tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

法pにおける(-1)の平方根の計算(2)

4で割って1あまる素数  p に対して

 x^2 + 1 \equiv 0 \pmod{p} \tag{1}

をみたす整数  x が必ず存在することは「平方剰余の相互法則」の「第一補充則」と呼ばれ、よく知られていますね。


一方で、上の事実だけからは「 x がどのような数であるか」についてはわかりません。具体的に  x を求める方法はないのでしょうか。

実は以前にも似たような問題意識の記事を書いたことがありました。
tsujimotter.hatenablog.com

というわけで、今回はパート2です。

前回紹介したのは「オイラーの基準」を使った方法でしたが、今回は 「ウィルソンの定理」 を使った方法を紹介したいと思います。

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#素数大富豪札幌杯 で出された合成数出しカマトトについて

先日、素数大富豪の大会が札幌で開催されました。その名も「札幌杯」。一時期は開催が危ぶまれましたが、なんとか無事開催されることになりました。

少し長い動画ですが、YouTubeで大会の様子を見ることができます。
www.youtube.com

札幌杯では 「数学的に面白いシーン」 がありました。今日はそれを紹介したいと思います。

nishimura vs OTTY

nishimuraさんとOTTYさんの2人の対戦で事件(?)は起きました。お二人とも強豪同士という注目の対戦カードです。対戦も非常に熱かったのですが、今回見ていただきたいのは、動画の 2:12:00 あたりです。

f:id:tsujimotter:20200306011918p:plain:w400

OTTYさんの97843(5枚出し)に対して、nishimuraさんからこんな手が出されました

 3^{567224} =_? 88111213

88111213は "88JQK" として出されていますので、5枚出しで問題ありません。しかし なんだこれは という手です。

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ケンタッキーのサイドメニュー問題と重複組合せ

去年の年末、ケンタッキーに行ったときのことです。オリジナルチキン4ピースパックを注文することにしました。
www.kfc.co.jp

このパックでは、以下の4種のサイドメニューのうち1個を選ぶことができます。

・ポテトS
・クリスピー
・ビスケット
・コールスローS

どれもおいしそうですね。

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写真はオリジナルチキンとサイドメニューのビスケットです

私は2パック購入したので、サイドメニューは 重複を含めて2個 選ぶことができました。

ここで購入する際に悩んだのは、次の問題です。

サイドメニューを選ぶ組合せは何通りだろうか?

(あ、サイドメニューを選ぶのに悩んだんじゃないんですね・・・)

この問題に対して、ケンタッキーを出てから家までの道のりの間考えてみたところ、二通りの解法 を思いつきました。それを紹介したいと思います。

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フェルマー数を使った素数の無限性の証明

今日は数論の話をしましょう。

今回の主役は フェルマー数 です。フェルマー数とは、0以上の整数  n に対して

 F_n = 2^{2^n} + 1 \tag{1}

の形をした数のことです。

 F_n が自然に現れる問題としては 正多角形の作図 がよく知られています。 p を素数として、正  p 角形が作図可能である必要十分条件が知られています。その条件は「素数  p がフェルマー数であること」です。フェルマー数の形をした素数をフェルマー素数といいます。

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フェルマー素数と作図の関係についての解説は、tsujimotterのノートブックの過去の記事でも紹介しています:
tsujimotter.hatenablog.com

また、私の執筆した数理科学の記事(2017年12月号)でも、丁寧に紹介しています。よろしければご覧ください。

数理科学 2017年 12 月号 [雑誌]

数理科学 2017年 12 月号 [雑誌]

  • 発売日: 2017/11/20
  • メディア: 雑誌

最初の5つのフェルマー数

 F_0 = 3
 F_1 = 5
 F_2 = 17
 F_3 = 257
 F_4 = 65537

を観察すると、これがすべて素数となることに気づきます。

フェルマー数の由来となった数学者フェルマーは、フェルマー数が素数ばかりであることに驚き、この先も素数が続くことを予想していたようです。

ところが、すぐ次のフェルマー数は素数ではありません。

 F_5 = 4294967297 = 641 \times 6700417

もっというと、この先フェルマー素数は一つも見つかっていません。2020年2月現在、307個のフェルマー数が合成数であることが調べられています。フェルマー数の列の中に、6個目もフェルマー素数を見つける試みは、大変難しいことがわかります。


今紹介したフェルマー数を使うと、なんと 素数の無限性の別証明 が得られるのです。今日はその方法を紹介したいと思います。

フェルマー数から素数の無限性が得られると聞いて、ぱっと頭に浮かぶのは「フェルマー素数の無限性」を示すという方針でしょう。フェルマー素数が無限にあることが示せれば、当然素数も無限にあるというわけです。

フェルマー素数の無限性  \;\; \Longrightarrow \;\; 素数の無限性

しかしながら、フェルマー素数の無限性を示すのはとても困難です。そもそも「~〜素数の無限性」を示すこと自体、とても難しい問題です。ほとんどの場合(たとえば「フィボナッチ素数の無限性」「メルセンヌ素数の無限性」「双子素数の無限性」など)が未解決問題で、うまくいっているのは「 an + b 型素数の無限性(算術級数定理)」ぐらいです。

もっと違ったアプローチが必要というわけですね。

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リーマン面の定義

最近、寺杣先生の「リーマン面の理論」という本を勉強しています。

リーマン面の理論

リーマン面の理論

  • 作者:寺杣友秀
  • 発売日: 2019/11/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


「リーマン面」についての勉強を始めたのは、「幾何が専門の人の話についていけるようになりたい」という動機からでした。そんなことを考えているときに上記の本が発売されたので、ちょうどよいタイミングだなと思いました。また、それとは別に「リーマン面」と「数論的な現象」の間に接点があるそうで、これについても理解したいなという思いがあります。

一方、tsujimotterはこれまで位相空間論や多様体の勉強をほとんどしてこなかったので、理解するのにだいぶ苦労しています。進捗は遅そうですが、少しずつでも読み進めようと思っています。


第一段階として、自分自身の理解の確認のためにリーマン面の具体例を構成していきたいと思っています。今回はその前段として「リーマン面の定義」を丁寧にまとめていきたいと思います。

なお、今回の記事では「わかりやすく伝える」という意図はあまりなく、ただただ実直に定義を理解しようという考えで書いています。その点はご理解ください。

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#2020になる数式 (マニアック編):判別式-2020の2次形式

2020年最初に作ったアプリが、おかげさまでたくさんの方にみてもらえているようです。


上のアプリを公開後も、tsujimotterは「2020に関する数学トピック」についてあれこれ考えていました。今回紹介したいのは「2次形式で表せる素数」のお話です。上の話と比べると、かなり前提知識が必要な話なのですが、よろしければお付き合いください。

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#2020になる数式 について考えてみた

明けましておめでとうございます!

いよいよ 2020年 ですね。2020年といえば、だいぶ前から話題に上がっていたオリンピックイヤーがいよいよやってきたという感じですが、今年はどんな一年になるのでしょうか。良い年にしていきたいですね。

2020年になったということで、毎年恒例の「年号の数についての数式」を考えたいと思います。題して

「#2020になる数式」

です。

Twitterで #2020になる数式 のハッシュタグを検索してみると、いろいろな数式が出てきますので、よろしければご覧になってみてください。

#2020になる数式 hashtag on Twitter

今日はtsujimotterが見つけた数式の紹介と、その数式を可視化するWebアプリを作ったのでご紹介したいと思います。

過去の年号の数式については、他の方がまとめてくれたものがありました。よろしければこちらもどうぞ:
2016になる数式まとめ - Togetter
2017を数学的に遊びたおすまとめ - Togetter
2019年新春数学・パズル問題、2019にまつわる性質まとめ - Togetter

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