《独習ノート:「素数と2次体の整数論」シリーズ》の補足回です。今回のテーマは「単項イデアルの性質」について。該当箇所は、第1章の 問題 1.12 です。
本当は飛ばそうかと思ったのですが、あとのことも考えると書いておいた方が良さそうだと、思い直しました。本編に加えるほどの内容でもないので、補足として。
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初回(#0):動機・諸注意
前回(#3):Z のイデアル (2/2)
次回(#4):
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この記事では以下の問題を解きたいと思います。
問題 1.12
整数 に対して,次が成り立つことを示せ.
(1) .
(2) .
(3) .
証明には、以前書いた補足記事にある、集合の扱い方を用います。
(1) の証明:
まず, を示す. より,.よって, は の倍数である.すなわち,.
逆に, を示す. より, となる が存在する.任意の整数 に対し, であるから,.
(2) の証明:
まず, を示す.
より, かつ .(1) より かつ だから,問題 1.3 より .
逆に, を示す.
とおく()と, の任意の要素 は,
.よって,.
一方, の任意の要素 は,
.よって,.
したがって, かつ より,.
ああ、そういえば 問題 1.3 をやり忘れていました。ついでなのでやってしまいましょう。
問題 1.3
でない整数 に対して,次が成り立つことを示せ.
(1) かつ .
より, となる整数 が存在する.また, より, となる整数 が存在する.代入すると,.すなわち,.
したがって,これを満たす は,.以上より, かつ ならば が示せた.
(3) の証明:
(2) より を代入して成立.
これらの定理はすべて、左側の条件はすべて単項イデアルの条件に、右側の条件はすべて整数の条件になっていますね。
によって生成される のイデアル を、整数 と同様に扱いたい、という意図が見え隠れしていますね。
で生成される単項イデアルを と書く流儀もあって、それを使って書くとさらにこんな風に「似せる」こともできます。
整数 に対して,次が成り立つ.
(1)
(2)
(3)
まだしばらく先になりますが、そのうちイデアルにも足し算・引き算・掛け算が登場することになるでしょう。
簡単ですが、今日はこの辺で。