tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

「隣り合う立方数の差」はどのような素数で割り切れるか?

今日は久しぶりに数学の話題を。

もりしーさん( @9973_prm )の以下のツイートの話が面白かったので、今日はこの問題について考えてみたいと思います。

なお、もりしーさんは次のようにもツイートしています:


つまり、もりしーさんが考えていたのは 「隣り合う立方数(3乗数のこと)の差は素数になるだろうか?」 という問題ですね。



たとえば、最初の4つのケースを考えると

 2^3 - 1^3 = 8 - 1 = {\bf 7}(素数)
 3^3 - 2^3 = 27 - 8 = {\bf 19}(素数)
 4^3 - 3^3 = 64 - 27 = {\bf 37}(素数)
 5^3 - 4^3 = 125 - 64 = {\bf 61}(素数)

となって、かなり素数が続いています! 面白いです!


もちろん、もりしーさんがツイートしているように、すべての隣り合う立方数の差が素数になるわけではありません。たとえば  6^3 - 5^3

 6^3 - 5^3 = 216 - 125 = 91 = 7 \times 13

となり、素数ではありません。



今回は、この問題をさらに掘り下げて、次のような問題を考えてみましょう。

隣り合う立方数の差は、どのような素数で割り切れるか?


実は、隣り合う立方数の差は 2・3・5では割り切れない ことが示せます。(あとで示します。)

この事実により 割り切れる素数が最低でも  7 以上 となりますので、これにより「立方数の差が小さいうちは素数になりやすかった」と分析することができます。

この結果はさらに一般化することもできます。以下で考えていきましょう。


なお「隣り合う立方数の差」と何度も言っていますが、少し冗長です。「隣り合う立方数の差」は、ある自然数  n を用いて  (n+1)^3 - n^3 と表すことができます。

つまり、次のように問題を言い換えることができます:

 p を素数とする。「ある自然数  n が存在して  (n+1)^3 - n^3 p で割り切れる」が成立する  p の条件は?


それでは、考えていきましょう!


2では割り切れないこと

 (n+1)^3 - n^3 が2で割り切れない」は簡単に示すことができます。

 n n+1 は連続する2数なので、偶数・奇数または奇数・偶数となります。3乗しても偶奇は変わらないことから

 (n+1)^3-n^3 (\text{偶数}) - (\text{奇数}) または  (\text{奇数}) - (\text{偶数})

となり、いずれの場合も奇数となります。

したがって、2では割り切れません。


3では割り切れないこと

続いて「 (n+1)^3 - n^3 が3で割り切れない」を示します。

 (n+1)^3 を展開することで、次のように変形できます:

 \displaystyle \begin{align} (n+1)^3 - n^3 &= n^3 + 3n^2 + 3n + 1 - n^3 \\
&= 3n^2 + 3n + 1 \\ 
&= 3n(n + 1) + 1 \end{align}

 3n(n+1) は3で割り切れますので、それに1を足した数は3で割り切れません。したがって、 (n+1)^3 - n^3 は3で割り切れません。


今の結果から、 (n+1)^3 - n^3 は必ず「3で割って1あまる数」になることも注目ポイントです。


なお

 (n+1)^3 - n^3 = 3n(n+1) + 1

という式変形から、2で割り切れないこともただちにわかります。なぜならば、 n(n+1) は連続する2数の積なので、どちらか一方は2で割り切れます。したがって、 (\text{2の倍数})+1 という形の数になるので、2で割り切れないというわけですね。


5では割り切れないこと (1)

以下では「 (n+1)^3 - n^3 が5で割り切れない」を示します。

合同式を用いて

 (n+1)^3 - n^3 \equiv 0 \pmod{5}

が解を持たないことを示せば良いですね。


これに対しては、直接的に  n に対して

 n \equiv 0, 1, 2, 3, 4 \pmod{5}

を代入して、解がないことを示すのが一番てっとり早そうです。


実際、 n^3 n にそれぞれ代入すると

 \begin{align} 0^3 &\equiv 0 \pmod{5} \\
 1^3 &\equiv 1 \pmod{5} \\
 2^3 &= 8 \equiv 3 \pmod{5} \\
 3^3 &= 27 \equiv 2 \pmod{5} \\
 4^3 &= 64 \equiv 4 \pmod{5} \end{align}

となります。

よって、 (n+1)^3 - n^3

 \begin{align} 1^3 - 0^3 &\equiv 1 - 0 \equiv 1 \pmod{5} \\
2^3 - 1^3 &\equiv 3 - 1 \equiv 2 \pmod{5} \\
3^3 - 2^3 &\equiv 2 - 3 \equiv -1 \equiv 4 \pmod{5} \\
4^3 - 3^3 &\equiv 4 - 2 \equiv 2 \pmod{5} \\
0^3 - 4^3 &\equiv 0 - 4 \equiv -4 \equiv 1 \pmod{5} \end{align}

となり、いずれのケースも  0 に合同ではないことがわかります。


以上により、 (n+1)^3 - n^3 5 で割り切れないことが示されました。


ここまでの議論で、

すべての自然数  n について  (n+1)^3 - n^3 2, 3, 5 のいずれでも割り切れない

が証明されたことになります!


5では割り切れないこと (2)

上の方法で「 (n+1)^3 - n^3 が5で割り切れない」が示せても、なぜそうなるのかはよく分かりません。もう少し理屈が分かるような証明を考えてみたいと思います。


 (n+1)^3 - n^3 を変形すると

 (n+1)^3 - n^3 = 3n^2 + 3n + 1

と変形できましたが、この右辺が  n についての2次式 になっていることに注目しましょう。


2次式ということは 平方完成 をしたくなります。今は \bmod{5} で考えているので、有限体  \mathbb{F}_5 上で平方完成することに注意します。

 \displaystyle \begin{align} (n+1)^3 - n^3 &= 3n^2 + 3n + 1 \\
&= 3(n^2 + n + \frac{1}{4} - \frac{1}{4}) + 1 \\
&= 3\left(n + \frac{1}{2}\right)^2 - \frac{3}{4} + 1 \\
&= 3\left(n + \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{1}{4} \end{align}

計算途中に  \frac{1}{4} なる数が現れましたが、これは  \mathbb{F}_5 における  4 の逆元ということです。

 \mathbb{F}_5 において  4x = 1 を満たす  x \frac{1}{4} と呼んでいます。

 \bmod{5} において  4x \equiv 1 \pmod{5} を満たす  x と言い換えてもよいです。


このことから

 (n+1)^3 - n^3 5 で割り切れる自然数  n は存在しない(★)
 \mathbb{F}_5 において  3(n + \frac{1}{2})^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ自然数  n は存在しない(★')

は同値であることがわかります。


条件(★')において  X = n + \frac{1}{2} とおけば、同値な条件(★'')が得られます。

 \mathbb{F}_5 において  3X^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★'')

(★'')の式の両辺に3の逆元を掛けることにより、さらに同値な条件(★''')が得られます。

 \mathbb{F}_5 において  X^2 + \frac{1}{12} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★''')



以下、同値変形を繰り返していきましょう。

 \mathbb{F}_5 における  12 の逆元は  3 です。実際

 12 \times 3 = 36 = 1

が成り立ちますね。したがって、 12^{-1} = 3 とすることにより、同値な条件(★'''')が得られます。

 \mathbb{F}_5 において  X^2 + 3 = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★'''')

これは結局、(★''''')のように言い換えられます。

 -3 は法  5 における平方非剰余(★''''')



ここまで来ると条件(★''''')を確認するのは容易です。実際、 X^2 X \equiv 0, 1, 2, 3, 4 \pmod{5} を代入すると

 0^2 \equiv 0 \pmod{5}
 1^2 \equiv 1 \pmod{5}
 2^2 \equiv 4 \pmod{5}
 3^2 \equiv 9 \equiv 4 \pmod{5}
 4^2 \equiv 16 \equiv 1 \pmod{5}

となります。よって、 X^2 \equiv -3 \equiv 2 \pmod{5} となるような  X は存在しません。


条件(★''''')が示されたことにより、同値な条件(★)〜(★''''')がすべて成立することが分かりました。

  •  (n+1)^3 - n^3 5 で割り切れる自然数  n は存在しない(★)
  •  \mathbb{F}_5 において  3(n + \frac{1}{2})^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ自然数  n は存在しない(★')
  •  \mathbb{F}_5 において  3X^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★'')
  •  \mathbb{F}_5 において  X^2 + \frac{1}{12} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★''')
  •  \mathbb{F}_5 において  X^2 + 3 = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_5 は存在しない(★'''')
  •  -3 は法  5 における平方非剰余(★''''')


遡って  (n+1)^3 - n^3 5 で割り切れる自然数  n は存在しないことが示されました。これならば、理屈が納得できますね!


(n+1)3 – n3 を割り切れない素数 p の条件は?

こうなってくると一般の素数  p について考えたくなります。「 (n+1)^3 - n^3 5 では割り切れないこと」を2通りの方法で示しましたが、特に2つ目の方法を一般化させることができます。


 p 2, 3 ではない素数とします。これは  \mathbb{F}_p における  12 の逆元の存在を使うためです。

先ほどとまったく同様の議論が成り立ち、以下が同値となります。

 p \neq 2, 3 を素数とすると、次はすべて同値:

  •  (n+1)^3 - n^3 p で割り切れる自然数  n は存在しない(★)
  •  \mathbb{F}_p において  3(n + \frac{1}{2})^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ自然数  n は存在しない(★')
  •  \mathbb{F}_p において  3X^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_p は存在しない(★'')
  •  \mathbb{F}_p において  X^2 + \frac{1}{12} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_p は存在しない(★''')


(★''')の条件は

 \mathbb{F}_p において  X^2 = -12^{-1} が成り立つ  X \in \mathbb{F}_p は存在しない

ということですから、 -12^{-1} が平方剰余ではないことと同値ですね。

ルジャンドル記号を用いると

 \displaystyle \left(\frac{-12^{-1}}{p}\right) = -1(★'''')

ということになります。


ここで、ルジャンドル記号の準同型性より

 \displaystyle \left(\frac{-12^{-1}}{p}\right) =  \left(\frac{-1\cdot 3^{-1} \cdot (2^{-1})^2}{p}\right) =  \left(\frac{-1}{p}\right) \left(\frac{3^{-1}}{p}\right) \left(\frac{2^{-1}}{p}\right)^2 =  \left(\frac{-1}{p}\right) \left(\frac{3^{-1}}{p}\right)

が成り立ちます。

また

 \displaystyle \left(\frac{a^{-1}}{p}\right) = \left(\frac{a}{p}\right)

より

 \displaystyle \left(\frac{-12^{-1}}{p}\right) =  \left(\frac{-3}{p}\right)

が成立します。


平方剰余の相互法則より

 \displaystyle \left(\frac{-3}{p}\right) = \left(\frac{p}{3}\right)

が成り立ちます。

結局

 \displaystyle \left(\frac{p}{3}\right) = -1(★''''')

が(★)〜(★'''')と同値となるわけですね。

また、(★''''')は \bmod{3} p が平方非剰余ということですから

 \displaystyle p \equiv 2 \pmod{3}(★'''''')

ということになります。


したがって、以下が同値となります。

 p \neq 2, 3 を素数とすると、次はすべて同値:

  •  (n+1)^3 - n^3 p で割り切れる自然数  n は存在しない(★)
  •  \mathbb{F}_p において  3(n + \frac{1}{2})^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ自然数  n は存在しない(★')
  •  \mathbb{F}_p において  3X^2 + \frac{1}{4} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_p は存在しない(★'')
  •  \mathbb{F}_p において  X^2 + \frac{1}{12} = 0 が成り立つ  X \in \mathbb{F}_p は存在しない(★''')
  •  \displaystyle \left(\frac{-12^{-1}}{p}\right) = -1(★'''')
  •  \displaystyle \left(\frac{p}{3}\right) = -1(★''''')
  •  \displaystyle p \equiv 2 \pmod{3}(★'''''')


結局、(★)と同値な条件は  p \equiv 2 \pmod{3} ということになりました。ずいぶんとシンプルになりましたね。


2と3が  (n+1)^3 - n^3 を割り切らないことも上で示しましたので、結局以下が示されたことになります:

定理
 p を任意の素数とする。このとき、次の2つの条件は同値:

  • ある自然数  n が存在して  (n+1)^3 - n^3 p で割り切れる
  •  p \equiv 1 \pmod{3}


そんなわけで、隣り合う立方数の差  (n+1)^3 - n^3 を計算すると、その素因数には「 3 で割って  1 あまる素数」が現れ、さらにすべての「 3 で割って  1 あまる素数」が現れるということが言えたわけですね。


実験

参考までに、 n = 1, \ldots, 100 の結果を載せます。すべての素因数が「 3 で割って  1 あまる素数」になっていることが確認できます。面白いですね!
(これを無限に続ければ、すべての「 3 で割って  1 あまる素数」が登場します!)

 \begin{align} 2^3 - 1^3 &= 7 \\
3^3 - 2^3 &= 19 \\
4^3 - 3^3 &= 37 \\
5^3 - 4^3 &= 61 \\
6^3 - 5^3 &= 7 \times 13 \\
7^3 - 6^3 &= 127 \\
8^3 - 7^3 &= 13^2 \\
9^3 - 8^3 &= 7 \times 31 \\
10^3 - 9^3 &= 271 \\
11^3 - 10^3 &= 331 \\
12^3 - 11^3 &= 397 \\
13^3 - 12^3 &= 7 \times 67 \\
14^3 - 13^3 &= 547 \\
15^3 - 14^3 &= 631 \\
16^3 - 15^3 &= 7 \times 103 \\
17^3 - 16^3 &= 19 \times 43 \\
18^3 - 17^3 &= 919 \\
19^3 - 18^3 &= 13 \times 79 \\
20^3 - 19^3 &= 7 \times 163 \\
21^3 - 20^3 &= 13 \times 97 \\
22^3 - 21^3 &= 19 \times 73 \\
23^3 - 22^3 &= 7^2 \times 31 \\
24^3 - 23^3 &= 1657 \\
25^3 - 24^3 &= 1801 \\
26^3 - 25^3 &= 1951 \\
27^3 - 26^3 &= 7^2 \times 43 \\
28^3 - 27^3 &= 2269 \\
29^3 - 28^3 &= 2437 \\
30^3 - 29^3 &= 7 \times 373 \\
31^3 - 30^3 &= 2791 \\
32^3 - 31^3 &= 13 \times 229 \\
33^3 - 32^3 &= 3169 \\
34^3 - 33^3 &= 7 \times 13 \times 37 \\
35^3 - 34^3 &= 3571 \\
36^3 - 35^3 &= 19 \times 199 \\
37^3 - 36^3 &= 7 \times 571 \\
38^3 - 37^3 &= 4219 \\
39^3 - 38^3 &= 4447 \\
40^3 - 39^3 &= 31 \times 151 \\
41^3 - 40^3 &= 7 \times 19 \times 37 \\
42^3 - 41^3 &= 5167 \\
43^3 - 42^3 &= 5419 \\
44^3 - 43^3 &= 7 \times 811 \\
45^3 - 44^3 &= 13 \times 457 \\
46^3 - 45^3 &= 6211 \\
47^3 - 46^3 &= 13 \times 499 \\
48^3 - 47^3 &= 7 \times 967 \\
49^3 - 48^3 &= 7057 \\
50^3 - 49^3 &= 7351 \\
51^3 - 50^3 &= 7 \times 1093 \\
52^3 - 51^3 &= 73 \times 109 \\
53^3 - 52^3 &= 8269 \\
54^3 - 53^3 &= 31 \times 277 \\
55^3 - 54^3 &= 7 \times 19 \times 67 \\
56^3 - 55^3 &= 9241 \\
57^3 - 56^3 &= 61 \times 157 \\
58^3 - 57^3 &= 7 \times 13 \times 109 \\
59^3 - 58^3 &= 10267 \\
60^3 - 59^3 &= 13 \times 19 \times 43 \\
61^3 - 60^3 &= 79 \times 139 \\
62^3 - 61^3 &= 7 \times 1621 \\
63^3 - 62^3 &= 11719 \\
64^3 - 63^3 &= 12097 \\
65^3 - 64^3 &= 7 \times 1783 \\
66^3 - 65^3 &= 61 \times 211 \\
67^3 - 66^3 &= 13267 \\
68^3 - 67^3 &= 13669 \\
69^3 - 68^3 &= 7 \times 2011 \\
70^3 - 69^3 &= 43 \times 337 \\
71^3 - 70^3 &= 13 \times 31 \times 37 \\
72^3 - 71^3 &= 7^2 \times 313 \\
73^3 - 72^3 &= 13 \times 1213 \\
74^3 - 73^3 &= 19 \times 853 \\
75^3 - 74^3 &= 16651 \\
76^3 - 75^3 &= 7^2 \times 349 \\
77^3 - 76^3 &= 97 \times 181 \\
78^3 - 77^3 &= 37 \times 487 \\
79^3 - 78^3 &= 7 \times 19 \times 139 \\
80^3 - 79^3 &= 67 \times 283 \\
81^3 - 80^3 &= 19441 \\
82^3 - 81^3 &= 19927 \\
83^3 - 82^3 &= 7 \times 2917 \\
84^3 - 83^3 &= 13 \times 1609 \\
85^3 - 84^3 &= 31 \times 691 \\
86^3 - 85^3 &= 7 \times 13 \times 241 \\
87^3 - 86^3 &= 22447 \\
88^3 - 87^3 &= 103 \times 223 \\
89^3 - 88^3 &= 23497 \\
90^3 - 89^3 &= 7 \times 3433 \\
91^3 - 90^3 &= 24571 \\
92^3 - 91^3 &= 25117 \\
93^3 - 92^3 &= 7 \times 19 \times 193 \\
94^3 - 93^3 &= 26227 \\
95^3 - 94^3 &= 73 \times 367 \\
96^3 - 95^3 &= 27361 \\
97^3 - 96^3 &= 7 \times 13 \times 307 \\
98^3 - 97^3 &= 19^2 \times 79 \\
99^3 - 98^3 &= 13 \times 2239 \\
100^3 - 99^3 &= 7 \times 4243 \\
101^3 - 100^3 &= 157 \times 193 \end{align}


追記:二次方程式の解の公式

記事の公開後に、二次方程式の解の公式を有限体  \mathbb{F}_p 上で考えても、同じ結果が得られることに気づきました。
(実は上とほぼ同じことを単に言い換えているだけなのですが、言い換えることで「見え方が変わる」かなと思いますので紹介します。)


一般に、 n を自然数として  f(n) = an^2 + bn + c を割り切る素数  p について考察します。

上でやったように、 f(n) \mathbb{F}_p 上で平方完成します。平方完成を実行する都合上、 p \neq 2 かつ  p \nmid a であると仮定 します。

 \begin{align} 4af(n) &= 4a^2n^2 + 4abn + 4ac \\
&= (4a^2n^2 +4abn + b^2) + 4ac - b^2  \\
&= (2ab + b)^2 - (b^2 - 4ac) \end{align}

 p \mid f(n) より、 \mathbb{F}_p 上で  f(n) = 0。したがって

 (2an + b)^2 = b^2 - 4ac

が得られます。

ここで、右辺を  D = b^2 - 4ac とおくと

 (2an + b)^2 = D

と表せます。

仮定より  2a \neq 0 \; \text{in}\; \mathbb{F}_p であり、左辺は平方数なので、これが解を持つためには

 D が法  p の平方剰余 または ②  D = 0  \; \text{in}\; \mathbb{F}_p

であることが必要十分条件です。

このような性質があることから、 D判別式と呼びます。


①または②が成り立つとして、 X^2 = D の根を  \pm \sqrt{D} とおくと

 2an + b = \pm \sqrt{D}

となり、仮定より  2a \neq 0 \; \text{in}\; \mathbb{F}_p なので

 \displaystyle n = \frac{-b \pm \sqrt{D}}{2a}

が得られます。これが二次方程式の解の公式ですね。

こんな風に一般の体においても、標数が  2 a を割らない体においては二次方程式の解の公式が得られるのが面白いですね。


さて、今回の問題のケースでは

 f(n) = 3n^2 + 3n + 1

ですので、 a = 3, \; b = 3, \; c = 1 となります。判別式  D

 D = b^2 - 4ac = 3^2 - 4\cdot 3 \cdot 1 = -3

となり、 D = -3 が平方剰余かどうかで解の有無が変わるわけですね。


すなわち「(n+1)3 – n3 を割り切れない素数 p の条件は?」のセクションで出てきた  -3 は、方程式  3n^2 + 3n + 1 = 0 の判別式だったというわけです。


こんな風に

 (\text{2次多項式}) \equiv 0 \pmod{p}

の形に問題を帰着できれば、我々の勝ち。すなわち(標数さえ気をつければ)直ちに解が得られてしまうわけです。面白いですね!


追記2:さらなる発展

ありがたいことに今回の記事をたくさんの人に読んでいただきまして、いくつかコメントもいただきました。

新しい視点を提供いただいたツイートを2件ご紹介させていただきます。

なるほど、そんな視点が・・・。まったく思いつきませんでした!

なんと、サイダックによる素数の無限性証明 のような方法が、「 3 で割って  1 あまる素数」の無限性にも使えるのですね!