今回の記事は、素数がたくさん登場する多項式
に関連する話題です。今回は私がこの式について考えているうちに、思いついて実施してみた独自研究について紹介したいと思います。どこかの本に書いてある話ではないので、誤りを含んでいる可能性も大いにあるかと思います。また、十分な調査ができているわけではないので、独自性もはっきりとしていません。その点をご了承の上で読んでください。
tsujimotter.hatenablog.com
今回は論文を意識したフォーマットで書いているため、普段のブログ記事より内容が難しく、堅めの書き振りになっている点をご了承ください。また、虚2次体に関する基本的な知識を前提とします。
やはりといいますか、当然と言いますか、先行研究として類似のアイデアの研究はありました。勉強も兼ねてブログにまとめていますので、次の記事もぜひご参照ください:
tsujimotter.hatenablog.com
追記:2020.01.22
Proposition 1.の証明におきまして、 の場合を適切に考慮し忘れていたため、その点を修正しました。Proposition 2. の証明に影響はありません。
1. Introduction
1772年、EulerはBernoulliに宛てた手紙の中で、素数を生成する2次多項式について述べている。すなわち、素数 に対し、
と定義すると、素数 に対し に整数 を代入した値がすべて素数になることを発見した。これをオイラーの素数生成多項式という。
Rabinovitch (1913)は が素数生成多項式である条件と、対応する虚2次体の類数が1である条件の間の同値性を示した。すなわち、 を任意の素数であるとき、 が においてすべて素数になるための必要十分条件は、虚2次体 の類数が1であることである。
さらに、Baker (1966)やStark (1967)により、類数が1である虚2次体が独立に決定されており、その系として上記の条件を満たす は のときに限られる。
ここで、任意の素数 に対し、2次多項式 を考えて
とする。 を素数生成確率と呼ぶことにする。名前の通り、 に対して が素数になる割合を表す。
また、虚2次体 に対しその判別式を としたとき、対応する類数を と表すことにする。このとき、Rabinovitchの定理は次のように言い換えられる。
上記の定理は類数1と が同値という主張であるが、類数が2以上については が成り立つ以上のことは言及されていない。先行研究においても、このような観点に基づく研究はないように思える。
そこで本研究では、計算機により虚2次体 の類数 を計算し、特に類数 以上のケースにおける の振る舞いを観察する。 が類数 に反比例するというヒューリスティックな仮定に基づいて分析したところ、少なくとも においては は予想より素数になりやすいという「バイアス」が存在することを発見した。