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tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

フェルマーの二平方定理

数学 整数論 フェルマー 二次形式

5, 13, 17, 29, 37, 41, 53, ...

これらは、4で割って1余る素数です。このような素数が無数に存在することは、次の記事で書いた通りです。

4n+1型の素数とディリクレの算術級数定理 - tsujimotterのノートブック


初めてこの話を聞いた皆さんは次のような疑問を抱くかもしれません。
「なぜこんな素数を考える必要があるのか」と。
私も最初はそう思いました。
実は、これらの素数には、共通する興味深い性質があるのです。



たとえば、29を例に挙げましょう。

 29 = 2^2 + 5^2

このように29は、2の二乗と5の二乗という、2つの平方数の和で表せることがわかります。平方数とは「○○の二乗」で表せる数のことです。

面白いことに、「2つの平方数の和で表せる」という性質は、29だけの性質ではないのです。なんと、上で挙げた素数(4で割って1余る素数)すべてに共通する性質なのです。

例を挙げてみましょう。

 5 = 1^2 + 2^2
 13 = 2^2 + 3^2
 17 = 1^2 + 4^2
 29 = 2^2 + 5^2
 37 = 1^2 + 6^2
 41 = 4^2 + 5^2
 53 = 2^2 + 7^2

たしかに、今のところすべて2つの平方数の和で表せています。

実際にやってみるとわかりますが、この先のどの「4で割って1余る素数」で試してみても、同じように平方数の和で表すことが出来ます。ちょっと計算は大変かもしれませんが。


ここで、気になってくるのは、この「4で割って1余る素数」でない数に対しても、2つの平方数の和で表すことが出来るのではないか、ということです。
たとえば「4で割って3余る素数」は、2つの平方数の和で表せないのだろうか。


結論から言えば、ノーです。


奇数の素数に限って言えば、2つの平方数の平方数の和で表せるのは「4で割ったら1余る素数」だけなのです。
数学的にいうと、「ある奇素数が4で割ったら1余ること」は「ある奇素数が2つの平方数で表せること」の必要十分条件なのです。


奇数の素数と断ったのは、2が次のように2つの平方数の和で表せるからです。

 2=1^2+1^2
2は、素数の中で唯一の偶数です。


上記の条件を数式で表すと次のように表せます。

 p=4n+1 \Longleftrightarrow p=x^2+y^2
ただし、  p は奇素数。 n,  x,  y は1以上の整数。

これが表題であるフェルマーの二平方定理です。


定理の発見者は、「フェルマーの最終定理」で有名なあのフェルマー()です。


f:id:tsujimotter:20140321023854j:plain:w200
図:ピエール・ド・フェルマー(1608? - 1665)


それにしても、「4で割って1余ること」と「平方数で表せること」が同じ意味を持つ、というのは一体どういうことなのでしょう。不思議ですよね。


理解を深めるために、証明を試みたいと思います。


フェルマーの二平方定理に向けて、証明すべき命題は以下の2つです。

以下、 p を奇素数とする。
命題1:

 p=4n+1 \Longrightarrow p=x^2+y^2
命題2:
 p=4n+1 \Longleftarrow p=x^2+y^2

命題1 はなかなか難しい証明になります。本記事では、命題2 だけに絞って定理の雰囲気を掴むことに専念しましょう。



命題2 の意味は次の内容です。

ある奇素数が平方数の和で表せるならば、その数は4で割って1余る素数である。

この命題では、「4で割って1余る素数が平方数の和で表せるメカニズム」はわかりませんが、少なくとも「平方数の和で表せる奇素数は、4で割って1余る数に限る」ということはわかります。


こういう余りを使った定理を証明するときの常とう手段は、数を偶数・奇数に分けて考えることです。

2つの平方数  x^2,  y^2 x,  y の偶奇を考えると、次の4パターンに分けられることがわかります。

パターン1:  x は偶数、 y は偶数
パターン2:  x は偶数、 y は奇数
パターン3:  x は奇数、 y は偶数
パターン4:  x は奇数、 y は奇数

証明:

パターン1 から考える。

 x = 2m,  y = 2n とおく。

 \displaystyle \begin{eqnarray} p\;&=&\; x^2+y^2 \\
&=&\; (2m)^2+(2n)^2 \\
&=&\; 4m^2+4n^2 \\
&=&\; 2(2m^2+2n^2) \end{eqnarray}

 (2m^2+2n^2) は整数より、右辺は偶数。したがって、 p は奇素数ではない。

奇素数ではないので前提条件の条件に反しており、このパターンは証明したい命題が意味するものではありません。


次に、パターン2 を考える。

 x = 2m,  y = 2n+1 とおく。

 \displaystyle \begin{eqnarray} p\;&=&\; x^2+y^2 \\
 &=&\; (2m)^2+(2n+1)^2 \\ 
 &=&\; 4m^2+4n^2+4n+1 \\
 &=&\; 2(2m^2+2n^2+2n)+1 \end{eqnarray}

ここで、 (2m^2+2n^2+2n) は整数より、右辺は奇数。したがって、 p が奇素数という条件に合致します。
さらに、右辺を式変形すると、

 4(m^2+n^2+n)+1
となり、これは 4 で割ると 1 余る数である。


 x,  y は交換可能なので、パターン3 は実質的に パターン2 と同じ。


最後に パターン4 について考える。

 x = 2m+1,  y = 2n+1 とおく。

 \displaystyle \begin{eqnarray} p\;&=&\; x^2+y^2 \\
&=&\; (2m+1)^2+(2n+1)^2 \\
&=&\; 4m^2+4m+1+4n^2+4n+1 \\
&=&\; 2(2m^2+2n^2+2m+2n+1) \end{eqnarray}

ここで、 (2m^2+2n^2+2m+2n+1) は整数より、右辺は偶数。したがって、 p は奇素数ではない。


以上の、4パターンに対し、 p が奇素数であるという前提に合致したパターンは パターン2, 3 のみであった。また、これらのパターンでは、 p は 4で割って1余る数である。

したがって、平方数の和で表せる奇素数はすべて、4で割って1余る素数である、という題意が示された。


(証明終わり)


このように、 x^2,  y^2 の2つの平方数の和が奇素数になるためには、 x,  y の偶奇が異なることが必要であることがわかりました。そしてその場合、必ず 「4で割って1余る数」になることもわかります。「4で割って3余る数」にはなりえないのですね。

実際、上の数値の具体例を再掲すると、

 5 = 1^2 + 2^2
 13 = 2^2 + 3^2
 17 = 1^2 + 4^2
 29 = 2^2 + 5^2
 37 = 1^2 + 6^2
 41 = 4^2 + 5^2
 53 = 2^2 + 7^2
のように、偶奇が異なっていることが確認できますね。


今回の記事では、命題2 の証明だけでした。

実を言うと、 命題1 の証明は、「平方剰余の相互法則」という整数論のメインテーマを用いた本質的で非常に面白いものなのです。
しかし、なかなか骨が折れるので、いつか気が向いたときに挑戦したいと思います。用語だけ残しておくので、興味を持った方はぜひ自分で調べてみてください。


フェルマーの二平方定理の話は、整数論の教科書には必ずと言っていいほど載っている話題です。
今回は、非常に簡単にしか説明していませんが、本当はもっと奥深い話だったりします。高くてなかなかに難しいですが、しっかり勉強したい方は手元においておきたいところです。

初等整数論講義 第2版

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整数論は、このほかにも色々な面白い話題があります。次の本は、整数論のいろいろな話題をストーリー仕立てでわかりやすくさらってくれるので、入門書としてはお手軽ですよ。

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それではこの辺で。

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続きを書きました!(2015/02/22)


平方剰余の第一補充則から二平方定理を導く - tsujimotterのノートブック