今回は「指数層系列」シリーズの最終回の記事です。これまでシリーズを通して
という層の短完全列について議論してきました。
前回の記事の最後では、指数層系列に対して任意の開集合 についての切断をとると、必ずしも完全列がそのまま成り立つとは限らないこと( が必ずしも全射にはならない)を説明しました。次のように、完全列としては一番右端が 0 になるとは限りません:
が全射になるのは、開集合 がどのような条件のときか? これが今回考えたい問題です。
実は、この問題を考えるにあたって 「層係数コホモロジー」 という道具が非常に有効です。
そんなわけで、今回の記事では層係数コホモロジーについて、その定義から使い方までをまとめたいと思います。
シリーズ記事の一環として書いていますが、一般的な層係数コホモロジーの話を展開しますので、指数層系列の記事を読んでいる必要はありません。単純に層係数コホモロジーについて知りたい、という人もぜひ読んでください。
ただし、層の定義についての知識は必要かと思いますので、以下の記事の内容を前提としたいと思います。
tsujimotter.hatenablog.com
また、前回までの記事は、わかりやすさのため「 上の層」を考えていました。今回は、一般に「 を位相空間」として、その上の層を考えたいと思います。
途中で出てくるコホモロジー長完全列のところでは「 をパラコンパクトな位相空間」に限定していますが、またそのときに改めて注意します。
今回の記事はtsujimotterがまさに勉強中の「理解の最前線」を書いている記事となっています。内容もできる限り正しい記述になるよう努めたつもりですが、私の理解不足により誤りを含んでいる可能性があります。
勉強する際は、私の記述をうのみにせず参考文献をご参照いただければと思います。参考文献は一番下に書いています。
それでは少し長いですが、お付き合いください。
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