《独習ノート:「素数と2次体の整数論」シリーズ》の補足回です。今回のテーマは「単項イデアルの性質」について。該当箇所は、第1章の 問題 1.12 です。
本当は飛ばそうかと思ったのですが、あとのことも考えると書いておいた方が良さそうだと、思い直しました。本編に加えるほどの内容でもないので、補足として。
本シリーズの教科書はこちら。

- 作者: 青木昇,飯高茂,中村滋,岡部恒治,桑田孝泰
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2012/12/21
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
初回(#0):動機・諸注意
前回(#3):Z のイデアル (2/2)
次回(#4):
シリーズ全記事の一覧はこちら
この記事では以下の問題を解きたいと思います。
問題 1.12
整数に対して,次が成り立つことを示せ.
(1).
(2).
(3).
証明には、以前書いた補足記事にある、集合の扱い方を用います。
(1) の証明:
まず,
逆に, を示す.
より,
となる
が存在する.任意の整数
に対し,
であるから,
.
(2) の証明:
まず,
逆に, を示す.
とおく(
)と,
の任意の要素
は,
.よって,
.
一方, の任意の要素
は,
.よって,
.
したがって, かつ
より,
.
ああ、そういえば 問題 1.3 をやり忘れていました。ついでなのでやってしまいましょう。
問題 1.3
でない整数
に対して,次が成り立つことを示せ.
(1)かつ
![]()
![]()
.
したがって,これを満たす
(3) の証明:
(2) より
これらの定理はすべて、左側の条件はすべて単項イデアルの条件に、右側の条件はすべて整数の条件になっていますね。
によって生成される
のイデアル
を、整数
と同様に扱いたい、という意図が見え隠れしていますね。
で生成される単項イデアルを
と書く流儀もあって、それを使って書くとさらにこんな風に「似せる」こともできます。
整数
に対して,次が成り立つ.
(1)![]()
(2)![]()
(3)![]()
まだしばらく先になりますが、そのうちイデアルにも足し算・引き算・掛け算が登場することになるでしょう。
簡単ですが、今日はこの辺で。