tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

補足:微分形式は2回外微分すると0になる

tsujimotter.hatenablog.com

の記事の補足として、3次元閉多様体上の微分形式  \omega_0, \omega_1 に対して  2 回外微分を作用させると 0 になること、すなわち

 d(d\omega_0) = 0
 d(d\omega_1) = 0

を示したいと思います。記号の使い方は、前の記事に準じます。

綺麗に項が消えていく、気持ちの良い計算でした。

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ストークスの定理

電磁気学やベクトル解析の講義で「ガウスの定理」や「ストークスの定理」「グリーンの定理」という法則を習ったと思います。これらの法則は一見別々のものに見えますが、微分形式を用いるとこれらの法則を統一的に扱えるという素敵なお話を紹介したいと思います。

最近、この話を理解して楽しくなってしまって、自分なりにまとめてみたくなりました。よろしければお付き合いください。

今回の予備知識としては、以下の記事の2章ぐらいまでを読んでおくといいかと思います。
tsujimotter.hatenablog.com

また、「ガウスの定理」や「ストークスの定理」等の定理の主張は知っているものとして進めます。

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部分分数分解の公式

Twitterを眺めていると、とても楽しいツイートが流れてきました。

部分分数分解のテクニックだそうです。私も知りませんでした!

 \displaystyle \frac{1}{(s+1)(s+2)}

という多項式の積で書かれた分数を、 \alpha, \beta を使って以下のように置きます。

 \displaystyle \frac{1}{(s+1)(s+2)} = \frac{\alpha}{s+1} + \frac{\beta}{s+2} \tag{1}

この  \alpha, \beta を求めよ、というのが部分分数分解の問題です。

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積分定数とは何だったのか

数学ガール「ポアンカレ予想」を読んでいて(あまり本題に関係なく)感動したのが、不定積分 についてです。

 f(x) の不定積分は、原始関数  F(x) を用いて以下のように表せます。

 \displaystyle \int f(x)dx = F(x) + C

ここで、 C は積分定数です。

高校の時からずっと機械的に(もしくはおまじない的に)

 C は積分定数である」

と書いてきたわけですが、この積分定数とは一体何か、というのが今回の主題です。

考えを進めていったら、昨日ブログで書いたド・ラームコホモロジーも出てきてびっくり。よかったら最後まで御覧ください。

昨日の記事:
tsujimotter.hatenablog.com

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S^1のド・ラームコホモロジーとフーリエ級数の定数項

数学ガールの第6巻「ポアンカレ予想」がついに発売されましたね。tsujimotterも夢中になって読んでいます*1

今回の数学ガールのテーマは「ポアンカレ予想」です。「位相空間」や「多様体」といった幾何学のトピックがたくさん登場して、普段は数論ばかりで幾何学に触れてこなかったtsujimotterにとっては、大変勉強になる本となっています。数学ガールを読んで、頭の中が幾何学モードになっています。

さて、本日のブログ記事の主役は 「ド・ラームコホモロジー」 です。ド・ラームコホモロジー、多様体という幾何学的な対象の上で考えられる「微分積分」に深く関連した重要な概念です。以前からブログに書きたいと思っていたのですが、なかなか取りかかれませんでした。せっかく頭が幾何学モードになっているので、熱があるうちにブログにまとめたくなったのです。

「ド・ラームコホモロジー」については、以下の本の3章が大変参考になります。今回の記事の元ネタでもあります。

コホモロジー

コホモロジー

  • 発売日: 2002/07/01
  • メディア: 単行本

少し長い話になりますが、面白い内容だと思いますので、ぜひ最後まで読んでもらえると嬉しいです。

*1:tsujimotterは数学ガールの大ファンで、全巻持っています。札幌に住んでいた頃(ちょうど第5巻が発売された頃ですが)は、数学ガール読書会なるイベントを開いたこともありました

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ヘンゼルの補題と7進法人間

みなさん、ヘンゼルの補題 という定理をご存知でしょうか。

ヘンゼルの補題は、整数論についてのとても重要な定理の一つです。 p 進数 という、現代の整数論において必須とも言える概念とも深く関連します。

でも、ちょっとだけややこしい。今日はこの定理の紹介を試みようと思います。

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