tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

(自由研究)49をmod 100でべき乗する話の一般化?

横山明日希さんのこちらのツイートの内容がとても興味深かったので、自分でもいろいろ一般化ができないかと考えてみました。



上の話は  49 という数を \bmod{100} でべき乗していくと

 49^1 \equiv 49 \pmod{100}
 49^2 \equiv 1 \pmod{100}
 49^3 \equiv 49 \pmod{100}
 49^4 \equiv 1 \pmod{100}
 49^5 \equiv 49 \pmod{100}
 \vdots

のように繰り返されるというお話でした。

群論的に言い換えると、 (\mathbb{Z}/100\mathbb{Z})^\times における  49 の位数が  2 であるということですね。


ここで、 49^2 \equiv 1 \pmod{100} であることは、 49 = 50 - 1 を使えば簡単に計算できるということに気づきました。つまり

 49^2 = (50 - 1)^2 = 50^2 - 2\times 50 + 1 \equiv 1 \pmod{100}

ということですね。最後の合同式は、

 50^2 = 2500 \equiv 0 \pmod{100}
 2\times 50 = 100 \equiv 0 \pmod{100}

であることを使っています。

50が \bmod{100} におけるべき零元であり、 2\times 50 = 100 であることがうまく効いていますね。

同じ要領で  51 = 50 + 1 も位数  2 となります。



個人的には、 49 (\mathbb{Z}/100\mathbb{Z})^\times における位数を計算するのに、 (\mathbb{Z}/100\mathbb{Z})^\times に属さない元  50 を使っているのが面白いなと思いました。こういうのって環論的に何かあるんですかね?



さて、このような例を得ると

 (a\pm 1)^k \equiv 1 \pmod{10^n} \tag{1}

を満たす例を作ってみたくなりますね。

実際、\bmod{100} の元の位数は

 \# (\mathbb{Z}/100\mathbb{Z})^\times = \varphi(100) = 40

なので、合同式のオイラーの定理より  40 の約数

 1, 2, 4, 5, 8, 10, 20, 40

 k の候補となります。


それぞれの  k について、式  (1) を満たす例を考えてみましょう。

 k = 4 のとき

 (a\pm 1)^4 を二項展開すると

 (a\pm 1)^4 = a^4 \pm 4a^3 + 6a^2 \pm 4a + 1

となります。

ここで、 a = 25 とするとうまくいきそうな気もしますが、

 25^4 \not\equiv 0 \pmod{100}

なのでうまく消えてくれません。( 25 がべき零でない。)

じゃあ、 a = 50 とすれば

 (50\pm 1)^4 \equiv 1 \pmod{100}

となり一見いい感じですが、これは  (50\pm 1)^2 \equiv 1 \pmod{100} を2乗しただけなので面白くないですね。

というわけで、 k = 4 は面白くなさそうなので、次の  k にいきましょう。

 k = 5 のとき

 (a + 1)^5 を二項展開すると

 (a + 1)^5 = a^5 + 5a^4 + 10a^3 + 10a^2 + 5a + 1

となります。

ここで、 a = 20 をとれば、 a のつく項はすべて \bmod{100} で消えることになります。よって

 21^5 = (20 + 1)^5 \equiv 1 \pmod{100}

が成り立つことがわかりました。

実際、 21^k \pmod{100} を計算してみると

f:id:tsujimotter:20210409234952p:plain:w220

となって、下2桁が周期的になっていますね!(周期5

(Wolfram Alphaでこんな風に計算できることは、どねさんのツイート で知りました! ありがとうございます!)


ところで上の系列では、下2桁が

 21 \to 41 \to 61 \to 81 \to 01 \to \cdots

のように動いているのが面白いですね。考えてみればそれはそうなのですが、面白いです。



さて、一旦こういう例を見つけると、 \bmod{10^n} でも同じことができそうだとわかります。

実際、

 21^5 \equiv 1 \pmod{100}
 201^5 \equiv 1 \pmod{1000}
 2001^5 \equiv 1 \pmod{10000}
 20001^5 \equiv 1 \pmod{100000}
 200001^5 \equiv 1 \pmod{1000000}
 \vdots

のような系列が一般に成り立ちます。

このことは、 (a + 1)^5 の二項展開と

  •  (2\times 10^n)^2 \equiv 0 \pmod{10^{n+1}}
  •  5\times (2\times 10^n) = 10^{n+1}

が成り立つことから簡単に示すことができます。興味がある人は考えてみてください。



ところで、 (a - 1)^5 を考えないのが気になった方もいるかもしれません。二項展開を考えると

 (a - 1)^5 = a^5 - 5a^4 + 10a^3 - 10a^2 + 5a - 1

となり、最後が  -1 になってしまうからですね。しかしここで、 a = 20 とすれば 

 19^5 = (20 - 1)^5 \equiv - 1 \pmod{100}

となるわけです。この両辺を2乗すれば

 19^{10} \equiv 1 \pmod{100}

となり、位数  10 の元をゲットできてしまいます。これはこれで面白いですね。


 k = 8 のとき

 k = 4 のときと同じ理由でうまくいきません。


 k = 10 のとき

 (a\pm 1)^{10} の二項展開を計算すると

 (a\pm 1)^{10} = a^{10} \pm 10a^9 +  \cdots \pm 10a + 1

となります。

ここで、 a = 10 とすれば

  •  a^2 \equiv 0 \pmod{100}
  •  10a = 100 \equiv 0 \pmod{100}

となり、 a がついている項はすべて消えます。

したがって

 11^{10} \equiv 1 \pmod{100}
 9^{10} \equiv 1 \pmod{100}

が成り立ちます。

つまり、 9^k 11^k の下二桁は、周期10で繰り返すということですね!


これもまったく同じ理由により

 11^{10} \equiv 1 \pmod{100}
 101^{10} \equiv 1 \pmod{1000}
 1001^{10} \equiv 1 \pmod{10000}
 10001^{10} \equiv 1 \pmod{100000}
 100001^{10} \equiv 1 \pmod{1000000}
 \vdots

 9^{10} \equiv 1 \pmod{100}
 99^{10} \equiv 1 \pmod{1000}
 999^{10} \equiv 1 \pmod{10000}
 9999^{10} \equiv 1 \pmod{100000}
 99999^{10} \equiv 1 \pmod{1000000}
 \vdots

という系列を作ることができそうです。面白いですね!


そんなわけで、もっと一般化できそうなネタですが、色々楽しめたので今日はこの辺にしたいと思います!