tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

シリーズ「連分数とペル方程式」:エピローグ

3/1〜3/3の3日間で「連分数とペル方程式」のシリーズを行ってきたのですが、ご覧いただけましたでしょうか。

それなりにたくさんの人にみていただいて、嬉しい限りです。また、これがきっかけで連分数に興味を持ってくださったであろう方をTwitter上で何人か見つけて、嬉しくなったりしました。


今回テーマとして扱った「連分数とペル方程式」については、実は結構前から(私が日曜数学者を名乗る前から)興味を持っていたトピックでした。そのため、それなりに思い入れのあるテーマとなっています。

せっかく連載的な記事を書いたばかりですので、エピローグとして執筆の思いや裏話などを書いていきたいと思います。
(数学的内容はほとんどない記事なので、気楽に読んでいただければと思います。)



ペル方程式との出会い

私が日曜数学者を名乗るようになったのは、2015年の1月からですが、ペル方程式との出会いはそれより数年前に遡ります。

大学院生になったばかりの辻は、知り合いづてに数学の家庭教師を依頼され、高校生に相手に数学を教えることになりました。その依頼というのが「この子に数学の面白さを教えてくれ」というものでした。今考えるとなかなか尖った依頼だと思うのですが、大変貴重な機会でした。それをだいたい2年ぐらい続けたのです。

数学の面白さを教えるにあたって、最初から持ちネタがあったわけではないので、日頃から数学の面白いネタを収集しようとノートを作り始めました。こうして作ったのがオリジナルの数学ノートです。A4ノートにまとめていって、ある程度溜まったら大きめのファイルに移し変えて収集するということをしていました。

ちょうど以下の記事の一番下の画像に載せた画像がそのファイルです。
tsujimotter.hatenablog.com


こういう勉強の仕方をしている人ってどれぐらいいるんでしょうね。実際やってみるとわかるのですが、なかなかに中毒性があります。数学ノートを作っているうちに、ノートを作ること自体がだんだんと楽しくなってきます。エスカレートしていって、家庭教師の内容を大きく超え、大学数学レベルの内容をどんどん書き足すようになってきました。


ノートに書くトピックの元ネタになったのは、インターネットで仕入れた情報や、ニコニコ動画の数学タグの動画、テレビ番組などです。特に、当時フジテレビで「たけしのコマネチ大学数学科」という番組があり、これにハマっていました。当時は(今もですが)家にテレビがなかったので、実家の母に録画してもらったものをDVDに焼いて送ってもらい、それを夢中になって視聴していました。

コマネチ大学の内容は結構高度なものもあったのですが、その中で「ペル方程式」が紹介された回がありました。これがtsujimotterとペル方程式の出会いです。


ちなみに、書きながら気づいたのですが、このあたりの私の記憶はだいぶあやふやであることが分かりました。私は、母から送られたDVDで、ペル方程式の回(91講:ペル方程式)を見たつもりでいました。ところが、実はコマ大の該当回は見ていなかった のです。

実はその回については、実家から送られてきたDVDの中には入っていなかったのですね。間が飛んでしまったので、どんな内容が放送されたか気になった当時の辻は、インターネットで内容を調べていたのだと思います。そこで出会ったのが「ガスコン研究所」さんのブログでした。
gascon.cocolog-nifty.com

このブログは本当にすごくて、コマ大数学科の内容について毎回ブログにまとめてくださっているのです。結構細かく内容がまとまっていて、問題設定を実感できるFlashプログラムが載っていたりします(残念ながら今は動かないですが)。番組を見なくても大体の内容はわかってしまうわけですね。このブログ記事を読んで、番組を見たつもりになっていたわけです。

ちなみに、このブログを書いている最中にコマ大数学科第8期のDVDを手に入れまして、ちゃっかり該当回を視聴しました。確かに初めてみる内容でした。笑

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いずれにせよ、コマ大のペル方程式の回がきっかけでこのテーマに興味を持ったわけですね。毎回番組の最後に「美しき数学の時間」と題して、解説担当の竹内先生がより発展的な内容を紹介するのですが、この回はペル方程式の「連分数を使った解法」が紹介されていました。これが私と「ペル方程式」そして「連分数」との出会いです。


当時この話に夢中だったのを覚えています。面白かったので、当然例の数学ノートにまとめていたのでした。次の画像は、当時まとめたノートです。

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興味を持ったのは「連分数を使ってペル方程式を解けるのはなぜなのか?」という問題でした。これはコマ大でも紹介されていなかった内容なのですが、不思議で仕方ありませんでした。インターネットで調べるうちに、あるウェブサイトを見て証明が理解でき、本当に嬉しかったのを覚えています。

十年以上ぶりに、当時参考にしていたページを探してみたのですが、おそらくこのページだったかと思います。
aozoragakuen.sakura.ne.jp


今見てもこの証明は面白いと思います。今回はまとめるつもりはないのですが、いずれまた紹介してみたいですね。連分数を使ってペル方程式を解く仕組みは、実際検索してみると至る所に解説があるのですが、たとえ他の人が紹介していたとしても、自分の言葉でまとめたくなります。


記事執筆の経緯

そんなわけで、ペル方程式と連分数の関係について、いつかブログでも書きたいなと思っていました。一方で、連分数の記事を書こうと思うと、前提知識がそれなりに必要だったりするので、少し気が重いなと思っていました。だから十年ぐらい書けていなかったわけですね。


今回記事を書けた理由は2つありました。1つめの理由は、連分数を気軽に打ち込めるマイツールを作ったことです。
tsujimotter.info

以前から問題に思っていたのですが、連分数関連のトピックをブログに書くときに障害になるのが、連分数の数式を打ちこむことです。これがなかなか大変です。こんな数式、いちいち手で打っていられないわけですね。

 \sqrt{61} = 7 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{4 + \cfrac{1}{3 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{2 + \cfrac{1}{2 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{3 + \cfrac{1}{4 + \cfrac{1}{1 + \cfrac{1}{14 + \cfrac{1}{\ddots}}}}}}}}}}}}

かといって

 \sqrt{61} = [7; 1, 4, 3, 1, 2, 2, 3, 4, 1, 14, \ldots ]

のように書くのも味気ない。というか、わかりにくい。
(実際、教科書等では上記のように省略して書くことが多いかと思うのですが、該当の連分数の様子をイメージするのが難しいと思います。僕自身が理解するのに苦労した記憶があります。)

今回、マイツールを開発したおかげで、自分で打ち込む必要がなくなりました。これによって一連の記事が執筆できたと行っても過言ではありません。ツールを作ってみるものですね。

実際、かなり便利なツールかと思います。みなさんが連分数に関してブログ等を執筆する際には、よろしければご活用ください。
(その際は、一言ブログにその旨書いていただけると、tsujimotterとしては喜びます。)


2つめの理由は、新しい知識を仕入れたことです。

実際、2番目の記事までの内容は、元々知っていたことでした。3番目の内容は、記事執筆の直前に理解したことです。マチンの公式の問題は以前から興味を持っていましたが、ペル方程式を使って解ける仕組みまでは理解できていなかったのです。

いや、ほんと面白いんですよね。あのような問題がペル方程式に帰着できるというのは、思いもよりませんでした。しかもペル方程式を14本も解かないといけないというのは、とても非自明な感じがします。


こんな感じで、今一番熱いトピックかどうかは、私が特に重要視していることです。

著者が元々知っていたことを説明するのも、もちろん大事なことだと思います。実際、ペル方程式の話については、十年前の私が一度大いに感動した話です。連分数を使ってペル方程式が解けることを知らない人(十年前の私と同じような人)には、ぜひ一度読んで感動していただきたいトピックでもあります。

しかしながら、自身が今まさに面白いかどうかというのはやはり重要なわけです。私はあくまで日曜数学者であり、ブログの執筆は本業ではありません。このモチベーションがないと、なかなか生活の合間を縫って執筆しようとは思えないわけですね。しかも、今一番熱いので、その気持ちもブログ記事に乗っていきます。今しか書けない文章になるわけです。その意味で、今回はペル方程式について書くベストなタイミングだったと思います。

実際、熱が入ってしまって、一個一個の記事が長くなりすぎました。元々は2本立ての予定で、1つめと2つめの記事は1個の記事にする予定でした。あまりに長くなりすぎたので2個に分離し、結果として3本立てのシリーズになったのでした。


書きたくなるモチベーションを与えてくれたという意味では、参考記事を書いてくださった山田さんに感謝したいです。インターネットにこういう貴重な情報が載っているのは大変ありがたいことですね。
www41.tok2.com


そういえば、1日目の3/1がペル方程式に名前を冠する「ペル」さんの誕生日だったそうですね。

その意味でも、タイミングはばっちりだったわけですね。これは狙ったわけではなく、偶然でした。笑


おわりに

そんなわけで、十年来の念願叶って「連分数&ペル方程式」の記事を書くことができました。思い入れのあるトピックについて、ブログに残すことができてよかったと思っています。

連分数やペル方程式は、まだまだ楽しいトピックがたくさんありますので、いずれまた書いてみたいと思います。


最後になりますが、まだ今回のシリーズを読んでない方は、ぜひ一連の記事を読んでいただけると嬉しいです。感想などありましたら、tsujimotterまでお知らせいただけると幸いです。モチベーションに繋がります。

それでは今日はこの辺で!