tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

3月14日 #みらいけん数学デー で数学書限定ビブリオバトルしてきた

3/14 は「πの日」そして「数学の日」ですが、そんな数学にまつわる日に開催された #みらいけん数学デー というイベントに参加してきました!

イベント詳細はこちら:
www.shosen.co.jp

日曜数学会のキグロさんが主催で、書泉グランデさん共催というものです。
(書泉グランデさんは、会場のみらい研究所のすぐそばなんですね。これは4階の数学書コーナーで買ってしまいそう!)

数学史家の高瀬先生の講演や素数大富豪など、盛りだくさんなイベントでした。私も「数学書限定のビブリオバトル」に参加させていただきました。

せっかくなので、このブログでもビブリオバトルの準備で用意した私の発表の原稿(当初しゃべる予定だった内容)をご紹介したいと思います。

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ベイカーの定理と類数1の虚二次体の決定

類数1の虚二次体 は完全に決定されていて,虚二次体を  \mathbb{Q}(\sqrt{-d}) として

 d = 1, 2, 3, 7, 11, 19, 43, 67, 163

9 つだけであることが知られています。これがベイカー・スタークの定理です。

今日はこの定理の「ベイカーによる証明」をご紹介したいと思います。

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類数公式とデデキントのゼータ関数

ゼータ関数強化月間 第2弾 として,今日は

「デデキントのゼータ関数」

を紹介したいと思います。

デデキントのゼータ関数によって「類数」が求まる 「類数公式」 についてお話したいと思います。

証明の流れが非常に面白いので,そのあたりを楽しんでいただければと思います。

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(行列の)ゼータ関数の行列式表示

最近「ゼータ関数」の話はこのブログで書いておらず,しばらくご無沙汰でした。最近学んでいる理論を調べているうちに「ゼータ熱」が再燃してきました。

啓蒙書でお話程度に聞いていて「抽象的でよくわからないなぁ」と思っていた対象が,だんだんつかめてきて面白く感じてきたのです。

今日は、そんな「ゼータ関数」に関するトピックの中から「行列式表示」に関するお話をしたいと思います。


「ゼータ関数」「行列式」とは、少々意外な取り合わせに見えますね。でも、このへんがつながってきたら面白そうに思えませんか。

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「57 は 3 で割れ切れる」の別証明(したかった→できた)

2017/02/04:
こちらの記事の計算に誤りがあることが発覚しました。今は手が離せないので,また後ほど訂正いたします・・・。

2017/02/05:
上記の誤りについてですが,たしかに誤りであることが確認できました。どの箇所が誤っているかについて,末尾の「追記」に詳しくまとめました。

2022/08/05:
実は、今回の方法でも「57は3で割り切れる」を証明できることに気づきました。気付いたのは2021/03/17だったのですが、ブログに反映させるのが億劫でやっておりませんでした。今回、その証明をまとめたツイートをブログ末尾の「追記3」にまとめました。


57 という数は「グロタンディーク素数」と呼ばれています。グロタンディークという高名な数学者が「57 を素数と間違えた」というエピソードに由来しています。

このエピソードは,私のブログでも紹介したことがありました。
tsujimotter.hatenablog.com


上の記事でもご紹介した通り, 57 という数は,実際は  3 で割り切れるのです。だから,素数ではありません。

一方で,この数が  3 で割り切れることを示すのは難しいのでしょう。あのグロタンディーク先生が間違えたのですから。

実際,「 57 3 で割り切れる」を示すためには, 57 3 で割り算しなければいけません。割り算です。きっと難しいに決まっています。


そこで今回の記事では,実直に割り算するのではなく,もっと別の方法で「 57 3 で割り切れる」を示すことを試みたいと思います。

今日紹介するのは 57 3 で割り切れる」別証明 です。


使う道具は,虚二次体の類数 です。

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パッと見素数 "91" を素数判定に活用する

91 という数は、見た目が素数っぽくてつい間違えてしまうという

「パッと見素数」

です。
motcho.hateblo.jp


素数と間違えやすいので、たとえば素数を使ったカードゲーム*1においては、間違えて悔しい思いをした方もいるかもしれません。

「いやな数」と思われがちな 91 ですが、tsujimotterとしてはどんな数でも好きになってもらいたい。

そんな風に考えていたかどうかはさておき・・・

もしかしたら 91 が素数判定で活躍するかもしれない というアイデアを得ましたのでご紹介します。

*1:たとえば、「素数大富豪」という素晴らしいトランプゲームがあります。 integers.hatenablog.com

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1728とラマヌジャンと線形代数

 1728 といえば、ラマヌジャンの「タクシー数」のエピソードを思い出します。

 1729 = 1^3 + 12^3 = 9^3 + 10^3

 1729 という数に、ラマヌジャンが一瞬で「2通りの3乗数和の形で表せる最小の数」という意味を見出した、という話はよく知られていますね。


この式を導くポイントは、 1728 という数が  12^3 であることです。 10^3 = 1000 9^3 = 729 はなんとなく覚えている人が多いでしょうから、比較的自然に導くことができます。


さて今日は、この  1728 という数とラマヌジャンの「もう一つのつながり」を見せるエピソードをご紹介します。

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