tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

整数論

多重ゼータ値入門の入門

今日は「多重ゼータ値」をテーマに、その世界の面白さ、奥深さについて紹介したいと思います。目次は以下の通りです。 目次: 0. 経緯と本記事の目指すところ 1. そもそもゼータ値とは? 2. 多重ゼータ値の入口 3. 多重ゼータ値の定義 4. 多重ゼータ値の間の…

√41の概算 〜素朴な計算からニュートン法とヘンゼルの補題へ

突然ですが、みなさんは の値がいくつかご存知ですか?普段数学をやっていても、なかなかこの値の計算をすることはないですよね。 この問題を考えるきっかけとなったのは、三平方の定理です。tsujimotterは、数学が苦手な学生向けの数学講義をしていて、三平…

ヘンゼルの補題の証明とニュートン法のp進類似

今日のテーマは ヘンゼルの補題 です。ヘンゼルの補題は、 進数における方程式の解の存在に関わる定理で、このブログの過去の記事でも紹介したことがありました。 tsujimotter.hatenablog.com 「7進法人間」の記事では、定理の主張の紹介にとどめて、証明ま…

cos 2π/17 の計算(正十七角形が作図できるのはなぜ?)

今回はについて計算したいと思います。 まずは、この数の背景にある 正十七角形の作図問題 について簡単に説明します。 を素数として、正 角形が定木とコンパスで作図できることは、が作図可能であることと同値になります。たとえば、以下の図の ★ のマーク…

ヴェイユ予想で遊んでみよう(その2):超楕円曲線(種数2)の場合

本記事は日曜数学 Advent Calendar 2025の6日目の記事です。 昨日は岩淵夕希物智さんの「これも一つのコラッツ問題の複素化」でした。今年の日曜数学アドベントカレンダーはコラッツ予想が盛り上がっていますね! 前回の記事(下)に引き続き、ヴェイユ予想…

ヴェイユ予想で遊んでみよう(その1):楕円曲線の具体的計算

本記事は日曜数学 Advent Calendar 2025の1日目の記事です。 ご無沙汰しています。日曜数学者のtsujimotterです。2025年も日曜数学アドベントカレンダーを立ち上げまして、今日の記事はその1日目の記事となります。今年もどんな記事が集まるのか、今から楽し…

ヴェイユ予想ってなんだろう

こんにちは、日曜数学者のtsujimotterです。今日は ヴェイユ予想 と呼ばれる大定理を紹介します。 ヴェイユ予想は、一見すると抽象的な代数幾何の定理ですが、その出発点は「mod p での解の個数」という素朴な問いです。 ところが答えを追ううちに、複素数上…

平方剰余の相互法則の証明(第Ⅲ証明)の概略

お久しぶりです。 今日のテーマは、平方剰余の相互法則の証明についてです。平方剰余の相互法則を最初に証明したのはガウスです。 彼はこの定理を「黄金定理」と呼ぶほど大切にしており、生前に6つ、没後に発表されたものも含めて7つの異なる証明を与えまし…

群論を知れば循環小数はもっと面白い(1/7や1/13を例に)

今回は「循環小数」の奥深い世界にご招待します。これまでtsujimotterのノートブックでも何度か取り上げてきたテーマですが、循環小数は一見高校生にも馴染みのある素朴な存在です。しかし、その背後には大学数学の群論という、抽象でありながらも美しい理論…

(自由研究)20乗数の下2桁が自己同型数になるのはなぜ?

早速ですが、前回書いた記事の続きです。 前回は「 の下2桁はいくつか」という問題を考えました。 tsujimotter.hatenablog.com この問題は「 における 」を計算すればよく、さまざまなアプローチによりと計算できるのでした。 ところで、この という数は 自…

「2の100乗の下2桁はいくつか?」の解法7選

お久しぶりです。tsujimotterです。今日考えたいテーマは、横山明日希さんのこちらの問題です:文字数が少ない問題作りました。ちょっとだけ工夫して解ける問題ですが、地道に計算してもよいかもしれません。 pic.twitter.com/CYh0ZZ7O43— 横山 明日希 (@asu…

エルキースによるオイラー予想の反例:2682440^4 + 15365639^4 + 18796760^4 = 20615673^4

こちらの記事は今日投稿された下記の動画に関して、さらに深い解説をする記事となっています。www.youtube.comよろしければ、こちらの動画も合わせてご覧ください!フェルマーの最終定理の のケースに自然数解が存在しないことは、オイラーによって証明され…

リウヴィルの示した「初等整数論の」面白い定理について

今日は、次の等式についてです。こちらの記事は今日投稿された下記の動画に関して、さらに深い解説をする記事となっています。www.youtube.comよろしければ、こちらの動画も合わせてご覧ください! この式だけ見せられても「ほぉ、なるほど。足したものを2乗…

極大超プーレ数とフェルマー商の素因数分解

超プーレ数 があったとき、その約数 は定義より 超プーレ数・素数・1 のいずれかです。超プーレ数に対してその約数が多ければ多いほど、多くの超プーレ数を内部に持つことになります。今回は「約数をできるだけ多く持つような超プーレ数」を考えたいと思いま…

プーレ数の平方因子とヴィーフェリッヒ素数

前回に引き続き「超プーレ数」の話題です。今朝投稿されたばかりの次のYouTube動画に関する話題について、ブログでもより深く解説してみたいと思います。www.youtube.com 前回紹介したときに現れた超プーレ数の例はのように、平方因子を持たないものばかりで…

プーレ数と超プーレ数

明日話したくなる「数」のお話シリーズの最新動画で 超プーレ数 という概念を紹介しました。www.youtube.com 動画内でいくつか定理を紹介しましたが、証明までは説明しませんでした。このブログ記事では動画の補足情報として、動画で紹介できなかった証明部…

エラトステネスの篩を数式で表すと・・・?

素数の一覧表を作るときに、一個一個の数を素数かどうか判定していくのもよいですが、もう少し効率的に行う方法があります。その方法の一つが エラトステネスの篩(ふるい) です。 エラトステネスの篩は、情報系の大学生であればプログラミングの演習等で一…

「2pがトーシェントであること」と「pがソフィー・ジェルマン素数であること」は同値

今朝投稿されたYouTube動画 youtu.beにて、( は素数)の形の数がトーシェントである条件が、ソフィー・ジェルマン素数に関係するという非常に興味深い定理を紹介しました。定理 を素数とすると,次が成り立つ: がトーシェント はソフィー・ジェルマン素数…

(987654321-1)/(123456789+1) がちょうど 8

最近、タイムラインでという話をよくみかけます。とても面白い現象ですね。 この問題については、id:egory_cat さんのブログにて、一般の 進法に対して証明が与えられています。 egory-cat.hatenablog.com ブログを拝見させていただきましたが、とても面白か…

数学者の名前がついた素数

今回の記事では、数学者の名前がついた素数 について紹介したいと思います。名前を紹介するだけではなく、その由来となった数学的背景を簡単に紹介する記事になっています。素数は のように数がただ並んでいるだけに思われるかもしれません。しかしながら、2…

合成数のときのウィルソンの定理

突然ですが、100の階乗を101で割ったあまり を考えてみましょう。実際、計算しようと思うと大変ですがとなります。これを で割ったあまりは、ちょうど になります。ほかにも、 はであり、これを で割ったあまりは となります。 実はこれ、一般に成り立つ話な…

【あけおめ】2022を素因数分解しよう

あけましておめでとうございます!今年も楽しく日曜数学して、その様子を発信していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! ぜひ一緒に日曜数学しましょう! 2022年最初の記事では2022を素因数分解してみたいと思います! もちろん、素数チェッ…

電子計算機を使わないで発見された最大の素数 (2^148+1)/17(Ferrierの素数)

日曜数学 Advent Calendar 2021 の17日目の記事です。 今日はという数について考えたいと思います。この数、桁数が 44桁 もある巨大な数なのですが、なんと 素数 であることが分かっています。1951年に素数であることが証明されたのですが、面白いことに電子…

フィボナッチ数の逆数和がテータ関数を使って表せるという話

今日のテーマは フィボナッチ数 です。またかと思われるかもしれませんが、最近たしかにフィボナッチ数の話が多いですね。 今日の切り口は、フィボナッチ数の逆数和 です。特に、奇数番目のフィボナッチ数の逆数和について考えたいと思います。 式 の和を100…

「隣り合う立方数の差」はどのような素数で割り切れるか?

今日は久しぶりに数学の話題を。もりしーさん( @9973_prm )の以下のツイートの話が面白かったので、今日はこの問題について考えてみたいと思います。立方数と立方数の差って大体素数じゃん、って思ったけど5^3と6^3の差がまさかの91でわろた— もりしー@素…

(a○+b)×(a△+b)=(a□+b)になるa,bの条件と中国剰余定理

数学ファンの鯵坂もっちょさんがツイートしていた問題が面白かったので、今日はその問題について考えてみたいと思います。あれ、もしかしてan+b(a,b,nは自然数、a,bは互いに素)型の数が積で閉じてるのってb=1のときだけか— 鯵坂もっちょ『つれづれなる数学日…

フェルマー商

今日は整数論の面白概念の一つである フェルマー商 を紹介したいと思います。 まず、フェルマーの小定理という、合同式を考える上で大変有用な定理から話を始めます。定理(フェルマーの小定理) を で割り切れない任意の整数とする。このときが成り立つ。 …

自由研究:レピュニットが素数で何回割れるのか問題

一つ前の記事で「LTEの補題(指数持ち上げ補題)」という有名な補題について勉強しました。せっかくなので、この補題を何か他のネタにも使えないかと考えました。LTEの補題とは、こんな主張の補題でした:LTEの補題(指数持ち上げ補題) を奇数の素数とする…

線形合同法(擬似乱数生成法)の周期

世の中の現象の中には「ランダム」な現象が多々あります。たとえば、サイコロを振るのは分かりやすいランダムな現象の例です。他にも天気や地震、ギャンブルなども分かりやすいランダムな現象の例です。一方で、コンピュータの中で行われる計算は、一定のア…

1/512の有限小数と冪零元

今日は5月12日なので 512 の日ですね! なので、2のべき乗で表せる数というわけです!嬉しいですね!(え、嬉しくないですか?) 楽しくなってきたので他にも面白い性質ないかなと、Wikipediaの「512」という項目を調べてみると、次のような性質を見つけまし…