tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

デュードニー数:512

今日はこんな問題を考えてみましょう:

問題(ルートの展開)
ある3乗数を考えます。その数の各桁の数を足し算したら、もとの数の3乗根に一致しました。
もとの数は何でしょうか?


一例として、 512 を考えましょう。 512 = 8^3 なので、これは3乗数です。

 512 の各桁を足し算すると

 5 + 1 + 2 = 8

となり、 512 の3乗根である  8 に一致しました。

というわけで、 8 はこの問題の答えの一つです。


 1 もこの問題の答えの一つです。 1 = 1^3 なので、これは3乗数ですが、その各桁を足し算すると、もちろん  1 に一致します。


さて、ほかにも例はあるでしょうか?

(自分で考えたい人は、ぜひどうぞ。答えは記事の後半で紹介します。)

続きを読む

(自由研究)平方根計算の裏技(?)を解剖する

Twitterで「平方根を計算する裏技」に関するこんなツイートが回ってきました:

元はアラビア語のツイートなのですが、これが日本語に翻訳されて回ってくるというのが最近のTwitterの嬉しいところですね。


元のツイートでは動画で説明されていますが、ここで文章でも解説してみましょう。

続きを読む

有限多重ゼータ値②:有限多重ゼータ値とは何か

「有限多重ゼータ値」シリーズ2回目(最終回)の記事です。

前回の記事では  \mathcal{A} を導入して、そこで展開される数論の世界を紹介しました。今回は、環  \mathcal{A} を舞台として定義される 有限多重ゼータ値 の世界を紹介したいと思います。
tsujimotter.hatenablog.com


有限多重ゼータ値は、多重ゼータ値の後に提唱された概念で、ある種のミニチュア版を考えているような、そんな対象です。

ところが、有限多重ゼータ値を環  \mathcal{A} 上で考えることで、さまざまな素数に関する数論上の問題を考えることにつながるのです。


前回展開した環  \mathcal{A} 上の数論の話が、有限多重ゼータ値にも結びつきます。ぜひ最後までご覧ください!

続きを読む

有限多重ゼータ値①:環Aとさまざまな素数の無限性

今回と次回の記事で2回にわたって、「有限多重ゼータ値」について紹介したいと思います。


前回の記事で「多重ゼータ値」にまつわる興味深い数学の世界を紹介しましたが、「有限多重ゼータ値」はその 有限版 にあたります。
tsujimotter.hatenablog.com


「有限多重ゼータ値」の方の定義や性質については次回の記事で紹介するとして、今回の記事のメインテーマは  \mathcal{A} です。

 \mathcal{A} は有限多重ゼータ値を定義する舞台として登場するものですが、環  \mathcal{A} そのものが非常に面白いです。特に、正則素数の無限性 といった超難問に関わる道具となります。

ぜひ最後までみてもらえると嬉しいです。


なお、今回の主役の環  \mathcal{A} の呼び方なのですが、特に決まった呼び方はないようです。
 \mathcal{A} をそのまま「かんエー」と呼ぶ人もいるそうなので、私も心の中でそのように読んでいます。

Kontsevichの環と呼ばれることもあるようです。講演の中で「柔らかいエー」と読んでいる人も見かけました。

金子先生の論文の中で “poor man’s adele ring”(貧者のアデール環)というような表現をされているのもみました。

続きを読む

√41の概算 〜素朴な計算からニュートン法とヘンゼルの補題へ

突然ですが、みなさんは  \sqrt{41} の値がいくつかご存知ですか?

普段数学をやっていても、なかなかこの値の計算をすることはないですよね。


この問題を考えるきっかけとなったのは、三平方の定理です。

tsujimotterは、数学が苦手な学生向けの数学講義をしていて、三平方の定理の練習問題を作ろうと思っていたときのことです。下図左の斜辺の長さを求める問題を作ろうとして、間違えて右の方の問題を出してしまいました。


右側の問題について計算してみると、三平方の定理より斜辺  x

 x^2 = 4^2 + 5^2 = 16 + 25 = 41

を満たすので、 x = \sqrt{41} が得られます。


えっ、 \sqrt{41} ってなんだよ、いったいいくつになるんだよ、と学生からは非難轟々(?)でしたが、
その場で  \sqrt{41} を概算する方法を思いついて場を収めることができました(?)。


概算の方法がちょっと面白かったので、その紹介をしたいと思います。

また、この問題を考えていくうちに、もっと一般化 させたくなってきました。一般化していくと、意外なことに数論的にも少し面白いことが分かってきました。

なんと今回紹介する  \sqrt{41} の概算の方法を突き詰めていくと、先日記事としてまとめた「ニュートン法(前々回)」や「ヘンゼルの補題(前回)」が出てくるのです。

(実は、前回・前々回の記事は、今回のために準備した記事でした。)


ぜひ最後までご覧ください!


なお、今回の記事は、先日開催された日曜数学会ミニin北海道でtsujimotterが発表した内容をもとにしています。
tsujimotter.hatenablog.com


動画も撮影しているので、そのうち発表の様子もアップロードできたらと思っています。そちらもお楽しみに。

続きを読む

ヘンゼルの補題の証明とニュートン法のp進類似

今日のテーマは ヘンゼルの補題 です。

ヘンゼルの補題は、 p 進数における方程式の解の存在に関わる定理で、このブログの過去の記事でも紹介したことがありました。
tsujimotter.hatenablog.com


「7進法人間」の記事では、定理の主張の紹介にとどめて、証明までは紹介していません。今回は証明まで踏み込んで紹介したいと思います。


ところで、前回の記事でニュートン法を用いた実数解の近似について紹介しました。
tsujimotter.hatenablog.com


方程式の実数解と、方程式の  p 進数解については、一見関連がなさそうに見えますが、実は両者が関係するのです。

ヘンゼルの補題の解を構成するのに、なんとニュートン法が関係するのです。ぜひ最後までご覧ください。

続きを読む