微分方程式には色々な種類があって、それぞれ解き方が異なったり、そもそも解けなかったりします。
理系大学生であれば大学1・2年でさまざまな微分方程式の解き方を習うわけですが、これは微分方程式の中でもほんの一部である「うまく解ける微分方程式」の解き方を学んでいるにすぎません。タイトルにある 完全微分方程式 は、そのような常微分方程式の一種です。
を 級(1階偏微分可能かつ1階偏導関数が連続な)2変数実関数とします。このとき
の形の微分方程式を考えます。
加えて 完全微分形 という条件を考えます。この条件を満たすかどうかで、式 の微分方程式の解き方が変わります:
微分方程式 が完全微分形の条件を満たすとき、完全微分方程式 といいます。
(満たさない場合は「不完全微分方程式」といって、取り扱いが異なってきます。こちらについては今回は扱いません。)
完全微分形の条件を満たすとき、次が成り立つことが知られています:
が成り立つ。
また、このように書けるのは完全微分形のときに限られることもわかります。すなわち、式 が完全微分形であるための必要十分条件というわけですね。この事実は超重要なので、次節で証明したいと思います。
実際、完全微分形の条件を満たすとき であり、また式 から なので、合わせて
が言えます。よって、定数 を用いて
が言えることになります。これは、元々の完全微分方程式 を満たす の組を陰関数によって表現した方程式になっており、これが微分方程式の解と言えるわけです。
これが完全微分方程式 の解法だったわけでした。
ここからが今日の本題です。完全微分方程式を解くために必要であった条件は、まさに 上の ド・ラームコホモロジー を計算する際に必要な条件そのものであった、というのが今日話したい内容です。すなわち、完全微分形の必要十分条件は
を表しているのです。
今回の記事では、前半で完全微分方程式の必要十分条件の証明を行います。後半では、この条件がまさに、ド・ラームコホモロジーにおける条件を表していることを具体的な例を元に説明したいと思います。
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