tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

群論におけるフェルマーの小定理

ご無沙汰しております。約3ヶ月ぶりの投稿です。

4月より職場がかわったのですが、仕事に慣れるまでに期間がかかってしまい、ブログの更新が滞っておりました。その間も日曜数学は楽しく続けておりましたので、少しずつブログの方でも公開していけたらと思います。


久しぶりの記事のテーマは「フェルマーの小定理」です。フェルマーの小定理と言っても、よく知られるような数論的なものではなく、群論的 なフェルマーの小定理の類似物です。実は、フェルマーの小定理は群論的にも考えることができるんです。しかも、その証明の方法が巧妙で面白い。


今回の記事は、群論をちょっとだけかじったことがある、少し前の私のような人を想定した記事です。知らない人にはちょっと難しいかもしれませんが、雰囲気だけ追ってもらって、数学的な発想の面白さを共感してもらえたら嬉しいです。


なお今回の記事では、テーマがフェルマーの小定理ということもあって、素数が多々登場します。 p という記号はすべて、素数を表すためだけに用いたいと思います。

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自由研究:「tsujimotter の 29 予想」が解決しました!

以前、 29 という素数に関する以下の記事を書いたのを覚えていますか。
tsujimotter.hatenablog.com


この問題について、twitter で以下のような投稿をしたのです。

すると、nishimura さんという方からお返事が。

なんと代数曲線の解の個数に問題を帰着して、解ける可能性があるというのです!!

家に帰ってから、テンションが上がるのを抑えて(抑えきれていないけど)計算してみると、たしかに証明できました!!!
うおおお!!!

というわけで、興奮しながらこの記事を書いています!

証明のヒント(というかほぼ答え)を教えてくださった nishimura さんに感謝です!本当にありがとうございます!

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「フェルマーゲーム」の拡張性について

腹痛のためベッドの中で引きこもっていたら、4n+1型, 4n+3型の素数をそれぞれ列挙し合う新しいゲーム「フェルマーゲーム」が生まれました!腹痛もたまには良いことしますね。笑

ゲームのルールは、にせいさんがブログでまとめてくれました。

左側の正十二面体を持っている人が私です(念のため)

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素イデアル分解法則を考える(ヒルベルトの理論とフロベニウス自己同型)

今日は私がまさに今現在勉強している「素イデアルの分解法則」についてお話ししたいと思います。

素イデアルの分解については,これまでの記事でも「フェルマーの二平方定理」やその関連する法則について触れてきましたので,ずっと興味はあったのです。しかしながら,個別ケースの調査にとどまっており,一般論にはいたっていませんでした。

一般的には「類体論」とよばれる理論があって,その系として上記の話は示されるそうです。「類体論までは踏み込まずとも,その手前ぐらい(具体的には「ヒルベルトの理論」くらいまで)は理解したい」そう思って,今まで斜め読みしかしていなかった専門書に本腰入れて取り組むことに決めました。*1

ようやくその正体がわかってきて,先日は「フロベニウス自己同型」の素晴らしさに感動しました。今日は,その感動を文章として残すべく(そして,自分の理解度を試すべく)記事をかきたいと思います。

「ガロア理論」や「イデアル論」を前提とした議論が続くので,これまでの記事と比べてレベルはぐーんと跳ね上がると思います。そのため,ある程度勉強したことがある人向けの記事となってしまいますが,ご了承ください。

でも,理解できたら面白い話だと思います!
(そのうち,ここで話した内容の前提となる知識について,もう少し易しくまとめたいですね。)

*1:正直なところ,不勉強ゆえに「類体論」や「ヒルベルトの理論」が差す範囲をよくわかっていなかったりします。間違ったことを言っていればご指摘ください。

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勘違いしやすい(かもしれない)素数の無限性

前回 は「素数ばかり生成される多項式」についてお話ししました。今回は「素数を無限に生成できる(かもしれない?)多項式」についてのお話です。

それでは、まず以下の問題について考えてみてください。あなたは即答できるでしょうか。

 p = X^2 + 1 \tag{1}

とかける素数  p は無限に存在するか?


そんなの簡単だろ?
YES じゃん。平方剰余じゃん。

って思うかもしれません。(私も一瞬そう思ってしまったのです。)



もしかして、これと勘違いしていませんか?

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オイラーの素数生成多項式の秘密

今日はオイラーが発見した,

 f_q(x) = x^2 + x + q

という多項式についてお話したいと思います。


ある特別な  q に対して,多項式の  x に整数  0, 1, 2, 3, \cdots を入れていくと,「素数」が次から次へとたくさん出てくるのです。まるで 「魔法の多項式」 です。

これだけでも十分面白いのですが,なんとこれが 「類数」 という「一見まったく関係のなさそうな概念」と結びつくのです。私がこの事実を知ったのは,およそ2年ほど前です。それ以来,その秘密が知りたくてたまらなくなりました。

2年経って,いろいろな勉強をして,ようやく理解のための土台が出来てきたという実感を得ました。今こそ解説にチャレンジしたいと思います。


とはいえ,なかなかに難しい話ですし,私が理解しているレベルのほぼ最前線です。そのため,わかりやすく嚙み砕く余裕はほとんどありません。整数論の知識はかなり求められますし,普段の記事と比べてもだいぶレベルが高いかもしれません。その点ご了承ください。

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4n+3型, 6n+5型, 8n+5型素数の無限性

少し前に、私の周囲で「" 3n+1" 型素数が無限に存在することを初等的に証明できるか?」という議論が流行っていました。私が追っていた限りにおいては、ちょっとずつ穴があって証明は叶わなかったようです。

私は、てっきりこの手の問題、すなわち  an+b 型素数の無限性( a, \; b は互いに素)は、ディリクレの L 関数 を使わないと証明できないと思っていました。本ブログでも " 4n+1" 型素数については取り扱っていましたが、これは L 関数を使った証明でした。
tsujimotter.hatenablog.com


実は、これらの問題には( L 関数を用いない)初等的な証明があるようなのです!これには驚きました!

表題の「 4n+3 型素数」「 6n+5 型素数」「 8n+5 型素数」についての証明は、Hardy & Wright の数論入門に載っていると fujidig さんという方に教えていただきました。


読んでみるとびっくりするぐらい簡潔な証明でしたので、こちらでもご紹介したいと思います。どれも、ユークリッドの素数の無限性の証明を、問題に合わせてマイナーチェンジしている形の証明となっています。

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