注意
この記事は数字が大好きなだけの数学素人 tsujimotter の自由研究です。内容の正確性は一切保証しません。
前回の記事の続きです。企画倒れにならなくてよかった・・・。
疑問の1つに答えていきましょう。
1. 左辺を変化させると本当にラマヌジャン定数が出てくるのか
この疑問の解決は比較的簡単です。
まず、復習がてら左辺とは、
この の類数が 1 のときに限り、この値が三乗数になるのでした。
ちなみにこの結果は、Hermite が 1859年に示唆していたそうです。
Hermite は あのエルミート行列のエルミートです。やっぱり数学の天才っていろんなところに顔を出すのですね。
写真:Charles Hermite (1822-1901)
これらの知見を、整数を として、次のように表現しましょう。
マイナスを付けた理由はあとでわかります。
そして、j-関数の q-展開 の定義は次のようなものでした。
前回説明しませんでしたが、右辺の変数 は 関数の引数である の関数で、次のように定義されます。
ここで、 は指数関数 のことです。
さぁ、それでは を代入していきましょう。
まずは、 から。
より
オイラーの公式 より
よって、
これを の定義における第1項目に代入すると、
これが整数の三乗になるから
両辺移項して、
(このために、わざわざマイナスをつけておいたわけです。)
さぁ、ついにこれで、ラマヌジャンの定数の公式ができました!
この形は、見覚えありますね!
そう、これです。
なるほど、右辺第三項の和の部分が、十分小さいために、「三乗数と744の和」という整数に近似されるわけですね。
これで「ほとんど整数」の理由がわかりました。
このことを表すために、次のように変形しましょう。すなわち、
たしかに、これでどっからどうみても「ほとんど整数」ですね。
一応代入してみましょうか。
のとき、 だそうなので、それを上の近似式に代入すると、
これは左辺の数値計算結果は、
ですから、どんぴしゃで一致していますね!
誤差をとってみると、
最初の疑問は、「ラマヌジャンの定数は、なぜほとんど整数なのか」というものでした。
これが今では、「虚二次体 の類数が 1 のとき、 j-関数の引数に を代入すると、整数の三乗になるのはなぜか」という具体的な疑問に落ちたわけです。
この疑問のほかにも、「j-関数の値は、どのような形の三乗数となるのか」という疑問が残っています。
いよいよ手ごわそうな感じになってきましたね。
今回はこの辺で。