今日は,私の大好きな数式から話を始めたいと思います。
続きを読む岩澤類数公式(岩澤理論入門編)
今日は「岩澤理論」についてのお話をしたいと思います。
2017年は,岩澤理論の創始者である岩澤健吉先生の 「生誕100周年」 の年にあたります*1。節目の年ということもあって Iwasawa2017 という国際会議が東京で開催されます。
私もこの分野の数学に関心があり,「節目の年である2017年までに」どうにかして理解しようと思い,これまで密かに勉強を続けてきました。
このままでは,岩澤理論を理解できないまま2017年が終わってしまいます。そう思って,2017年の1月より方針を改めることにしました。
毎朝早起きして「1時間限定」で岩澤理論の勉強だけことにしたのです。朝であればどんな予定にも邪魔されることはなく,一定のペースで勉強を進められます。(ついでに早起きして健康的な生活ができる)
これが功を奏して,よい生活リズムのまま約3ヶ月の勉強を続けることができました。
今日はこれまでの勉強の成果を中間発表として報告したいと思います。
私が岩澤理論の勉強に使っている本はこちらです。本記事の内容も,主にこちらの本を参考にしています。
上記の本を「3か月で読み終えること」を目標に勉強を進めてきましたが,ちょうど今月の上旬に読み終えたところです。自分の理解のチェックもかねて,できる限り自分の言葉で解説していきたいと思います。
今回の記事はtsujimotterのまさに勉強中のトピックです。
誤り・勘違い等,多分に含まれるかと思います。証明についても,ブログに書く都合上(そして私の理解の程度によって)流れだけ書いて省略している箇所が多々あります。正確な情報を知りたい方は,ぜひ上記の本を読んでいただけると幸いです。
また,誤りを見つけた際は,tsujimotterの勉強にもなりますし,優しく教えていただけると嬉しいです。
*1:2017年は,2011年以来6年ぶりの素数の年でもあります。
(小ネタ)恋する無限遠点
Aさん「私はBくんのことが大好き!」
Bくん「僕はその100倍好き!」
Aさん「じゃあ私はその1000倍好き!」
俺「y=100x,x=1000yだからx=y=0」
というネタがツイッターで流れてきたので、私も乗っかりたくなりました。
普通に実数上で上記の式を考えてしまうと になってしまうわけですが、たとえば とかで考えれば別の解が存在することになりますね。
以下のページで詳しく書いてありましたので、ご紹介します。
さて、私の方はというと、これを「楕円曲線」で考えたくなったというわけです。
楕円曲線 上の任意の点には、自然に「加法(+)」という演算を入れることができて「アーベル群」をなします。この場合の単位元 は「無限遠点」になります。
加法を 回繰り返せば 倍という写像も自然に定義できます。
また、 が に一致するとき、 を楕円曲線 等分点といいます。 回繰り返すと戻ってくるということですね。こんな風に戻ってくる点もあれば、二度と戻ってこない点もあります。戻ってくる点のことを「ねじれ点」と言ったりもします。
さて、先の問題に話を戻すと、彼女の愛情を点 とし、彼の愛情を点 とします。楕円曲線では 倍とか 倍とかを考えることができますから、先ほどの記事と同じ議論ができますね。
結果的に、3倍か41倍か271倍して になる、等分点を持つような楕円曲線を見つけてくればいいわけですね。
たとえば、
という曲線を考えて、この曲線に無限遠点を加えると楕円曲線になります。これを とすると、 にはたとえば という3等分点があります。
ははるか無限遠 なので、図には現れません。
彼女と彼の点を としておけば、元の条件は成り立ちますね。
ところで、先の記事では を除いていましたが、ふと も許しても面白いんじゃないかと思いました。
なので 「彼も彼女も無限遠点にいる」ことになりますね。こっちの方が少しロマンチックな感じがしませんか?笑
無限遠点といえば、恋い焦がれる場所でもあります。
加藤先生・臼井先生というお二人の数学者の掛け合いによって生まれた、こんな川柳を思い出します。最後にご紹介して終わりにしましょう。
数学は 無限遠点 恋う心 恋うて焦がれて 遙かな旅路
それでは、今日はこの辺で。
おまけ
無限遠点で愛し合うカップルその2
togetter.com
参考文献
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3月14日 #みらいけん数学デー で数学書限定ビブリオバトルしてきた
3/14 は「πの日」そして「数学の日」ですが、そんな数学にまつわる日に開催された #みらいけん数学デー というイベントに参加してきました!
イベント詳細はこちら:
www.shosen.co.jp
日曜数学会のキグロさんが主催で、書泉グランデさん共催というものです。
(書泉グランデさんは、会場のみらい研究所のすぐそばなんですね。これは4階の数学書コーナーで買ってしまいそう!)
数学史家の高瀬先生の講演や素数大富豪など、盛りだくさんなイベントでした。私も「数学書限定のビブリオバトル」に参加させていただきました。
せっかくなので、このブログでもビブリオバトルの準備で用意した私の発表の原稿(当初しゃべる予定だった内容)をご紹介したいと思います。
続きを読むベイカーの定理と類数1の虚二次体の決定
類数1の虚二次体 は完全に決定されていて,虚二次体を として
の 9 つだけであることが知られています。これがベイカー・スタークの定理です。
今日はこの定理の「ベイカーによる証明」をご紹介したいと思います。
続きを読む類数公式とデデキントのゼータ関数
ゼータ関数強化月間 第2弾 として,今日は
を紹介したいと思います。
デデキントのゼータ関数によって「類数」が求まる 「類数公式」 についてお話したいと思います。
証明の流れが非常に面白いので,そのあたりを楽しんでいただければと思います。
続きを読む(行列の)ゼータ関数の行列式表示
最近「ゼータ関数」の話はこのブログで書いておらず,しばらくご無沙汰でした。最近学んでいる理論を調べているうちに「ゼータ熱」が再燃してきました。
啓蒙書でお話程度に聞いていて「抽象的でよくわからないなぁ」と思っていた対象が,だんだんつかめてきて面白く感じてきたのです。
今日は、そんな「ゼータ関数」に関するトピックの中から「行列式表示」に関するお話をしたいと思います。
「ゼータ関数」と「行列式」とは、少々意外な取り合わせに見えますね。でも、このへんがつながってきたら面白そうに思えませんか。
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