tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

ゼータ関数

循環小数とアルティン予想

これまでtsujimotterのノートブックでは、循環小数についていろいろな話題を紹介してきました。今日はとっておきのトピックとしてアルティン予想 という 未解決問題 について紹介したいと思います。これまでの記事はこちらから見ることができます: tsujimot…

類体論の基本不等式の証明

Zeta Advent Calendar 2020 の14日目の記事です。 先日、類体論の入門記事を公開しましたが、多くの方に読んでいただいて嬉しいです。 tsujimotter.hatenablog.com類体論の記事を書いたことによって頭の中が整理されて、類体論の本が読めるようになってきま…

局所ゼータ関数(ゼータ積分)

Zeta Advent Calendar 2020 の2日目の記事です。 今日の記事は 「ゼータ積分」 というものを扱ってみたいと思います。きっかけは、私が主催したマスパーティというイベントです。その中で行われたζWalkerさんの発表の中で「ゼータ積分」というワードが現れま…

リーマンの素数公式の導出の概略(Enjoy Mathematics! 寄稿記事の公開)

ゼータ関数を通して素数のことが理解できてしまうという魔法の公式、これが今日のテーマです。この公式はtsujimotterが素数に興味を持つきっかけとなったもので、これまでも様々な場所でこの公式の魅力について語ってきました。たとえば、こちらの講演動画な…

ガロア表現から作るいろいろなゼータ関数

ゼータ Advent Calendar 2019 の5日目の記事です。 世の中には、色々なゼータ関数があります。・リーマンゼータ関数 ・ディリクレゼータ関数 ・ハッセ・ヴェイユゼータ関数 ・アルティンゼータ関数 ・合同ゼータ関数 ・セルバーグゼータ関数tsujimotterのノ…

楕円曲線のハッセの定理

今日は、前回紹介した「合同ゼータ関数のリーマン予想(ヴェイユ予想)」の応用を紹介したいと思います。 tsujimotter.hatenablog.com 楕円曲線の 有理点の個数には面白い法則があります。 上定義された楕円曲線 の 有理点全体を としたとき、その位数はの不…

合同ゼータ関数のリーマン予想

2017年の2月ごろに「ゼータ関数 強化月間」と題して、ゼータ関数に関する記事を書いていたのを覚えている方はいますでしょうか。そのとき投稿できたのは結局2件だけでしたが、実はもう一つ温めていたテーマがありました。それは 合同ゼータ関数 についてです…

岩澤主予想

tsujimotterのノートブックでは,これまで2回にわたって,岩澤理論の3本柱のうちの2つ「岩澤類数公式」「p進L関数」を紹介してきました。今日は,3本柱の最後1つである「岩澤主予想」について紹介したいと思います。参考記事(こちらの記事の知識を前提…

コーツ・ワイルズの定理(のあらすじ)

7/19から7/28の計9日間,Iwasawa2017という国際研究集会が東京大学にて開催されました.岩澤理論における世界的スーパースターが一堂に会し活発な議論が行われました. 実はtsujimotterもこっそり参加しておりました.感想やレポートはまたいずれ書きたいと…

p進L関数とクンマーの合同式

ゼータ関数 の負の整数 における値には面白い性質があります。

類数公式とデデキントのゼータ関数

ゼータ関数強化月間 第2弾 として,今日は「デデキントのゼータ関数」を紹介したいと思います。デデキントのゼータ関数によって「類数」が求まる 「類数公式」 についてお話したいと思います。証明の流れが非常に面白いので,そのあたりを楽しんでいただけ…

(行列の)ゼータ関数の行列式表示

最近「ゼータ関数」の話はこのブログで書いておらず,しばらくご無沙汰でした。最近学んでいる理論を調べているうちに「ゼータ熱」が再燃してきました。啓蒙書でお話程度に聞いていて「抽象的でよくわからないなぁ」と思っていた対象が,だんだんつかめてき…

「食べられるゼータ関数」を作ってみた

tsujimotter は,昨日 5 月 9 日に 歳の誕生日を迎えました。 は, と と を素因数に持つ最小の正の整数です。ちなみに,5 月 9 日の という数字は,単に「素数」というだけでなく,その中でも特に珍しい「非正則素数」だったりして,結構気に入っています。…

「触れるゼータ関数」ついに販売開始しました!

ニコニコ学会β 第8回シンポジウムにて,tsujimotter が披露し好評を博した「触れるゼータ関数」がついに発売! 今まで触れることができなかった「ゼータ関数」があなたの手に! 冒頭からテンションの高い文章となっていますが,ついにあのゼータ関数を,皆様…

#ニコニコ学会 数学セッションに出演しました

以下の記事でも告知していましたが、ニコニコ学会 第8回シンポジウム の数学セッションからオファーをいただいて講演をしてきました。無事終了しましたので、レポートとしてまとめたいと思います。 tsujimotter.hatenablog.com はじめに断っておきますが、…

691 に心惹かれる理由

日曜数学者と名乗る前は「数のエンターテイナー」と名乗っていた tsujimotter です。久しく数のエンターテイナー成分がなかったので、ひさびさに「数についての雑学」をお話しようと思います。タイトルにある "691" という数は、単なる素数に見えるかもしれ…

「第1回プログラマのための数学勉強会」で素数の話をしてきました

このブログでもちょくちょく登場している id:taketo1024 さん(以下,佐野さん*1)主催の「プログラマのための数学勉強会」で発表をしてきました。開催日は 1/30 だったので,随分ご報告が遅れてしまいましが,今日は tsujimotter の発表の振り返りを中心に…

リーマンのゼータ関数で遊び倒そう (Ruby編)

今日のテーマは「リーマンのゼータ関数」です。リーマンのゼータ関数(以下,ゼータ関数)は,複素関数と呼ばれるタイプの関数です。複素数を変数にとって,複素数を関数値として返すので複素関数というのです。ゼータ関数は以下の式で定義されます。ゼータ…

ラマヌジャンの L 関数 と 二次のオイラー積

このところ暗号系の記事が続きましたが、今回は暗号とはまったくありません。この記事では、次のオイラー積を求めたいと思います。 左辺の級数は「ラマヌジャンの L関数*1」と呼ばれています。ラマヌジャンとはもちろん、インドが産んだ奇才、シュリニバーサ…

ディリクレの算術級数定理の証明(4n+1型の場合)

これらの数は で割って 余る素数です。このような形の素数のことを「 型の素数」と呼びますが、果たしてそのような素数は無限に存在するのでしょうか。この問いに答えるのが「ディリクレの算術級数定理」です。 ディリクレの算術級数定理: を互いに素な正の…

リーマンの素数公式の可視化アプリがパワーアップしました

「花の金曜日」ということで、前々から懸案事項だった数学アプリの整備を再開しました。言わば、「一人数学ハッカソン」です。今回のテーマは「リーマンの素数公式」について。

ジーゲルのZ関数を数値計算する

リーマン予想とかリーマンの素数公式とかの文献を調べていくと「ゼータ関数の零点を求めたいな」って気分になりますよね。下記の Andrew Odlyzko のページに行けば、零点の生データを 100,000 個まで得ることができます。 Andrew Odlyzko: Tables of zeros o…

リーマンの素数公式を可視化する

三行でまとめると 《リーマンの素数公式》 を可視化するブラウザアプリを作りました。面白いから使ってみてね。解説もあるよ(以下ずっと続きます)。

ガウスの素数定理

ガウスの素数定理とは、ある数が 素数である確率 についての定理です。その定理は、自然対数を使って次のように表せます。 ガウスの素数定理: 十分大きな整数 が素数である確率 は次のように近似できる。 今回の記事では、この素数定理とその証明の概略を解…

素数が無数にあることのオイラー積を使った証明

《関連記事》 ゼータ関数のオイラー積 - tsujimotterのノートブック はるか昔、ユークリッドによって「素数は無数に存在する」ことは証明されていました。ここでは、ゼータ関数のオイラー積という比較的近代的な手法を使って、上記の定理を証明したいと思い…

ディリクレ級数のオイラー積

前作:ゼータ関数のオイラー積 - tsujimotterのノートブック ディリクレ級数とは、 という数論的関数を用いて、次のように定義されます。 数論的関数という言葉は、なじみが薄いかもしれません。数論的関数とは引数に整数をとる関数のことです。関数が整数で…

ゼータ関数のオイラー積

図:レオンハルト・オイラー(1707 - 1783) オイラー積とは レオンハルト・オイラーといえば世界一美しい公式と呼ばれる「オイラーの公式」が有名ですが、私が一番好きなのは次のオイラー積と呼ばれる公式です。 オイラー積(完全版) ただし、右辺の積記号…

4n+1型の素数とディリクレの算術級数定理

5, 13, 17, 29, 37, 41, 53, 57, ... これらはすべて、4で割ると1余る数です。しかも、自分自身と1以外の数で割ることが出来ないので素数です。このような数を4n+1型の素数と呼びます。このような素数に対しては、次のような疑問が沸いてくるでしょう。 果た…