tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

等比数列の和と望遠鏡和

横山明日希さんのこのツイートを受けて、面白い(と僕が思った)計算法を考えたので紹介します。

考えたといっても、横山さんのツイートのリプライについている解法と考え方はほぼ同じです。

 \displaystyle \frac{1}{2} = 1 - \frac{1}{2}
 \displaystyle \frac{1}{4} = \frac{1}{2} - \frac{1}{4}
 \displaystyle \frac{1}{8}  = \frac{1}{4} - \frac{1}{8}
 \displaystyle \frac{1}{16}  = \frac{1}{8} - \frac{1}{16}
 \displaystyle \frac{1}{32}  = \frac{1}{16} - \frac{1}{32}

と置き換えるのがポイントです。

計算するとこうなります。

 \require{cancel}\begin{align} &\frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{1}{8} + \frac{1}{16} + \frac{1}{32} \\
&= \left(1 - \frac{1}{2}\right) + \left(\frac{1}{2} - \frac{1}{4}\right) + \left(\frac{1}{4} - \frac{1}{8}\right) + \left(\frac{1}{8} - \frac{1}{16}\right) + \left(\frac{1}{16} - \frac{1}{32}\right)  \\ 
&= 1 + \cancel{\left(- \frac{1}{2} + \frac{1}{2}\right)} + \cancel{\left( - \frac{1}{4} + \frac{1}{4}\right)} + \cancel{\left( - \frac{1}{8} + \frac{1}{8}\right)} + \cancel{\left(- \frac{1}{16} + \frac{1}{16}\right)} - \frac{1}{32} \\ 
& = 1 - \frac{1}{32} \\
& = \frac{31}{32}\end{align}


間の項がバサバサと打ち消しあうようにするおなじみの計算を、INTEGERSのせきゅーんさんは「望遠鏡和」と呼んでいます。
integers.hatenablog.com



一般の等比数列の和の公式も、望遠鏡和で計算できることがわかりましたので、最後にやってみましょう。

ポイントは

 \displaystyle r^k = \frac{r^k}{1-r} - \frac{r^{k+1}}{1-r}

という置き換えです。

 \require{cancel}\begin{align} &1 + r + r^2 + \cdots + r^{n} \\
&= \left(\frac{1}{1-r} - \frac{r}{1-r}\right) + \left(\frac{r}{1-r} - \frac{r^2}{1-r}\right) + \left(\frac{r^2}{1-r} - \frac{r^3}{1-r}\right) + \cdots + \left(\frac{r^n}{1-r} - \frac{r^{n+1}}{1-r}\right)  \\ 
&= \frac{1}{1-r} + \cancel{\left(- \frac{r}{1-r} + \frac{r}{1-r}\right)} + \cancel{\left( - \frac{r^2}{1-r} + \frac{r^2}{1-r}\right)} + \cdots + \cancel{\left(- \frac{r^n}{1-r} + \frac{r^{n}}{1-r}\right)} - \frac{r^{n+1}}{1-r} \\ 
& = \frac{1}{1-r} - \frac{r^{n+1}}{1-r} \\
& = \frac{1-r^{n+1}}{1-r}\end{align}

このように考えると

 \displaystyle -\frac{r^{n+1}}{1-r}

という項が残るのは当たり前という感じがしますし、 n+1 乗になることを間違えることはありませんね。

 n\to \infty の極限をとると

 \displaystyle \frac{1}{1-r}

になることも明らかです。


簡単ですが、今日はこの辺で。

「増税問題」が解決しました

増税問題は「消費税の増税に伴って総額表示に現れるようになった新しい数はどのような数か?」という数学の問題のことで、次の記事で問題提起しました。
tsujimotter.hatenablog.com

記事を公開してみると、早速 id:asangi_a4ac さんによる鮮やかな解答が寄せられ、 S_{0.1}\setminus S_{0.08} の数が  \bmod{11\times 27} で特徴づけられることが明らかになりました。id:asangi_a4ac さんありがとうございます。
asangi-a4ac.hateblo.jp


まずは上記の記事を読んでいただきたいです。本記事では、上記の記事の証明のキーポイントを振り返りつつ、さらなる一般化をはかりたいと思います。実は、上記のアイデアはそのまま一般化できる素晴らしいものだからです。

消費税10%の場合

 \alpha = 0.10 とします。

任意の自然数は、 n = 10k + k' k' = 0, \ldots, 9)と、一意的に表すことができます。

これを使って  \lfloor (1+\alpha)n\rfloor を計算しましょう。

 \lfloor (1+\alpha)n\rfloor = \lfloor 11k + 1.1k'\rfloor = 11k + \lfloor 1.1k'\rfloor

ここで、ガウス記号の性質  \lfloor N + x \rfloor = N + \lfloor x \rfloor を用いました( N は整数とします)。

最右辺は  11 の倍数と  \lfloor 1.1k'\rfloor の和になっています。取りうる  k' の値は  10 通りであり、よってこの式によってすべての自然数を表すことができません。具体的には  11k + 10 型の自然数が表せないことになります。

消費税8%の場合

 \alpha = 0.08 とします。

任意の自然数は、 n = 25k + k' k' = 0, \ldots, 24)と、一意的に表すことができます。
 25 をなぜチョイスしたかについては、後で述べます。)

これを使って  \lfloor (1+\alpha)n\rfloor を計算しましょう。

 \lfloor (1+\alpha)n\rfloor = \lfloor 27k + 1.08k'\rfloor = 27k + \lfloor 1.08k'\rfloor

最右辺は  27 の倍数と  \lfloor 1.08k'\rfloor の和になっています。取りうる  k' の値は  25 通りであり、よってこの式によってすべての自然数を表すことができません。具体的には  27k + 13, \; 27k + 26 型の自然数が表せないことになります。

一般化

あとは上記の集合を適当に考えればめでたく元々の増税問題は解決するわけです。

この方針をさらに推し進めると、一般の  \alpha \in \mathbb{Q} について  S_{\alpha} を特徴づけることができることに気づきます。


 \alpha は有理数なので、互いに素な  P, Q を用いて  \alpha = \frac{P}{Q} と表すことができます。たとえば、 \alpha = 0.08 であれば、 P = 2, \; Q = 25 ですね。

ここで、 n = Q k + k' k' = 0, \ldots, Q - 1)と一意的に表せることに気づくと、

 \lfloor (1+\alpha)n\rfloor = \lfloor (Q + P)k + (1+\alpha)k'\rfloor = (P+Q)k + \lfloor (1+\alpha)k'\rfloor

とできます。最右辺は  P + Q の倍数と  \lfloor (1+\alpha)k'\rfloor の和となっており、取りうる値は  Q 通りです。したがって、 \bmod{P+Q} の数のうち  P 個の数を表すことができません。


 \alpha = 0.08 のときに  \bmod{27} を考えたのは、 P + Q = 2 + 25 = 27 ということだったというわけですね。

次の問題へ

このように一般化できたので、@toku51nさんによる次の問題に進みましょう。


問題:消費税は3%,5%,8%,10%と上がっていきましたが、この4種どれでも存在しない最小の税込価格はいくらでしょう?


 \alpha = 0.03, \; 0.05 についても同様に考えればよいでしょう。

 \alpha = 0.03 のとき、 P = 3, \; Q = 100 と書けるので、 {P+Q} = 103 で割ったあまりで  S_{0.03} は決まる。実際、

 103k + 34, \; 103k + 68, \; 103k + 102

と表せる数が総額表示に存在しない数である。

 \alpha = 0.05 のとき、 P = 1, \; Q = 20 と書けるので、 {P+Q} = 21 で割ったあまりで  S_{0.05} は決まる。実際、

 21k + 20

と表せる数が総額表示に存在しない数である。


よって、@toku51nさんの問題の解は、連立一次合同式

 \begin{cases} n \equiv 34, \; 68, \; 102 \pmod{103} \\
n \equiv 20 \pmod{21} \\
n \equiv 13, \; 26 \pmod{27} \\
n \equiv 10 \pmod{11} \end{cases}

を解けばよいとわかります。


ここで、気にしなければならないのは、2番目と3番目です。 21 = 3\cdot 7, \; 27 = 3^3 であり、 3 を共通因数に持つため、単純に中国剰余定理が使えません。

最小公倍数  \operatorname{lcm}(21, 27) = 189 で割ったあまりを考えると、 n\equiv 20 \pmod{21} の方は

 n \equiv 20, 41, 62, 83, 104, 125, 146, 167, 188 \pmod{189}

となり、 n \equiv 13, \; 26 \pmod{27} の方は

 n \equiv 13, 26, 40, 53, 67, 80, 94, 107, 121, 134, 148, 161, 175, 188 \pmod{189}

となります。両者の共通部分をとると  n \equiv 188 \pmod{189} となります。


結局、連立一次合同式が

 \begin{cases} n \equiv 34, \; 68, \; 102 \pmod{103} \\
n \equiv 188 \pmod{189} \\
n \equiv 10 \pmod{11} \end{cases}

に帰着できました。


 103, \; 189, \; 11 はすべて互いに素なので、中国剰余定理より

 103 \times 189 \times 11 = 214137

を法として3つの解が定まります。


実際計算してみると

 n \equiv 97712, 195425, 214136 \pmod{214137}

が得られます。これが、3%, 5%, 8%, 10% の総額表示で存在しない数の条件になります。


最小の数は  n = 97712 ですね!


すっきり解決ということで、それでは今日はこの辺で!


最後になりましたが、問題の解答を寄せてくださった id:asangi_a4ac さん、拡張問題を考えてくださった @toku51nさん ありがとうございました。

増税問題

2019年10月1日に消費税が8%から 10% に引き上げとなりました。正確にいうと、軽減税率というシステムが導入されるようなので、8%と10%が混在することになるみたいです。

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本記事のタイトルは「増税問題」です。ここでは、消費税増税について一言申し上げたい・・・というわけではなく、増税に伴って生じる 数学の問題 について考えたいと思います。


平成25年から商品価格には総額表示が義務付けられ、街中で見かける価格は基本的に消費税込みの金額になりました。

数が大好きなtsujimotterの興味としては、消費税10%のときには、総額表示の金額としてどんな数が現れるのか、ということが気になります。


ここで考えなければならないのが、端数の処理についてです。国税庁によると、四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法でもよいとのことです。

なお、総額表示に伴い税込価格の設定を行う場合において、1円未満の端数が生じるときには、その端数を四捨五入、切捨て又は切上げのいずれの方法により処理しても差し支えありません。
No.6902 「総額表示」の義務付け|消費税 |国税庁 より引用)

ただ、検討が面倒なので、この記事内では端数は一律切捨てとしたいと思います。つまり、消費税が  \alpha(ただし、 0\leq \alpha \leq 1)のとき、商品価格が  n とすると、税込価格(総額)は

 \lfloor (1+\alpha)n\rfloor

と表せます。ここで、 \lfloor \cdot \rfloor はガウス記号です。


たとえば、消費税が8%のとき、商品価格が100円である商品の総額は

 \lfloor 100\times 1.08 \rfloor = 108

となります。

一方で、商品価格が99円の場合の総額は

 \lfloor 99\times 1.08 \rfloor = 106

となります。

つまり、 107 という数は、消費税8%における総額表示として現れない のです。これは悲しいことですね。

たとえ、 107 についての美しい性質を知っていたとしても、それが街中の価格表示に現れることは決してないと。


しかし、ここで朗報です。消費税が10%に引き上げになったことで、 107 が総額表示として現れることが可能となります。実際、商品価格が  98 円とすると

 \lfloor 98\times 1.1 \rfloor = 107

となります。


つまり、増税のおかげで、街中の価格表示に現れる数の種類が変わるということですね! しかも、軽減税率によって8%と10%が混在するので、現れる数のバリエーションは純粋に増えます! 増税さまさまですね!!!


この  107 のように、10%に引き上げになったことで、現れるようになった新しい数はどのような数でしょうか? それを問いかける問題を 「増税問題」 と(勝手に)名付けました。ぜひ考えてみてください。

増税問題
 0\leq \alpha \leq 1 を満たす実数  \alpha に対し、自然数の部分集合  S_\alpha を以下で定義する:

 S_\alpha := \{ \lfloor (1+\alpha)n \rfloor \; \mid \; n \in \mathbb{Z}, \; n \geq 0 \}

このとき、差集合  S_{0.1} \setminus S_{0.08} の数を特徴付けよ。

 S_{\alpha} は消費税が  \alpha のときに総額表示として現れる数の集合ですね。 S_{0.1} \setminus S_{0.08} は「10%の総額表示にはあって8%にはない数の集合」を表します。この数の必要十分条件を見つけてくださいということですね。


試しに、消費税8%と10%で現れない数の集合を考えてみると

 \mathbb{N} \setminus S_{0.08} = \{13, 26, 40, 53, 67, 80, 94, 107, 121, 134, 148, 161, 175, 188, \ldots \}
 \mathbb{N} \setminus S_{0.1} = \{10, 21, 32, 43, 54, 65, 76, 87, 98, 109, 120, 131, 142, 153, 164, 175, 186, 197, \ldots \}

となります。何か特徴は見えるでしょうか?


ちなみに、上で挙げたのは200以下の数のみですが、175は共通部分になっていますね。つまり、10%に増税しても175円は総額表示として現れない ということです。


実際に街中で探してみたのですが、たとえば、 188 \in S_{0.10} \setminus S_{0.08} ですが、ちゃんと見つかりました!

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アラビックヤマトが総額188円だったのですが、これは8%のときには存在しなかった金額です。

ちなみに、飲食物が8%であることも確認しました。

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軽減税率の対象商品には「軽」という文字がつくようですね。


今日は問題提起だけして終わりにしたいと思います。興味を持った方はぜひ考えてみてください。

それでは今日はこの辺で。

【ネタ計算】12の345乗を691で割った余りを計算してみた


上のツイートをみて、面白そうだなと思ったので、計算してみました。

ただし、普通に計算しても面白くない。せっかく {}\bmod{691} なので、「ラマヌジャンの合同式」を生かした形で計算したいなと思いました。

ラマヌジャンの合同式
 p を素数とするとき,次が成り立つ:
 \tau(p) \equiv 1 + p^{11} \pmod{691} \tag{*}


全然効率の良くない ネタ計算 ではありますが、よろしければお付き合いください。

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続々々・12 = 3×4, 56 = 7×8

12 = 3×4, 56 = 7×8シリーズの第4弾。まさか続くと思っていませんでした。

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シリーズの記事は「12 = 3×4, 56 = 7×8」というタグでまとめていますので、よろしければご覧になってください。
tsujimotter.hatenablog.com

今日のテーマ

前回までの記事を公開したところ、二世さん(@m_2sei)から

「みうらさんの方法で4-4のパターンできましたよ」
という連絡が。*1

まさか、この先の問題が解けるとは思っていなかったので驚きです。許可をいただいてその解法を紹介したいと思います。


というわけで、今回の問題はこちらです。

正の整数  n, a n > a + 7 と、次の式を満たすとする:

 an^3 + (a+1)n^2 + (a+2)n + (a+3) = (a+4) (a+5) (a+6) (a+7) \tag{1}

このとき、 n, a の組を求めよ。


次数がだいぶ増えてきたので、いかにも難しそうですが、やってみましょう。

*1:こちらが実際に送ってもらった解答です。

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続々・12 = 3×4, 56 = 7×8

前々回の記事 で、 ab = c\times d 型の問題に対して

 ab = d\times e \times f \tag{1}
 abc = d\times e \times f \tag{2}

という拡張が考えられるという話をしました。

 (2) の方は 前回の記事 で扱ったので、今回は式  (1) を解いてみたいと思います。


つまり、今回の問題はこれです。

正の整数  n, a a + 4 < n と、次の式を満たすとする:

 an + (a+1) = (a+2) (a+3) (a+4) \tag{3}

このとき、 n, a の組を求めよ。


今回の問題は比較的簡単で、 ab = c\times d 型の問題とほぼ同様の手順で計算することができます。やってみましょう。

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おまけとして、後半では右辺が  k 個になったバージョンも考えたいと思います。

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続・12 = 3×4, 56 = 7×8

前回に引き続き、 12 = 3\times 4 関連の問題を考えたいと思います! 前回の記事を読んでいない方は、ぜひ読んでみてください:
tsujimotter.hatenablog.com


前回はロマンティック数学ナイトの登壇者・藤坂さんのツイートをきっかけに、 12 = 3\times 4 というタイプの式は、 56 = 7\times 8 の他には存在しないということについて考察しました。


今回は、この問題を拡張して

 123 = 4\times 5\times 6

のタイプの問題を考えてみたいと思います!

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もちろん、上のような式は(少なくとも10進法では)成り立ちません。実際に考えたいのは次の問題です。

正の整数  n, a a + 5 < n と、次の式を満たすとする:

 an^2 + (a+1)n + (a+2) = (a+3) (a+4) (a+5) \tag{1}

このとき、 n, a の組を求めよ。


この問はtsujimotterには解けなかったのですが、Twitterで声をかけてみたところ、みうらさん(@miura_prime)という方がその日のうちに解いてくださいました!
解法がとても興味深かったので、今回はそれをご紹介したいと思います。自分で考えてみたいという方は、スクロールを止めて、ぜひ考えてみてください。







解答例

まず  n > a+5 なので、正の整数  k を用いて  n = a + k と表すと  k > 5 となることがわかります。

その  k を用いて、式  (1) n = a + k を代入します。

 a(a+k)^2 + (a+1)(a+k) + (a+2) = (a+3) (a+4) (a+5) \tag{2}

これで、変数は  a, k だけになりました。


さらに式  (2) の(左辺) -(右辺)を、関数  F_k(a) で表すことにします。

 F_k(a) := a(a+k)^2 + (a+1)(a+k) + (a+2) - (a+3) (a+4) (a+5) \tag{3}

 F_k(a) = 0 となるような  a, k が元の問題の解を与えるというわけです。


ここで  k \geq 9 のとき、 F_k(a) は実際には正の値をとってしまう、という補題を示したいと思います。すなわち、この条件では解がないということです。

補題
 a, k を正の整数とする。 k \geq 9 のとき、 F_k(a) > 0 が成り立つ。

(補題の証明)  F_k(a) を次のように変形する。

 \begin{align} F_k(a) &= a(a+k)^2 + (a+1)(a+k) + (a+2) - (a+3) (a+4) (a+5) \\
&= a^3 + (2k + 1)a^2 + (k^2 + k + 2)a + (k + 2) - a^3 - 12a^2 - 47a - 60 \\
&= (2k - 11)a^2 + (k^2 + k - 45)a + k - 58 \end{align} \tag{4}

ここで、 F_k(a) a についての 2次関数 になっていることに注意します(3次の項が消えた!)。

 k \geq 9 のとき、 F_k(a) の2次の項と1次の項の係数は

 2k - 11 > 0
 k^2 + k - 45 > 0

となることがわかります。したがって、 F_k(a) a > 0 のとき 単調増加 します。

ここで  k \geq 9 のとき、 a = 1 を計算すると

 \begin{align} F_k(1) &= (2k - 1) + (k^2 + k - 45) + k - 58 \\
&= k^2 + 4k - 114 \\
& \geq 9^2 + 4\cdot 9 - 114 \\
& > 0 \end{align}

となります。

したがって、 F_k(a) > 0 が言えました。(補題の証明終わり)


図に表すとこういう感じです。横軸が  a で赤い線が  F_k(a) です。 k \geq 9 のときに  F_k(1) > 0 であることが確認できるかと思います。


以上により、 k として考えるべき範囲は  5 < k < 9 のとき、すなわち

 k = 6, 7, 8

3通り であることがわかりました。

あとは、この3通りすべてを調べればよいでしょう!

 k = 6 のとき

 (4) k = 6 を代入すると

 F_6(a) = a^2 - 3a - 52

です。方程式  F_6(a) = 0 の判別式は

3^2 + 4\cdot 52 = 217 = 7\times 31

で、平方数ではないので、 a は整数ではありません。

 k = 7 のとき

 (4) k = 7 を代入すると

 F_7(a) = 3a^2 + 11a - 51

です。方程式  F_7(a) = 0 の判別式は

11^2 + 4\cdot 3\cdot 51 = 733(素数)

で、平方数ではないので、 a は整数ではありません。

 k = 8 のとき

 (4) k = 8 を代入すると

 F_8(a) = 5a^2 + 27a - 50

です。方程式  F_7(a) = 0 の判別式は

27^2 + 4\cdot 5\cdot 50 = 1729 = 7 \times 13 \times 19

で、平方数ではないので、 a は整数ではありません。



以上から、すべての  k > 5 なる  k に対して、条件を満たす整数  a は存在しないことがわかります。

よって、式  (1) には条件を満たす整数解がないことが示されました。(終わり)


やりましたね! お疲れさまでした!

おわりに

以上の考察により、

 123 = 4\times 5 \times 6

というタイプの式は存在しないということが証明できました!


証明の流れも面白かったですね。 n = a + k と置くことで  a の2次関数にできること、そして、十分大きな  k では左辺の方が大きくなってしまい解がないことを示す、という方針が鮮やかでした。

無事解決できてよかったです!


この問題に取り組んだきっかけは、藤坂さんによる「12=3×4,56=7×8の美しさに感動する」という一文からでした。どんな感動があるのだろうと思って前回の問題に取り組んだわけですが、おかげさまでとても興味深いに出会うことができました。

まだまだ拡張はできそうな問題ですので、興味がある方はぜひ取り組んでみてください。

それでは、今日はこの辺で。

続きはこちら!

tsujimotter.hatenablog.com