませんが、この  \Gammaガンマ関数 と呼ばれるものです。いわゆる特殊関数と呼ばれる関数の一つです。


この記事では、マクドナルドの問題にかこつけて、私の好きな関数の一つであるガンマ関数の基本的な性質を紹介する記事となっています。

ガンマ関数の定義からはじめて、実際にこの問題を解くための公式を準備したいと思います。



ガンマ関数ってなに?

ガンマ関数は、自然数  n についての階乗

 n! = n \times (n-1) \times  \cdots 3 \times 2 \times 1 \tag{2}

を自然数  n から複素数  z に拡張する試みの中で生まれた関数です。

たとえば

 \left(\dfrac{1}{2}\right)!

 \left(1 + 3i\right)!

のような数は、本来の階乗としては定義されませんが、これに何らかの意味を与えるような関数を考えたいというわけです。



数学者オイラーが、第二種オイラー積分として研究していたものがガンマ関数のはじまりだとされています。

つまり、階乗の定義域を自然数からもっと大きな範囲に拡張するために、積分による表示を用いるというわけです。


実際、ガンマ関数  \Gamma(z) z は複素数の変数)は次の式で定義されます:

 \displaystyle \Gamma(z) = \int_{0}^{\infty} t^{z-1} e^{-t} dt \tag{3}

ただし、この積分が定義されるのは、複素数  z の実部が正の範囲です。


以下の画像は、ガンマ関数  \Gamma(z) の絶対値を複素数平面上で描いた3Dグラフです(Wikipediaより引用)。


実はこの関数は、 z が自然数のときに限定すると階乗になっています。より正確にいうと

 \Gamma(n) = (n - 1)! \tag{4}

が成り立ちます。
(次の節で説明します。)

1だけズレているのが若干気持ち悪いですが、これにはさまざまな事情があります。

とにかく階乗を拡張している関数なのだということが、式  (4) から読み取れますね。


ガンマ関数の階乗っぽさを表す等式

実は、ガンマ関数には次の等式が成り立つのですが、これがまた階乗っぽさを醸し出しています。

 \displaystyle \Gamma(z + 1) = z\, \Gamma(z) \tag{5}


この式は、部分積分を用いることで次のように証明されます:

 \begin{align*} \Gamma(z + 1) &= \int_{0}^{\infty} t^{z} e^{-t} dt  \\
&= \left[ -t^z e^{-t} \right]_{0}^{\infty} + z \int_{0}^{\infty} t^{z-1} e^{-t} \\
&= z\,\Gamma(z) \end{align*}

積分表示をしたことで、積分に関する公式が使えるというのは面白いですね。


また、 \Gamma(1) = 1 も成り立ちます。実際、直接積分を計算すると

 \begin{align*} \Gamma(1) &= \int_{0}^{\infty} e^{-t} dt  \\
&= \left[ -e^{-t} \right]_{0}^{\infty}  \\
&= 0 - (-1) = 1
\end{align*}
となります。

したがって、 \Gamma(1) = 1 \Gamma(n+1) = n\, \Gamma(n) から

 \Gamma(n) = (n - 1)! \tag{4再掲}

が得られるというわけですね。


さて、式  (5) が得られたことにより、元々のマクドナルドの問題に出てきた  \Gamma(5/2)

 \displaystyle \Gamma\left(\frac{5}{2}\right)  = \frac{3}{2} \times \frac{1}{2} \times \Gamma\left(\frac{1}{2}\right) \tag{6}

と計算されます。

したがって、 \Gamma(1/2) の値が分かれば問題が解決しますね。


 \Gamma(1/2) の計算

最後に、 \Gamma(1/2) の計算をしたいと思います。

これもやはり積分による定義式を用いればよいわけですが、途中で置換積分を用いるのがポイントです。

 \displaystyle \begin{align*} \Gamma\left(\frac{1}{2}\right) &= \int_{0}^{\infty} t^{\frac{1}{2} - 1} e^{-t} dt  \\
&= \int_{0}^{\infty} \frac{1}{\sqrt{t}} e^{-t} dt  \end{align*}

ここで、 t = x^2 と置くと、 \dfrac{dt}{dx} = 2x となり、 t\colon 0 \to \infty のとき  x\colon 0 \to \infty なので、置換積分より

 \displaystyle \begin{align*} &= \int_{0}^{\infty} \frac{1}{x} e^{-x^2} 2x dx \\
&= 2\int_{0}^{\infty} e^{-x^2} dx \\
&= \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx \end{align*}

最後の式変形は、被積分関数  e^{-x^2} が偶関数であることを用いました。


最後に得られた積分  I = \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx は、いわゆる「ガウス積分」と呼ばれる積分です。これについては、あえて求めたい積分値の2乗を考えることで、重積分に帰着して計算することができます。

 \displaystyle \begin{align*} I^2 &= \left(\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} dx\right) \left(\int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2} dy\right) \\
&= \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty}  e^{-x^2} e^{-y^2} dxdy \\
&= \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty}  e^{- (x^2 + y^2)} dxdy
\end{align*}

ここで、 x = r \cos \theta, \; y = r\sin \theta と極座標によって置換します。すると、ヤコビアンは

 \displaystyle \begin{vmatrix} \dfrac{\partial x}{\partial r} & \dfrac{\partial x}{\partial \theta} \\ \dfrac{\partial y}{\partial r} & \dfrac{\partial y}{\partial \theta} \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} \cos\theta & -r \sin\theta \\ \sin\theta & r \cos\theta \end{vmatrix} = r(\cos^2\theta + \sin^2\theta) = r

となり、 dx dy = r dr d\theta が得られます。以上から

 \displaystyle \begin{align*} I^2 &= \int_{0}^{2\pi}  \int_{0}^{\infty}  r e^{-r^2(\cos^2 \theta + \sin^2 \theta)} dr d\theta \\
&= \int_{0}^{2\pi}  \int_{0}^{\infty}  r e^{-r^2} dr d\theta \\
&= \int_{0}^{\infty}  r e^{-r^2} \left( \int_{0}^{2\pi} d\theta\right) dr  \\
&= 2 \pi \int_{0}^{\infty}  r e^{-r^2}  dr  \\
&= 2 \pi \left[\frac{e^{-r^2}}{-2}\right]_{0}^{\infty}  \\
&= \pi \end{align*}

が得られます。

よって、ガウス積分の値が  I = \sqrt{\pi} と得られます。

以上から

 \displaystyle \Gamma\left(\frac{1}{2}\right) = \sqrt{\pi} \tag{7}

が示されました。


したがって、マクドナルドの問題は

 \displaystyle \begin{align*}\Gamma\left(\frac{5}{2}\right) \times \frac{4}{\sqrt{\pi}} &= \frac{3}{2} \times \frac{1}{2} \times \Gamma\left(\frac{1}{2}\right) \times \frac{4}{\sqrt{\pi}} \\
&= \frac{3}{2} \times \frac{1}{2} \times \sqrt{\pi} \times \frac{4}{\sqrt{\pi}} \\
&= 3 \end{align*}

となり、答えは  3 であることが分かりました。


(つまり、「3種のチーズのビーフシチューπ(パイ)」ということですね! 美味しそう!!)


おわりに

今回はマクドナルドの問題をきっかけに、かなり丁寧めにガンマ関数について紹介してみました。

ガンマ関数は好きな関数の一つなので、こういう機会に紹介できてよかったです。マクドナルドさんありがとうございます。


今回はアドベントカレンダーがたまたま空いていたので、せっかくなので書いてみました。
明日以降も空いていますので、もし書ける方がいましたら、ぜひアドベントカレンダーに寄稿いただけると嬉しいです。

adventar.org


(このままだと私が毎日書くことになってしまいますw)


それでは今日はこの辺で!