tsujimotterのノートブック

日曜数学者 tsujimotter の「趣味で数学」実践ノート

数学

1/512の有限小数と冪零元

今日は5月12日なので 512 の日ですね! なので、2のべき乗で表せる数というわけです!嬉しいですね!(え、嬉しくないですか?) 楽しくなってきたので他にも面白い性質ないかなと、Wikipediaの「512」という項目を調べてみると、次のような性質を見つけまし…

テレビ出演&群論講座のお知らせ

いつもブログを読んでくださってありがとうございます!今日5月9日は私の誕生日なのですが、今年で36歳を迎えまして「平方数歳」になりました。おかげさまで今年も楽しく数学をできています!せっかくの36という年齢なので、36にまつわる何かをした…

モジュラー曲線(5):メイザーの定理

モジュラー曲線というのは、上半平面 を の合同部分群で割ったものとして定義されます。定義からは、明らかに複素解析的な対象に見えると思います。ところが、実はモジュラー曲線は数論的な対象でもあるのです。わかりやすい応用として、楕円曲線の位数有限…

正十二面体群とPSL(2,5):国際数学者会議PR企画の宣伝動画について

4年に一度、国際数学者会議(ICM: International Congress of Mathematicians)と呼ばれる大きな催しが行われます。フィールズ賞という、数学界の最高峰の賞が発表される会としても知られていますね。次回、2022年にはロシアのサンクトペテルブルグにてICM …

「π>3.05を凄すぎる方法で証明」を整数論的に考える

「」を示す問題が2003年の東大入試で出題されました。これは有名なのでみなさん良くご存じかと思いますが、一方で以下の動画のような解法はご存知でしょうか?www.youtube.comたいへん面白い解法なので、まずは一度ご覧いただきたいです。動画の解説もとても…

(自由研究)面白い二重根号と「単数」を使った外し方

高校数学で習った「二重根号」を覚えていますでしょうか。たとえばのように、根号の中に根号が入れ子になっている式を 二重根号 といいます。 上の二重根号は一見複雑な式に見えますが、実は次のように考えることで「ただの平方根」であることがわかります。…

(自由研究)49をmod 100でべき乗する話の一般化?

横山明日希さんのこちらのツイートの内容がとても興味深かったので、自分でもいろいろ一般化ができないかと考えてみました。4月9日です!「49」は、「奇数回かけると下二桁が49になる」というちょっと面白いを持っている数です! pic.twitter.com/eWair1rc0A…

箸袋で作った図形は正五角形か?

今日は 箸袋があるとつい作っちゃうこの図形 についての話です。細長い紙を用意して、上の図をイメージしながら折り曲げて「ぎゅっと」すると、きれいに正五角形が作れてしまいます。箸袋に限らず、お手元に紙テープなど「細長い帯状のもの」があれば簡単に…

保型形式(モジュラー形式)を勉強するとこんなにも楽しい(応用編)

今回は「保型形式(モジュラー形式)を勉強するとこんなにも楽しい」シリーズの 応用編 です!数学ガール等を読んで保型形式について知ったけど、さわりの部分だけでは物足りない、もっと保型形式のその先を勉強してみたい、そう思っていた「あなた」のため…

保型形式(モジュラー形式)を勉強するとこんなにも楽しい(導入編)

保型形式 という数学用語を聞いたことはあるでしょうか?数学好きの方の中には、フェルマーの最終定理の証明で楕円曲線と保型形式が役に立った、という話を聞いたことがある方もいるでしょう。 私が保型形式に出会ったのは、数学ガール「フェルマーの最終定…

ラマヌジャンの円周率公式

今年も3月14日、3.14の日がやってきました。3.14といえば、もちろん円周率の近似値ですね!円周率の近似値にちなんで、世界的には 円周率の日(英語圏だとPIの日)と呼ばれているそうです。 毎年、この日にブログに書きたいと思っていた(できずにいた)話が…

足し算の繰り上がりと群コホモロジー

以前「足し算の繰り上がりと群コホモロジーが関係している」という話が、Twitter上で話題になったことがありました。大元のツイートは、このツイートだったと思います。もうちょっと説明してくれといわれたので、しますと、Z/100Z は mod 100 の整数が足し算…

複素射影直線 ℙ¹ はコンパクトリーマン面

以下の記事でリーマン面の定義をまとめたことがありました。 tsujimotter.hatenablog.com これまでtsujimotterのブログではリーマン面の具体例を挙げたことがありませんでした。今日は、リーマン面(特にコンパクトリーマン面)の代表例である複素射影直線 …

ヒルベルトの第12問題(類体の構成問題)に進展があったらしい

センセーショナルな数学関連のニュースが飛び交っている昨今ですが、私にとって特に注目したい情報が入ってきました。それが ヒルベルトの第12問題 に関する進展です。 「総実体上のヒルベルトの第12問題を解いた」 というプレプリントが 3/4付 でarXivに投…

シリーズ「連分数とペル方程式」:エピローグ

3/1〜3/3の3日間で「連分数とペル方程式」のシリーズを行ってきたのですが、ご覧いただけましたでしょうか。tsujimotter.hatenablog.comtsujimotter.hatenablog.comtsujimotter.hatenablog.comそれなりにたくさんの人にみていただいて、嬉しい限りです。また…

マチンの公式と14個のペル方程式

今回の記事は「シリーズ:連分数とペル方程式」の3日目(最終日)の記事となっています。関連する記事は こちら からご覧いただけます。今日のテーマは、円周率の マチンの公式 です:この公式を使うと、円周率を高精度で計算できることが知られています。…

ペル方程式の連分数を用いた魔法の解法

今回の記事は「シリーズ:連分数とペル方程式」の2日目の記事となっています。関連する記事は こちら からご覧いただけます。今日はこんな問題を考えてみましょう。兵士たちが正方形に並んでいる。これを1軍団とする。その軍団が「61」ある。これに王様が一…

連分数展開とその計算方法【連分数計算アプリの紹介付き】

今回の記事は「シリーズ:連分数とペル方程式」の1日目の記事となっています。関連する記事は こちら からご覧いただけます。今日は、連分数展開 について紹介したいと思います。3日連続 で 「連分数」 に関連する記事を公開したいと思っています。明日以…

1000以下の素数は250個以下であることを示せ(一橋大学・2021年第1問)【※数学ジョーク記事です】

一橋大学の問題が僕にも解けそうだったので、解いてみました!問題(一橋大学・2021年第1問)1000以下の素数は250個以下であることを示せ。

「23」とフェルマーの最終定理

本日は 2/23 ということで、この日付にまつわる楽しい数学の話をしたいと思います!お話したいのは、23 という数そのものが持つ性質についてです。 は素数なので、素数についての話かと思った方もいるかもしれません。もちろん、素数であることは大事なので…

単連結ではない領域のド・ラームコホモロジー

こちらの記事の続きです。 tsujimotter.hatenablog.com 上の記事では、穴あき円板 上のド・ラームコホモロジー を計算しました。 ド・ラームコホモロジーを計算するには、 上の任意の閉1形式( の元)を計算し、それと完全1形式( の元)との「差」(実際は…

ナッシュの定理の証明:有限ゲームの混合戦略にはナッシュ均衡点が存在する

先日、予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」さん(以下、ヨビノリさん)のYouTubeチャンネルにて、ゲーム理論 に関する動画が公開されました。www.youtube.comゲーム理論に関する基本的な用語について、大変わかりやすく紹介されているのでぜひご覧になっ…

完全微分方程式とド・ラームコホモロジー

微分方程式には色々な種類があって、それぞれ解き方が異なったり、そもそも解けなかったりします。理系大学生であれば大学1・2年でさまざまな微分方程式の解き方を習うわけですが、これは微分方程式の中でもほんの一部である「うまく解ける微分方程式」の…

2変数2次関数の極値問題(平方完成と主軸変換の図形的な意味)

前回の記事の続きです(前回の記事を読まなくても、今回の内容は読むことができます): tsujimotter.hatenablog.com 前回の内容を簡単に振り返ります。「空間内の与えられた2直線 に対して、その距離を求めることはできるか?」という問題について考えまし…

空間内の「ねじれの位置」にある2直線間の距離

高校数学で習う「空間内の2直線間の距離」について考えてみたいと思います。3次元空間内に2直線 があるとします。 が「ねじれの位置にある」とは、 が交点を持たず、かつ、平行でもないことを言います。このとき、2直線 の距離を考えてみたいと思います。そ…

計算が間違っているのに結果が合っている分数の和 #有害分数

一年生の和(freshman sum) というものがあります。分数の和の計算を計算するときに、通分して計算すべきところを、間違えてのように計算してしまうというアレです。一般に分数の和の計算は難しいものですが、上の式が成り立てば分数の和の計算が楽になるの…

ザリスキー接空間(続・多項式関数に接する多項式関数)

前回の記事の続きです。まだ読んでいない方はこちらから。 tsujimotter.hatenablog.com前回の記事では、 を通る直線を考えて「この直線に で接する関数全体の同値類」を考えて、その同値類全体がザリスキー余接空間 になっているという話をしました。また、…

多項式関数に接する多項式関数(2021年共通テスト数学ⅡB・第2問)

2021年から「センター試験」が「大学入学共通テスト」という名前に代わり、傾向も以前とは変わったということで各所で話題になりましたね。受験生の皆様はお疲れ様でした。tsujimotterは例年、数学だけは自分で解くようにしているのですが、今年も数学Ⅰ・数…

多様体の「接ベクトル空間」の一歩手前の話

最近、多様体に関する勉強をしているのですが「接ベクトル空間」という概念を習得するのに苦労しています。ちょっと抽象的すぎてよくわからないなと思っていたところに、黒木玄さんからの次のツイートが。#数楽 伝統的なスタイルでは、まず古典的なℝ³内の曲…

(線形代数・復習)双対空間

前回の記事:tsujimotter.hatenablog.com前回に引き続き、線形代数の復習編の記事です。今回は 双対空間 というものを導入したいと思います。 「線形写像を単体で考えるのではなく、全体を考えるとよい」というモチベーションのもと、 から への -線形写像全…