tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

Wieferich 商を計算する

こんばんは。今日は簡単な記事を書きたいと思います。

経緯

インテジャーズさんの以下の記事:
integers.hatenablog.com

でこんなことが書かれていました。

 1093 3511 が実際にWieferich素数であることを証明しようと思うとき、愚直にコンピュータで  2^{p−1}−1 を計算して実際に  p^2 で割り切れることを確認するという方法があるでしょう。

誰かに  \frac{2^{1092}−1}{1093^2} および \frac{2^{3510}−1}{3511^2}
の数値を教えていただいて、ここに掲載したいという願望がありますが、とりあえずコンピュータの知識がない私には計算できません。

「愚直にコンピュータの計算」

これはやるしかないですね。笑

ということで,2つの Wieferich 素数に対応する Wieferich 商

 \displaystyle \frac{2^{1092}−1}{1093^2}

 \displaystyle \frac{2^{3510}−1}{3511^2}

を計算したいと思います。

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8 と 9 の黄金ペア:カタラン予想

本日は 8 月 9 日ということで,8 と 9 のペアで作られる数学のお話をしましょう。

 8 という数は  2^3 で3乗数, 9 という数は  3^2 だから平方数ですね。これらの数の差は  1 なので

 3^2 - 2^3 = 1

が成り立ちます。すなわち,「べき乗数 ひく べき乗数」が1となっているわけです。

ここで「このような数の組は,8 と 9 のほかにもあるか?」という疑問が湧いてきますが,

そんな数の組は存在しない

と主張するのが,今日紹介する「カタラン予想」です。つまり, 8 9 の組は,数ある自然数の組の中でも特別な,いわば「黄金ペア」だというわけです。

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接吻数問題 と 24 次元リーチ格子

「接吻数問題」という数学の問題があります.なんとも変な名前の問題ですが今日はそのお話です.

実は今回のテーマは,私が1年半前に書いた 691 の記事 に深く関連しています.私のブログでしばしば取り上げている「ラマヌジャンのデルタ」や「保型形式」といったトピックにも深く関連しています.

上記をブログで書いた当初は,今回のテーマ(特に「リーチ格子」について)はまったく理解していませんでした.調べても調べても私が理解できる解説に行き当たらず,諦めて断念してしまっていたのです.

ところがついさっき,ふと調べ直してみたところ,当時どうしても理解できなかった概念が,なんともすっきり理解できてしまいました.これまでの蓄積した知識が数珠つなぎ的につながったような不思議な感覚でした.

「これはブログにまとめるしかない!」と思い立って,興奮を抑えつつ(あまり抑えきれていませんが)この記事を書いています.


小難しい話も入ってきますが,とてもわくわくするトピックだと思いますので,ぜひご覧ください!

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巷で話題のカーマイケル数・カーマイケルの定理について

最近こんなニュースが話題になっているようです。中国人の一般男性が「カーマイケル数」を導出する方法を再発見した、とのこと。
news.livedoor.com

一部引用すると

河南省の青年・余建春さんは短大卒でここ数年は、アルバイトで生計を立てている。そんな余さんは数学が大好きで、「カーマイケル数」を導く新たな計算法を発見したという。米ミズーリ大学の数学者は、「この計算方法で、正しいカーマイケル数が導けることを確認できれば、大発見」としている。中青在線が報じた。

とのことです。

CNNの記事もみつけました。どうやらこっちが元ネタのようです。
edition.cnn.com


実は、これらのニュースで登場する「カーマイケル数」が、前回投稿したばかりの「フェルマーの小定理」と非常に縁が深いのです。これはよいタイミングだなと思いましたので、今回はカーマイケル数についてご紹介したいと思います。

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群論におけるフェルマーの小定理

ご無沙汰しております。約3ヶ月ぶりの投稿です。

4月より職場がかわったのですが、仕事に慣れるまでに期間がかかってしまい、ブログの更新が滞っておりました。その間も日曜数学は楽しく続けておりましたので、少しずつブログの方でも公開していけたらと思います。


久しぶりの記事のテーマは「フェルマーの小定理」です。フェルマーの小定理と言っても、よく知られるような数論的なものではなく、群論的 なフェルマーの小定理の類似物です。実は、フェルマーの小定理は群論的にも考えることができるんです。しかも、その証明の方法が巧妙で面白い。


今回の記事は、群論をちょっとだけかじったことがある、少し前の私のような人を想定した記事です。知らない人にはちょっと難しいかもしれませんが、雰囲気だけ追ってもらって、数学的な発想の面白さを共感してもらえたら嬉しいです。


なお今回の記事では、テーマがフェルマーの小定理ということもあって、素数が多々登場します。 p という記号はすべて、素数を表すためだけに用いたいと思います。

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自由研究:「tsujimotter の 29 予想」が解決しました!

以前、 29 という素数に関する以下の記事を書いたのを覚えていますか。
tsujimotter.hatenablog.com


この問題について、twitter で以下のような投稿をしたのです。

すると、nishimura さんという方からお返事が。

なんと代数曲線の解の個数に問題を帰着して、解ける可能性があるというのです!!

家に帰ってから、テンションが上がるのを抑えて(抑えきれていないけど)計算してみると、たしかに証明できました!!!
うおおお!!!

というわけで、興奮しながらこの記事を書いています!

証明のヒント(というかほぼ答え)を教えてくださった nishimura さんに感謝です!本当にありがとうございます!

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「フェルマーゲーム」の拡張性について

腹痛のためベッドの中で引きこもっていたら、4n+1型, 4n+3型の素数をそれぞれ列挙し合う新しいゲーム「フェルマーゲーム」が生まれました!腹痛もたまには良いことしますね。笑

ゲームのルールは、にせいさんがブログでまとめてくれました。

左側の正十二面体を持っている人が私です(念のため)

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