tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

2018と二平方定理

みなさんあけましておめでとうございます。2018 年もどうぞ宜しくお願いします。

2018 年一発目の記事として、2018 で数遊びをしてみたいと思います。


2018とフェルマーのクリスマス定理

去年は 2017 年で素数、しかも4n+1型素数だったりして、各所で 2017 の数遊びが盛り上がりました。今年は、素数ではなく、しかも合成数なので「あまり面白くないのかなぁ」と思っていたのですが、ふみ川さんという方のツイートを見て考えが変わりました。


フェルマーのクリスマス定理とは「 4n+1 型の素数が二つの平方和で表せる」という有名な定理です。
integers.hatenablog.com
tsujimotter.hatenablog.com

先のツイートを見ると

 2018 = 2 \times 1009

と素因数分解できて、 1009 4n+1 型の素数なので、2つの平方数の和で表せるということですね。素晴らしい!


それでは、tsujimotter にこのツイートに数学的な一工夫を加えることにしましょう。

平方数の和で表される素数は  4n+1 型の素数と  2 だけです。一方で、平方数の和で表されるのは、何も素数だけではないのです。

クリスマス定理ほどメジャーではありませんが、平方数の和で表せる 合成数 の条件というものも知られています。それは

素因数分解したとき、すべての  4n+3 型の素因子の指数が偶数となる

ということです。

どういうことか簡単に説明しましょう。ある合成数  n を素因数分解したときに、 4n+1 型素数 or  2 に素因数分解されたとしましょう。すると、クリスマス定理よりそれぞれの素因子  p_1, p_2 p_1 = X^2 + Y^2 p_2 = Z^2 + W^2 と表せます。つまり、このように表せるということです。

 n = p_1 p_2 = (X^2 + Y^2)(Z^2 + W^2)

ここで、高校のときに習ったブラーマグプタの恒等式を使います。

 (X^2 + Y^2)(Z^2 + W^2) = (XZ + YW)^2 + (XW - YZ)^2

tsujimotterはこの恒等式が、恒等式の中で世界で一番好きです。これによって、 n (XZ + YW)^2, (XW - YZ)^2 という二つの平方数の和で表すことができました。

以上の操作は、素因子が 4n+1 型素数 or  2 である限りいくらでも続けられます。また、 4n+3 型の素因子であっても、指数が偶数であれば、 (0^2 + p^2) として同様の方法で二平方和の形で表すことができます。よって、先ほどの条件になるわけです。


さて、 2018 の素因子である  2 1009 もどちらも平方数の和で表せます。どのように表されるかというと

 \begin{align} 2 &= 1^2 + 1^2 \\
 1009 &= 15^2 + 28^2 \end{align}

となります。ここで、 1009 の計算は
tsujimotter.hatenablog.com

のブログのプログラムを使って

p = 1009
   218 * 1009 = 469^2 + 1^2
   5 * 1009 = 71^2 + 2^2
   1 * 1009 = 15^2 + 28^2

と計算してもいいですし、また
tsujimotter.hatenablog.com

の記事の計算方法を使って求めてもいいでしょう。


さて、 2 1009 の二平方和に、ブラーマグプタの恒等式を適用すると

 \begin{align} 2018 &= 2 \cdot 1009 \\ 
&= (1^2 + 1^2)(15^2 + 28^2) \\
&= (1\cdot 15 + 1\cdot 28)^2 + (1\cdot 28 - 1\cdot 15)^2 \\
&= 43^2 + 13^2 \end{align}

となり、結局

 2018 = 43^2 + 13^2

と表すことができましたね!やった、今年も二平方和だ!


私は全然気づかなかったのですが、せきゅーんさんによると

とのこと。たしかに、 43 13 も素数ですね!

2018 とピタゴラス数

せっかくなので、もうひとネタだけ紹介して終わりにします。ある数が平方数の和で表すことができると、その数を斜辺に持つ整数辺の直角三角形を作ることができます。これについては、1年前にこの記事で紹介していました。
tsujimotter.hatenablog.com


今年もやってみましょう。

まず、2018 を二平方和で表します。

 2018 = 43^2 + 13^2

これを、 i = \sqrt{-1} を含んだ世界で「素因数分解」します。

 2018 = (43 + 13i)(43 - 13i)

素因数の  (43 + 13i) を2乗します。

 (43 + 13i)^2 = 1680 + 1118i

さて、得られた複素数  1680 + 1118i の原点からの長さは  2018 となっています。したがって、これを複素数平面にプロットすると、斜辺  2018 の直角三角形  (1680, 1118, 2018) ができています。

f:id:tsujimotter:20180101081837p:plain:w400

面白いですね。

ちなみに、こういう図を作りたいときは、GeoGebra というツールは非常に便利に使えます。

(43 + 13i)^2

のように複素数を数式で打ち込むと、その点を適切な場所にプロットしてくれるのです。

今回の図も、GeoGebra を下絵に作りました。

f:id:tsujimotter:20180101082107p:plain:w400


みなさんも、ぜひ2018で遊んでみてください。


おわりに

今年もますます楽しく数学をしていきたいと思っております。 2\times 1009 年もどうぞ宜しくお願いします。

この記事を読んでくれたみなさん、Thank you(1009)!!!*1

それでは今日はこの辺で。


宣伝:日曜数学会開催

2018年1月13日(土)の日曜数学会の募集が開始されました!以下のページに記載の「申込方法」のリンクより申し込みください。みなさまのご参加をお待ちしています!
connpass.com

また、2018年2月18日には「第3回 日曜数学会 in 札幌」も開催されます。こちらもまだまだの募集中です!みなさまのご参加をお待ちしています!(Facebookのアカウントをお持ちでない方は、私まで個別にご連絡ください)
www.facebook.com


*1:ちなみに、本ブログでこのダジャレを使ったのは2回目です。