ここに二つの2次無理数があります。
は、どちらも判別式が となる2次無理数となっています。
が2次無理数であるとは、 が既約な2次方程式
の解であるということです。このとき、 を の判別式と言います。判別式が負であるような2次無理数を虚2次無理数と言います。今回は虚2次無理数を扱います。
虚2次無理数 を上半平面 で考えることにして、 には の元による一次分数変換を考えることができます。
このとき、 も虚2次無理数となり、判別式も となり保存されます。このように による一次分数変換で移り合うとき、 と は対等であるといいます。
なお、上の はどちらも対等ではないことに注意します。
ちなみに、判別式 である2次無理数かつ対等ではないものは、 の基本領域(以下の図)の中には "2個" しか存在しません。この "2個" という数は、判別式が である虚2次体の類数と一致しますが、これは偶然ではありません。
さて、 に対して、楕円モジュラー関数 の値を計算します。楕円モジュラー関数は、以下の -展開によって計算できます。
ここで、 です。
計算すると、
となります。
ここで、両者の和と積をとると
実はこれらの値は整数値をとります。このことを知っていると
となることがわかり、和と積がわかっているので を根に持つような整係数多項式を考えることができます。
これを判別式 の類多項式(class polynomial)といいます。つまり、虚2次無理数の最小多項式ということですね。
この方程式を解くことで、 の値を次のように厳密に求めることができます。
面白いですね。
ここからが本題です
2次形式 で表せる素数の法則 について考えます。
このお話は、これまでもtsujimotterのノートブックで扱ってきました。
上の2つの記事で与えたように、例外的な有限個の素数()を除けば
という法則が成立するのでした。
しかし、この法則を与えるのはそう簡単ではありません。いつものように平方剰余による条件
を考えると、これは条件 を与えますが、この条件は で表せる素数の必要条件しか与えません。十分条件を与えるためには、より深い考察が必要です。
ここで、上記 に加えて、判別式 の類多項式 を用いた以下の条件を考えましょう。
なんと、驚くべきことに、 かつ という条件が とかけるための 必要十分条件 となっています。
実験してみましょう。 で考えます。
解を持つ | - | ||
解を持つ | - | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持つ | ー | ||
解を持つ | |||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持つ | |||
解を持つ | ー | ||
解を持つ | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持つ | |||
解を持つ | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持たない | ー | ||
解を持つ | ー | ||
解を持つ | |||
解を持たない | ー |
たしかに、 かつ ときに限り、 とかけることがわかりますね!法則は成り立っています!!
今日は興味深い現象があるということだけを紹介して終わりにします。
背景にある仕組みについてはいつか解説したいと思っていますが、今の私にはまだ解説するだけの力はありません。
追記(2018.06.20)
ちなみに、条件 は の条件になっていませんが、そのような形の条件に同値変形することも出来ます。
を平方完成させると
となります。よって とおくと
となるので、
と同値な条件になります。また
より平方因子を除くと
となります。平方剰余の相互法則 より
と同値です。結局
であることがわかりました。これと条件 を組み合わせればたしかに が得られますね。